偽れる盛装のレビュー・感想・評価
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京マチ子の役者根性
京都を舞台に、「男は金づる」と渡り歩く芸者、その妹は地道な暮らし、二人の対照的な姉妹を通じて、女の運命を見事に描いた吉村公三郎監督作。
「京都は幸い戦災はまぬがれたけれど、それが京都にとって幸せだったかは分からない。古い歴史の跡は残されたけれど、そのかわりに封建的な世界も残された」という名セリフが心に残る。
京都の人気芸者の君蝶(京マチ子)は「金の切れ目は縁の切れ目」と割り切って、金持ち男を次から次へとモノにして、金を手にする強い女。
しかし、彼女の妹の妙子(藤田泰子)は地味に事務員として勤務しており、相思相愛の彼氏(小林桂樹…若い!)がいるが、その彼氏の家も芸者のウチだが母親が「(君蝶のいる家とは)格式が違う」と言って、結婚に反対する。
君蝶は上手いこと男渡りをしているように見えたのだが、あまりにドライ過ぎたこともあり、別れた男から恨みをかって………といった物語になっていく。
本作では、京マチ子が重たそうな和服を着て、全速力で京都の町を走るシーンに「役者根性」を見た。
また、京マチ子は「お金がらみ」でも、いい味を出している。
この映画、1951年のキネマ旬報ベストテンで第3位だが、1位が小津監督の『麦秋』、2位が成瀬監督の『めし』だから仕方ない。
なかなかの佳作。
<映倫No.151>
娘道成寺の女
小唄から始まり、長唄が聞こえて、娘道成寺のクドキの箇所の踊りのお稽古場面を見ることができただけで嬉しい💕それに加えて、芸妓・君蝶=京マチ子の美しさと強さと逞しさ、働かなきゃ!が心に染み入る映画で、夢のような時間でした。
着物がまた素敵で、当時としては京都としては、かなりモダンだと思うような、大胆な色々な縞柄。それを完璧に京マチ子は着こなしていて美しい。娘道成寺の衣装と顔で足袋はだしで全速力で走る君蝶!道成寺の女を怒らせたら怖いこと、知らなかったのね、妻子が居るのに芸者遊びしたおじさん。
京都は確かに戦争の被害を受けずに済んだから、町家の美しい屋根と町並みも残った。そして旧態依然も残ったという言葉が胸に強く響いた。だから、君蝶が妹を思う気持ちも真実で説得力がある。私はここで、もう少し踏ん張って頑張るから、あんたは東京に、格式とかそんなこと関係なく自由に生きることができる場所に行け!と言う姉。泣くから駅まで見送りに行ってはだめよ、と母に言う娘=君蝶。
京マチ子の怒った喧嘩顔はいつも美しい。この映画でも女同士のほっぺた叩き合い、つかみ合いの喧嘩シーンよかった。
殿山、進藤、小林といった錚々たる男性俳優陣も素晴らしかった。京マチ子、27歳、なんて大人で辛くて美しいんだろう。
圧倒的な京マチ子 祇園と戦後のエネルギー
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