劇場公開日 1955年1月15日

「とにかく高峰秀子と森雅之の演技力は半端ない」浮雲 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0とにかく高峰秀子と森雅之の演技力は半端ない

2019年8月25日
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鑑賞方法:DVD/BD

男が女を愛するには責任と義務が生じる
それは頭では分かってる
けれども、成り行きで気がつけば深い仲になってしまっている

女だってこんな男と付き合ってもどうにもならない
それは分かっているのに逃げない
気がつけば追いかけている

浮雲のようにあてどもなく漂い流されていく
千切れて別れてはまたくっついていく
理屈でない、だらしなく生きる楽さが互いに欲しいのだ

いつしかそこに強烈なリアリティーを感じるようになった、自分も大人のはしくれになったということか
幸子が富岡をなじる言葉のひとつひとつにリアルで聞き覚えのある男性も多いはずと思う

とにかく幸子は何度も泣く
しかし富岡は泣くことはない
そんな真面目な男ではない
だがラストシーンで初めて泣くのだ

浮雲は流れ流れて行き着いた最果ての地で山にぶつかり雨となったのだ

とにかく高峰秀子の演技力は半端ない
仏印での清純な女性からやさぐれたパンパンまで見事に演じてみせている
森雅之もまた彼が演じる富岡兼吾という男が漂よわせる空気をこれ以上ないリアリティーで感じさせる名演技だった

監督の演出も的確で過剰ではなく流麗なほどにスムーズに物語が進行する

日本映画の傑作のひとつ

あき240