あした輝く
劇場公開日:1974年11月2日
解説
戦争末期の満州から戦後の混乱期の日本を舞台に、清らかに強くひとつの愛を貫いた女性の半生を描く。原作は里中満智子の同名劇画。脚本は「ダメおやじ」のジェームス三木と「喜劇 日本列島震度0」の南部英夫、監督は脚本も執筆している「愛と誠」の山根成之、撮影も同作の竹村博がそれぞれ担当。
1974年製作/87分/日本
配給:松竹
劇場公開日:1974年11月2日
ストーリー
満州・奉天の街で、夏樹病院の一人娘・夏樹今日子と若い衛生兵の速水香が知り合ったのは、戦争が終末を迎えようとする昭和二十年の初夏のことだった。今日子は十六歳、香は二十歳だった。その頃、今日子は、香の上官の加賀中尉に求婚されたが、彼女の心は香の人なつっこい人柄に惹きつけられていた。やがて終戦。日本軍は民間人を見捨てて引揚げてしまったために、街の人たちは香と夏樹博士をリーダーとして、遠い港を目指して徒歩で出発した。寒さと飢えのために人々を不安と焦燥が支配した。そして夏樹博士の急死。うちひしがれた今日子を支えたのは香の力強い愛だった。やがて二人は結婚、今日子は妊娠した。香はやがて生れてくる子供に“明日香”と命名した。一行はやっと目的地に向かう貨物列車に乗れた時、ソ連兵がやって来た。軍人は名乗り出ろ、というのだ。速水が自ら犠牲になりソ連兵に捕われたことで、列車は発車できた。その時、ソ連兵の人垣から銃声が聞こえた。銃殺? あまりのショックに今日子は流産してしまった。辿り着いた引揚船の上で、今日子の尊敬する緑川先生が女児を出産して、息をひきとった。今日子はその子を「明日香」と名付け、育てる決心をした。千葉に住む香の母は、息子の戦死の公報を受け失意の中にあったが、今日子と孫娘の出現に生きる歓びを見い出した。その家で今日子と明日香と姑のささやかな生活が始った。それから四年後、香の生存が伝えられた。帰還を祈る日々、母は病いに寝込むようになった。やがて香が帰還した。二人は抱き合い、泣いた。その頃、母は明日香に看取られ、息をひきとった。母の死の悲嘆にくれる良人を見て、今日子は明日香の出生の秘密を打ちあけることができなかった。昭和二十七年。明日香は小学校に入学した。そして今日子は再び妊娠。この機会に今日子は、明日香の秘密を香に語った。だが香はすでに知っていた。「血のつながりは無くても、明日香は僕にとって、本当の我が娘だよ」と言うやさしい香の言葉に、今日子は、自分の愛が今、実り始めたことを、身体中で感じるのだった。