愛妻記
劇場公開日:1959年2月24日
解説
尾崎一雄の『芳兵衛物語』の映画化。「愛の濃淡」の長瀬喜伴が脚色、「みみずく説法」の久松静児が監督、「おトラさん大繁盛」の栗林実が撮影を、それぞれ担当した。
1959年製作/107分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1959年2月24日
ストーリー
昭和七年、新進作家多木太一は、妻の節子と別れて早稲田附近の下宿屋に暢気な日々を送っていた。ところが、多木の後輩石井は、学生ながら郷里の女純子と結婚、麻雀クラブをはじめるという、抜け目ない男だった。そして多木は云われるままにその店を手伝っていた。その店には純子の友達芳江も郷里から手伝いに来ていた。子供子供したところこそあったが、元気に働く芳江は人気の的だった。そんな時、純子と石井の両親の仲がうまくいかず、石井夫婦は多木の下宿にうつって来た。そんなことで多木と芳江の仲は急速に進んで、二人は将来を誓い合う仲になった。春の天気のいい日、多木と芳江は見すぼらしい下宿屋の一室に、愛の巣を持った。恩師の世話で古典を現代語に訳す仕事をもらったと云っても、生活は苦しかった。しかし、芳江は着物を質に入れ、金を手にすると“儲った!”と喜ぶ無邪気さだった。正月早々、着るものがなく仮病を使うほどの貧乏だったが、芳江は笑いを忘れなかった。一方、石井夫婦は親と衝突、遂に家出、警察に捜索願いが出されるという騒ぎだった。また、多木の先妻節子が、後輩の大衆作家茂木といさかいし、多木の親友の新進作家深見にともなわれて説得をたのみに来たりした。しかし、多木を信ずる芳江は少しも気を廻したりせずかえってわが事のように心配するのだった。これにくらべ石井の方は散々だった。生活のため純子がカフェーづとめするようになると、石井はあらぬ疑念をもっていさかいがたえなかった。そんなある日、芳江の幼なじみ野々宮がたずねて来た。自分がいては話にくかろうと風呂に来た多木を見て石井は感心した。しかし、翌日、野々宮と浅草に行った芳江を待つ多木は淋しかった。それは芳江も同じであった。夕刻、散歩に出た芳江は、愛の結晶がやどったことを告げた。多木は生れて来る子供のためにも、今度こそ頑張ることを心に誓うのだった。