おとうと(1960)

劇場公開日:1960年11月1日

解説

幸田文の原作を、「キクとイサム」の水木洋子が脚色し、「ぼんち」の市川崑が監督した、若い姉弟の物語。撮影は「切られ与三郎」の宮川一夫。この作品では時代の雰囲気を出すために彩度を落としコントラストを残す現像方法「銀残し」が生み出された。

1960年製作/97分/日本
原題または英題:The Quick Draw Kid
配給:大映
劇場公開日:1960年11月1日

あらすじ

げんと碧郎は三つちがいの姉弟である。父親は作家で、母親は二度目であり、その上手足のきかない病で殆ど寝たきりだった。経済状態も思わしくなく、家庭は暗かった。碧郎が警察へあげられた。友だちと二、三人で本屋で万引したのが知れたのだ。しばらくたったある日、げんは鳥打帽の男に呼びとめられた。男は警察の者だと名のり、碧郎や家のことを聞いた。男は毎日のようにつけ始めた。そんなげんを碧郎は「親がちょっと名の知られた作家でよ、弟が不良で、お母さんが継母で、自分は美人でもなくて、偏屈でこちんとしている娘だとくりゃ、たらされる資格は十分じゃないか」というのだった。転校してからも碧郎の不良ぶりははげしかった。乗馬にこりだし、土手からふみはずして馬の足を折ってしまった。碧郎はその夜童貞をどこかへ捨てた。二年たった。十七になった碧郎に思わぬ不幸が訪れた。結核にやられたのである。湘南の療養所へ転地し、げんが附きそった。死が近づいてくるのを知った碧郎は、げんに高島田を結うよう頼んだ。「姉さんはもう少し優しい顔する方がいいな」といいながらも、げんの高島田を見て碧郎はうれしそうだった。父が見舞いに来た時は、治ってから二人で行く釣の話に夢中だし、足をひきずってきた母には、今までになく優しかった。夜の十二時に一緒にお茶を飲もうと約束して寝たげんは、夜中に手と手をつないだリボンがかすかに引かれるのを感じて目を覚ました。医者が来た。父や母も飛んできた。「姉さんいるかい」それが碧郎の最後の言葉だった。風のある晴れた寒い夜だった。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第14回 カンヌ国際映画祭(1961年)

受賞

フランス映画高等技術委員会特別表彰 市川崑

出品

出品作品 市川崑
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映画レビュー

3.5 【”うっすらと哀しい姉弟”今作は、病気の継母と作家の父との関係が良くない暗い家庭の中、ぐれる弟を健気に庇う気の強い姉を描いた作品である。】

2026年1月8日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

幸せ

■大正時代の東京。げん(岸恵子)と碧郎(川口浩)の姉弟は、作家の父(森雅之)と継母(田中絹代)のもとで暮らしている。
 17歳のげんは病気であるために宗教に頼る継母の分まで碧郎の世話を焼くが、碧郎は不良仲間とつるむようになる。
 二人は喧嘩をしながら共に生きる姉弟だったが、碧郎は結核に罹患して、余命少ない状態人る。

◆感想

・幸田文の原作は読んだ事があるが、この映画はトーンが暗い。唯一、げんを演じた岸恵子さんの気が強い姉の存在が、光っている作品である。

・作家の父も、甲斐性が無く、妻に嫌味を言われても曖昧にしか答えれない。妻を演じた田中絹代の粘着質な性格全開の嫁の味わいが、コレマタ、ねっとり感を出している。

・碧郎も元気な時は、生意気で、不良になってからも姉に迷惑を掛けつつも、何処かで嫁に行かない姉を気遣っている。が、そんな彼も手遅れの状態で結核が見つかってからは、夜中に目が覚めた時の寂しさに耐えかねると言って、姉にベッドの脇に寝て貰い、姉弟二人で手首に付けた布を、呼び鈴代わりとするのである。

・それまで、姉弟に冷たかった継母も、碧郎が病にかかってからは、彼を気にするようになるのである。

<今作は、病気の継母と作家の父との関係が良くない暗い家庭の中、ぐれる弟を健気に庇う気の強い姉を沈んだトーンで描いた作品なのである。
 この作品が評価されたのは、時代なのか、革新的な撮影方法であるのか、それは良く分からない・・。>

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NOBU

2.5 アヒル隊突撃

2026年1月2日
iPhoneアプリから投稿

原作者の自伝的な内容だけに言い難いが、話自体があまり好きでない。弟を想う姉の気持ちなのか、献身的な姉の姿なのか、一途に想ってくれる姉の存在を支えにする弟の姿なのか、どれをとっても気持ちが滅入る。悲劇なのだが音楽がサスペンス調なのが調子狂う。
輩言葉を吐く岸恵子や珍しく意地悪な田中絹代に目が引く。

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Kj

3.5 手の付けられない不良の弟に、姉はどこまでも優しく

2022年8月25日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
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琥珀糖

3.5 宮川 一夫 日本映画の底力を示すカメラマンです 記憶されなければならない名前です

2019年10月19日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

日本映画界を代表する映画カメラマン宮川 一夫

本作は、その彼の撮影作品ですが、特にその彼が「銀残し」と呼びばれる特殊な現像手法を編みだし本作で使ったことでことに有名です

果たして彩度を落とした深みのある映像が美しく撮られています

それは冒頭の雨のシーンだけで明らかで感嘆させられます
桜並木の堤防の道のシーンは桜の淡い桃色が柔らかく本当に美しく撮られています
春風の生暖かさまでを感じることができるのです
ラストシーンの病院では寒々しい中に暖かみを見出だせるものでした
正に撮影が演出を行っているのです

気の強い姉役の岸恵子の美人顔はその落ち着いた色彩の中で良く映えて最も美しく撮れていました

田中絹代の初老の陰険な継母ぶりもはまっており
沈んだ色彩の中に淀んでいます

ハイライトたる姉弟があの桜と同じ桃色のテープで手首を結んで眠るシーンも、そのテープの色は彩度が落とされており鮮やかさは少しもありません

本作の一切合切が姉げんの記憶の中のものであったということなのだと思います
映画に於いてカメラマンの腕とは如何に重要なのもなのかを思い知らされるものでした

銀残しの手法は世界の手本となり、セブンとかプライベートライアンなどで今も観ることができます

宮川 一夫
日本映画の底力を示すカメラマンです
記憶されなければならない名前です

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あき240