浮雲のレビュー・感想・評価
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南国で出会い、雨降る島で永久の別れ
高峰秀子と脚本の力がとにかく素晴らしかった。ゆき子=高峰秀子のセリフの一つ一つが最初から最後までリアルでシャープで男全般に対する皮肉と本心、普遍的。一方の富岡もゆき子に嫌みばかり言うクズ男だがどこまでも優しい。第一印象だって悪かったのに二人は出会ってしまった。子鹿のバンビのようにかわいらしいゆき子。一人で生きていける強さを持っているのにゆき子はひたすら富岡を追う。富岡もむげにしない。ゆき子がどんな男とつきあおうとどんな暮らしをしていても、ゆき子を拒むことは一切ない。優しさと腐れ縁の連続。二人は離れない。
高峰秀子、本当に凄い。娘時代の彼女はおんなじような役(親思いの健気な娘)ばっかりやらされていて本当に気の毒で可哀想だと思った。だからこのような作品にオファーされ堂々と演技するチャンスを与えられたのは女優として最高の幸せで彼女も肝が据わっていたんだと思う。この役をできる女優は今の日本にはいないでしょう。
むしろ憎しみ合っているかの男女。
とにかく高峰秀子と森雅之の演技力は半端ない
男が女を愛するには責任と義務が生じる
それは頭では分かってる
けれども、成り行きで気がつけば深い仲になってしまっている
女だってこんな男と付き合ってもどうにもならない
それは分かっているのに逃げない
気がつけば追いかけている
浮雲のようにあてどもなく漂い流されていく
千切れて別れてはまたくっついていく
理屈でない、だらしなく生きる楽さが互いに欲しいのだ
いつしかそこに強烈なリアリティーを感じるようになった、自分も大人のはしくれになったということか
幸子が富岡をなじる言葉のひとつひとつにリアルで聞き覚えのある男性も多いはずと思う
とにかく幸子は何度も泣く
しかし富岡は泣くことはない
そんな真面目な男ではない
だがラストシーンで初めて泣くのだ
浮雲は流れ流れて行き着いた最果ての地で山にぶつかり雨となったのだ
とにかく高峰秀子の演技力は半端ない
仏印での清純な女性からやさぐれたパンパンまで見事に演じてみせている
森雅之もまた彼が演じる富岡兼吾という男が漂よわせる空気をこれ以上ないリアリティーで感じさせる名演技だった
監督の演出も的確で過剰ではなく流麗なほどにスムーズに物語が進行する
日本映画の傑作のひとつ
恋の道行き
男と女。50年生きてきたからわかる何か
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