カンゾー先生

劇場公開日:

解説

昭和20年、戦時下の岡山県の小さな漁師町を舞台に、患者を肝臓炎としか診断しない風変わりな町医者と彼を取り巻く町民たちの生き様を描いた人間喜劇。監督は「うなぎ」の今村昌平。坂口安吾の原作を基に、今村と「うなぎ」の天願大介が共同脚色。撮影を「出現!東京龍/TOKYO DRAGON」の小笠原茂が担当している。主演は「鍵」の柄本明。第51回カンヌ国際映画祭特別招待、報知映画賞主演男優賞&助演女優賞受賞作品。キネマ旬報日本映画ベスト・テン第4位。

1998年製作/129分/日本
配給:東映
劇場公開日:1998年10月17日

あらすじ

昭和20年夏。戦時下の岡山県日比の海岸を、開業医・赤城風雨が走っていた。彼は父の代からの家訓である「開業医は足だ。片足折れなば片足にて走らん。両足折れなば手にて走らん。疲れても走れ。寝ても走れ。走りに走りて生涯を終らん。」を胸に、こうして病人の家を往診して回っているのだ。しかし、病人たちは殆ど無償に近い値段で診てくれる風雨に感謝しながらも、その一方でどんな患者にも肝臓炎としか診断しない風雨のことを「肝臓先生」と渾名するのだった。ある日、田舎には珍しい美少女・ソノ子が赤城医院に看護婦としてやって来る。幼い弟妹を養う為、淫売をしていたソノ子は、父親の死をきっかけに監視役を押しつけられた風雨の下で働くことになったのだ。それから暫くして、風雨に岡山県医師会からブドウ糖注射を使いすぎるのではないかという指摘がなされた。肝臓炎にはブドウ糖が欠かせない。風雨は医師会に強く反発。また、軍医部長の池田中佐からも同じような勧告を受けるが、彼は怯むことはなかった。むしろ、それを機に偶然手に入った顕微鏡を使って、肝臓炎の病原体の研究をしようと意気込む始末。医師仲間でモルヒネ中毒の鳥海、町の住職でアルコール中毒の梅本、そしてソノ子が助けた脱走兵で母国オランダでカメラ会社に勤務していたというピートの協力を得て、風雨は研究に没頭する。更に、満州で戦死した息子から肝臓炎に関する調査報告が送られてきたことで、彼の肝臓炎撲滅への意欲は燃え盛っていく。しかし、風雨たちはピートを匿った罪で当局へ連行されることに。料亭・紫雲閣の女将・トミ子の計らいで風雨たちは釈放されるが、ピートは獄中で拷問を受けて死亡。研究も振り出しに戻ってしまう。しかし風雨は諦めなかった。再び顕微鏡を入手した彼は、研究に邁進する。ところが、研究に没頭するあまり、診察を受けられなかった町の老人が死んでしまった。遺体を前に打ちひしがれる風雨は気づく。自分は町医者に徹するべきであることを。思いも新たに離れ小島へ往診に出かけた帰り、舟の中でソノ子に愛を打ち明けられた風雨は、遙か向こうにキノコ雲が揚がるのを見る。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第22回 日本アカデミー賞(1999年)

受賞

主演男優賞 柄本明
助演女優賞 麻生久美子

ノミネート

作品賞  
監督賞 今村昌平
脚本賞 今村昌平 天願大介
助演男優賞 世良公則
音楽賞 山下洋輔
新人俳優賞 麻生久美子
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映画レビュー

2.5「一途で一所懸命な主人公は、必ず初心を忘れ、味方を裏切ってしまう」の法則

2025年2月24日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

単純

昔から、未鑑賞ながらも気になっていた作品の1つだったので、サブスクにて念願の鑑賞。
終戦間近の日本が、舞台の設定ではあるが、
「スワロウテイル」よりもあとの、1998年の作品としては、
かなり古ぼけた、古臭い印象の強い映画。

やっぱり今村昌平は、一昔前の映画監督なのだなとも思った。

主人公のカンゾー先生は、庶民の味方で、一途で一所懸命。
いつも先代の遺言通り、走って往診する。

そういう生真面目な主人公は、物語の中盤辺りに、
一途で一所懸命なキャラクターが裏目に出て、
別の事に心を奪われ、初心を忘れてしまう。

「グレイテスト・ショーマン」の主人公と、全く同じパターン。

そして、味方を裏切ってしまった自分を猛省し、心変わりをして、初心を取り戻す。

感動系映画の、定型文のようなストーリーと主人公設定で、
ストーリーも、特に真新しさは無い。
また、「グレイテスト・ショーマン」に似ている構成ではあるが、
その作品よりも、もう一昔前の作品でもあるので、
差別に対して、「グレイテスト・ショーマン」よりも、
無自覚な所も、随所散見できる。

戦時中の物語なので、男女差別にしても、職業差別にしても、
史実としてあるのは当然なことだけれど、
それを表現する際に、作り手側が自覚的か無自覚的かでは、
だいぶ表現の印象が変わってくる。
なので、作品全体を通して、女性に対する扱い方が「無自覚的」に酷い。

鑑賞出来て良かったなと思える部分は、
麻生久美子がまだ新人で、今と違って大根役者なセリフ回しで、
素人っぽさの中に色気がある所と、濡れ場シーンが観られるところ。

エロ劇画家出身の田口トモロヲの、出自を感じさせるような、
変態エロさを垣間見られるシーンがあるところ。

これは、おそらく、今ではもう観られない部分なので、確認できてよかった。
ついでに、北村有起哉の青年期も新鮮で、良い。

良かった演者
柄本明
麻生久美子
伊武雅刀

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ソビエト蓮舫

3.5普通の町医者ものの映画とは一線を画す

2024年4月3日
PCから投稿

タイトルから人情味あふれる医者の物語かと思っていたら、
終盤での想定外の展開に啞然。
戦時中における 権力側の狂気、経済的に苦しめられた人たちの疲弊感
招集された子を持つ母親の身勝手さ、社会全体が大きく歪むなか、理性を失う人たち。
インパクトの強い映画でした。

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ビン棒