大番

劇場公開日:

解説

週刊朝日連載、獅子文六の同名小説を「続・銀河の都」の笠原良三が脚色、「おかしな奴(1956)」の千葉泰樹が監督、“ギューちゃん”の青春時代を描く。撮影担当は「忘却の花びら」の完倉泰一。主な出演者は「いとはん物語」の加東大介、「女囚と共に」の原節子、「踊子」の淡島千景、「江利チエミの サザエさん(1956)」の仲代達矢。ほかに沢村貞子、太刀川洋一、多々良純、河津清三郎、東野英治郎、小林桂樹など。

1957年製作/117分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1957年3月5日

ストーリー

昭和二年の夏。一人の若者が東京駅に降り立った。不敵の面魂の、この若者の名は赤羽丑之助。--彼は四国の寒村に貧農の子として生れたが、百姓嫌いで小学生の時から鯨とりをするのだといって親を仰天させた。十七歳の年、若衆宿に入り、酒、煙草、ヨバイの教育まで受ける。十八歳になった丑之助は、町の富豪森家の令嬢可奈子を見かけ、その美しさに呆然自失となる。この可奈子に丑之助が恋文を渡したことが村中に知れて大騒ぎ、遂に彼は行方を昏まし東京へ飛出して来たというわけである。--東京で、丑之助は太田屋という三流の株屋に小僧として住込む。トンマでノロマ、しかも大飯食いの彼は忽ちギューちゃんの綽名を頂戴する。翌年の春、丑之助は一階級昇って“相場通し”を仰せつかる。生れつきの記憶のよさで彼は立派に役目を果す。徴兵検査で丑之助は帰郷するが、村で彼は、可奈子が有島伯爵の令息と結婚、東京にいることを知る。丑之助が帰京してみると、主家の太田屋は潰れていた。しかし彼を可愛がってくれていた富士証券の木谷さんの世話で、売買株の口銭を取るサイトリという商売を始める。昭和六年、商売に励んだお蔭で金回りもよくなった丑之助は、芸者遊びも覚え、そのうちおまきという待合女中と割ない仲となる。しかも彼は、チャップリンさんの綽名をもつ、落ちぶれてはいるが嘗ての大相場師に満鉄株を買えと暗示され、年末の大相場で二十万円も儲ける。おまきにダイヤの指輪を贈り、故郷へも家の新築費を送る豪華さ。おまきの結婚申込みにも、可奈子のような女を夢みる丑之助は断ってしまう。その彼は、ある日、友人の新どんを歌舞伎座に招待するが、幕間の廊下で可奈子とバッタリ出会う。余りの美しさに眼も眩んだか、丑之助は階段を転げ落ちる。やがて丑之助は大相場を張り始めた。可奈子に会った衝動からかも知れない。ところが五・一五事件、強気に買った彼は、株の大変動で一夜に全財産を失い、故郷へ都落ちの破目となる。おまきと別離の盃をくみかわす丑之助は、しかし捲土重来を心に誓っていた。

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