偽れる盛装

劇場公開日:

解説

本年五月頃より、吉村公三郎監督が独立、新藤兼人の書卸し脚本によって準備を進めていた「肉体の盛装」を、このたび大映との提携によって着手、「偽れる盛装」と改題して世に送るもの。製作担当は、「赤城から来た男」の亀田耕司。演技陣は、「火の鳥(1950)」の京マチ子、「エデンの海(1950)」の藤田泰子、「二十歳前後」の北河内妙子、「東京の門」の村田知英子、「二十歳前後」の小林桂樹に、菅井一郎、進藤英太郎、殿山泰司、河津清三郎などである。

1951年製作/103分/日本
原題:Under Silk Garments
配給:大映
劇場公開日:1951年1月13日

ストーリー

靜乃家の君蝶は祇園界隈で凄腕をもってならした芸者だった。その妹妙子は、姉とおよそ反対に、京都市の観光課の事務員をしている地味な娘だった。二人の母きくは、その昔祇園で一流をうたわれた芸者だったが、染色会社の社長渡辺に囲われ、二人の娘を生んでからは、旦那大事と生きて来て、旦那が窮地に陥ったとき長女をその犠牲にして芸者に出し、旦那の死後、その息子が金の無心を言いに来ると、自分たちの住んでいる家を抵当にしてもその金を工面するというような、古風で義理固い女だった。その母に強く反発をして、姉の君蝶は、いっそう腕によりをかけ、美術商の笠間を絞れるだけ絞り、次には、速神丸本舗の一番々頭の山下を虜にしていた。妹の妙子は、やはり祇園で有名な料亭、菊亭の一人息子で同じ観光課に勤めている孝次と恋をしていたが、孝次の母千代は、きくとは昔の朋輩でありながら、家の格式が違うと言って二人の結婚を許さなかった。妙子の親友で、父が東京の大学の教授をしている雪子は久しぶりで西下して、妙子たちの恋愛を知り、二人して古い環境から抜け出し東京へ逃げて来ることを勧めるが、孝次には、家を出て独立する自信もないのだった。君蝶から見るとこうした皆が歯がゆくてならなかった。殊に千代が、身分が違うと言って妙子と孝次の結婚を許さなかった高慢さが、我慢ならなかった。山下をいいかげん絞りあげたところでもあったので、今度は、千代の旦那格の男で、小料理屋をしている伊勢浜へ、君蝶の誘惑の手が伸びた。千代はじだんだ踏んで口惜しがり、逢引の場へ乗り込んで君蝶を面罵したが、若く美しい君蝶の敵ではなかった。その間に、晴の温習会が始まり、君蝶は伊勢浜のおかげで、美々しい仕度をして出演することが出来た。一方、速神丸の山下は、金の使い込みがばれて店を追われ、せめて君蝶にでも逢いたいと思ったが、彼女が冷たく彼を寄せつけないのに思い詰め、出刃包丁をのんで彼女の楽屋を訪ね、逃げる君蝶を追って町を走り、ついに彼女を刺してしまった。一命をとりとめた君蝶は病床に横たわりながら、東京へ行くという孝次と妙子を優しく見送り、自分もこんな世界とは縁切りだとつぶやくのだった。

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映画レビュー

4.0京マチ子の役者根性

2022年7月17日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

京都を舞台に、「男は金づる」と渡り歩く芸者、その妹は地道な暮らし、二人の対照的な姉妹を通じて、女の運命を見事に描いた吉村公三郎監督作。

「京都は幸い戦災はまぬがれたけれど、それが京都にとって幸せだったかは分からない。古い歴史の跡は残されたけれど、そのかわりに封建的な世界も残された」という名セリフが心に残る。

京都の人気芸者の君蝶(京マチ子)は「金の切れ目は縁の切れ目」と割り切って、金持ち男を次から次へとモノにして、金を手にする強い女。
しかし、彼女の妹の妙子(藤田泰子)は地味に事務員として勤務しており、相思相愛の彼氏(小林桂樹…若い!)がいるが、その彼氏の家も芸者のウチだが母親が「(君蝶のいる家とは)格式が違う」と言って、結婚に反対する。
君蝶は上手いこと男渡りをしているように見えたのだが、あまりにドライ過ぎたこともあり、別れた男から恨みをかって………といった物語になっていく。

本作では、京マチ子が重たそうな和服を着て、全速力で京都の町を走るシーンに「役者根性」を見た。
また、京マチ子は「お金がらみ」でも、いい味を出している。

この映画、1951年のキネマ旬報ベストテンで第3位だが、1位が小津監督の『麦秋』、2位が成瀬監督の『めし』だから仕方ない。

なかなかの佳作。

<映倫No.151>

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たいちぃ

5.0素晴らしい

2021年2月23日
iPhoneアプリから投稿

モノクロだけど祇園の素晴らしい着物が、
よくわかりました☆彡

脚本も素晴らしい。。。。。

京マチ子さん美しいわ!!

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花丸

4.5娘道成寺の女

2021年2月22日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

萌える

小唄から始まり、長唄が聞こえて、娘道成寺のクドキの箇所の踊りのお稽古場面を見ることができただけで嬉しい💕それに加えて、芸妓・君蝶=京マチ子の美しさと強さと逞しさ、働かなきゃ!が心に染み入る映画で、夢のような時間でした。

着物がまた素敵で、当時としては京都としては、かなりモダンだと思うような、大胆な色々な縞柄。それを完璧に京マチ子は着こなしていて美しい。娘道成寺の衣装と顔で足袋はだしで全速力で走る君蝶!道成寺の女を怒らせたら怖いこと、知らなかったのね、妻子が居るのに芸者遊びしたおじさん。

京都は確かに戦争の被害を受けずに済んだから、町家の美しい屋根と町並みも残った。そして旧態依然も残ったという言葉が胸に強く響いた。だから、君蝶が妹を思う気持ちも真実で説得力がある。私はここで、もう少し踏ん張って頑張るから、あんたは東京に、格式とかそんなこと関係なく自由に生きることができる場所に行け!と言う姉。泣くから駅まで見送りに行ってはだめよ、と母に言う娘=君蝶。

京マチ子の怒った喧嘩顔はいつも美しい。この映画でも女同士のほっぺた叩き合い、つかみ合いの喧嘩シーンよかった。

殿山、進藤、小林といった錚々たる男性俳優陣も素晴らしかった。京マチ子、27歳、なんて大人で辛くて美しいんだろう。

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talisman

5.0圧倒的な京マチ子 祇園と戦後のエネルギー

2018年3月11日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

京マチ子がすばらしい。
男に翻弄される悲劇の女でもなく、都会に逃げる女でもなく、
難しい世界から逃げずに戦う女の物語。
力強い女の生きざまを京マチ子が魅せてくれる。
戦後の日本のエネルギー、祇園の世界の複雑さ、強い女の生きざま。
見終わって元気になれる映画。

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osan
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