雨の中に消えて
劇場公開日:1963年3月17日
解説
“若い女性”連載・石坂洋次郎原作を「危いことなら銭になる」の池田一朗と「青い山脈(1963)」の監督西河克己が共同で脚色、監督した青春ドラマ。撮影は「いつでも夢を」の横山実。
1963年製作/263分/日本
配給:日活
劇場公開日:1963年3月17日
ストーリー
川路あや子、河原たか子、桑田きみえの三人は北国の高校の同窓生、目下お寺の部屋を借りてささやかな、けれど自由奔放な同居生活を営んでいた。決活でチャーミングなあや子は女子大生、ボーイフレンドの村田栄吉がいる。せっせと花嫁修業に励むきみえは、高校時代、雪山で優しく抱いてくれた教師渡部との淡い思い出に浸るような感傷的なところもある。出版社の編集員であるたか子は一番おとな、唯一の苦手は彼女に好意をよせる作家高畠である。期せずしてこの三人に襲ってきたのは、不可解な大人の世界の激しい空気だった。都会議員候補樺山の応援弁士を引きうけたあや子は、二号が二人もいる彼が自分のお尻をツルリとなでること、その上、村田が童貞でないことを知っては我慢できなかった。しかし、村田の淡々とした態度から善意に解釈することができるようになった。たか子は熱海の高畠を訪ねて、過去に辛酸をなめ尽した中年男の異常な心理に触れ、自分の幼なさを知った。寺で留守番中のきみえを訪れたのは夢にも忘れたことのない渡部だった。しかし、結婚式を控えた彼が、あのときのことは忘れて欲しいと頼む態度に、夢は崩れ去った。そんなある日、三人の同居生活を解消する話がもちあがった。お互いの女くささが鼻につくし男の人との関係がうまくいかないというのが理由だった。お金のある中年男に魅かれるたか子、古風な見合い結婚こそ女の幸福と考えるきみえ、そしてあや子は結婚に結びつかない恋愛にも倫理的な根拠があっていいと主張するのだった。折も折、村田が父の死で郷里に帰ることになった。バス会社の経営を継ぐのだという。あや子と村田は雨の降る中で最後の食事をし公園を散歩した。将来を語り合っているうちに、あや子の胸に熱いものがこみあげてきた。傘をたたんで抱擁する二人の全身に雨が降りそそいでいた。