餌食(1979)
劇場公開日:1979年6月23日
解説
アメリカへ渡ったロック歌手が、“レゲエ”を土産に帰国して、その音を売り込むが、相手にされず孤立し、その怒りは、ふやけた時代と人への大量無差別殺人へと走って行く。脚本は「赫い髪の女」の荒井晴彦、「安藤昇の わが逃亡とSEXの記録」の高田純と出口出の共同執筆、監督は「聖母観音大菩薩」の若松孝二、撮影は志村敏雄がそれぞれ担当。
1979年製作/80分/日本
配給:東映
劇場公開日:1979年6月23日
ストーリー
八年前、ロックバンドを組んでいた倉本忠也は単身アメリカに渡り、今、レゲエバンド“ソルティードッグ”のカセットテープ一本を土産に帰国した。その日は、人気バンド“アイドルズ”の来日の日で、空港にはたれ幕がなびいていた。忠也はかつての仲間で、現在Nプロモーション社長の仲根に会い、テープを売り込むが、商売にならぬと言われる。忠也は盗品の牛乳やパンを売りに来る満と親しくなり、満の部屋に転がり込む。そこには、戦争中、上官に片腕を切り落とされた元バイオリニストの捨造がいて、38式歩兵銃を磨いていた。満には、客の食べ残しを持って来るピンクキャバレーでアルバイトしている女子高生の恵理というガールフレンドがいた。“アイドルズ”公演の日、忠也はNプロモーションのエレベーターで、八年前一緒に暮らしていた麻美と出会った。二人は麻美の部屋で抱擁し、麻美が仲根達からヘロインを与えられ、外タレ専門の売春婦に堕ちていること、仲根達が外タレのヘロインのルートを掌握していることを知り、忠也は愕然とする。暫くして、麻美がヘロイン中毒に蝕まれ、どうにもならない身体になっていることを悟った忠也は、彼女の首をそっと締め、眠らせるのだった。怒りに燃える忠也は、満とオートバイで、仲根達のヘロイン取り引き現場の武道館の一室へ乗り込んだ。銃撃戦の末、ヘロインと札束を掠奪するが、満は敵の弾を受けてしまう。満の部屋で、すでに体温のない満の肉体をみつめながら、恵理、捨造、忠也の三人は張りつめた糸がフッと切れる感触がした。捨造は屋根に上り、38型銃の引き金を絞った。翌朝、捨造と忠也が静かに道を歩いていると、突然、超スピードの車が二人に突進して来て、ポーンと捨造が宙に舞った。その昼、事故現場のチョーク跡を、人々は踏み歩き過ぎて行く。忠也の胸に、押えきれない憤りがドロドロと湧き起こり何事もなく生活している人々に向かい、突然38型銃を乱射し始めた。人々は続続と倒れ、阿鼻叫喚の声が上がり、一瞬にして地獄絵図となった街に、忠也は義憤に取り付かれたごとく、いつまでも引き金を絞り続ける……。