ONCE ダブリンの街角で

ALLTIME BEST

劇場公開日:

解説・あらすじ

「はじまりのうた」「シング・ストリート 未来へのうた」で知られるジョン・カーニー監督の出世作で、ミュージシャン出身のカーニーが音楽を題材に描いた長編映画。アイルランド・ダブリンの街角を舞台に、ストリートミュージシャンの男と移民の女が出会い、音楽を通じて心を通わせていく姿を描く。

ダブリンのストリートで自作の歌を奏でる男の前に、ひとりの女が現れる。彼女のピアノにほれ込んだ男は、彼女のために曲を書き、2人のセッションは美しいハーモニーを奏でる。深く重なり合っていくメロディが、やがて孤独だった2人の心を強く結びつけていく。

主演はアイルランドのロックバンド「ザ・フレイムス」のグレン・ハンサードと、彼のアルバムで共作しているチェコ出身のミュージシャン、マルケタ・イルグロバ。2007年のサンダンス映画祭で観客賞を受賞して注目を集め、当初は全米2館のみの公開だったが、口コミにより140館まで上映館が拡大した。ハンサードとイルグロバの共作による主題歌「フォーリング・スローリー」は、第80回アカデミー賞で主題歌賞を受賞。その後、本作はブロードウェイでミュージカル化されるなど、大きな成功を収めた。

2006年製作/87分/アイルランド
原題または英題:Once
配給:ポニーキャニオン
劇場公開日:2025年7月11日

その他の公開日:2007年11月3日(日本初公開)

原則として東京で一週間以上の上映が行われた場合に掲載しています。
※映画祭での上映や一部の特集、上映・特別上映、配給会社が主体ではない上映企画等で公開されたものなど掲載されない場合もあります。

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映画レビュー

4.0こころに染みる切なさと温もりのある音楽が映像と共に奏でられる心地良さ

2025年3月2日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

興奮

知的

「はじまりのうた」(2013年)でお気に入りの監督になったジョン・カーニーの公開当時大評判を呼んだ世界デビュー作を漸く見学しました。ダブリンに住むストリート・ミュージシャンの男性とチェコからアイルランドに移住した音楽の才能豊かな女性の一期一会のショート・ストーリーの音楽映画。驚いたのは、心に染み入るような切なさと人肌の温もりのある音楽(洋楽に疎いためジャンルも分からず、上手く説明できないのがもどかしい)の親しみ易さと、手持ちカメラの即興的で作為の無いカメラワークの、それでいて生活感をそのまま映し出したようなアングルの自由さと的確さも兼ね備えた撮影の素晴らしさでした。技巧的には演出も撮影も「はじまりのうた」の方が洗練されていて骨格が確りしているし、個人的に古典映画好きの嗜好に合っています。でもどちらが優れているというより、音楽に合わせた映像作りの違いと言えるでしょう。「はじまりのうた」は音楽を楽しむように映像作りがなされていて、この「ONCE」は映像と音楽が一緒に奏でられていました。それは登場人物がいる空間の中に観る者が一緒に存在して、彼らの一挙手一投足を見詰める親近感を醸成しています。

この映画から想い出すのが、クロード・ルルーシュ監督の「男と女」(1966年)、そして高校生時代の青春のバイブル、アーサー・バロン監督の「ジェレミー」(1973年)の2作品です。前者は男女の微妙な恋愛心理をボサノバの独特なリズムで伴奏する、斬新さと色香がありました。訳あり男女の心理的変化を丁寧に扱い、制作費の少なさと音楽の活かし方が近いです。お金を掛ければ良い映画ができる訳でもなく、制作費が少なくても音楽を味方にすれば心地良い映画作品ができあがることを証明しています。後者は、高校生男女の儚い初恋の別れを切ない音楽で抒情的に描いたセミ・ドキュメンタリータッチの身近に感じる青春もので、この映画の質素で巧みに構成された展開の自然な流れに音楽の持つ魅力が絶妙に調和している点で似ています。

何気ない日常の生活シーンでいいのは、女性が故障した掃除機を引っ張りながら行きつけの楽器店を訪れ、メンデルスゾーンのクラシックに続いて自作をギターで弾く男性にピアノを合わせていくところです。二人を囲む様々な楽器とモーツアルトとベルディのポスターが貼ってある音楽が溢れるローケーションと、そこに掃除機がある生活感、何とも言えない味があります。この“フォーリング・スローリー”と言う、飾り気無くシンプルで柔らかな甘さもある曲がいい。それにしても使い込んだギターの穴が開いた状態は気にならないのでしょうか。彼の家で掃除機を修理して、二人だけになってから気まずい思いをするも、翌日仲直りして今度は彼女の家を訪ねるシークエンスでは、移民家族の生活感が良く出ています。母親と子供、それにテレビを観に来るチェコ青年3人の人物の動きとチェコ語の響き。そして男性の曲に作詞するシーンがまたいい。CDデッキの電池切れで街に出て、女性が歩きながら歌うその夜の街の風景。“イフ・ユー・ウォント・ミー”のミュージック・ビデオのような趣があります。この演出タッチは、男性が裏切られて別れた女性を想いながら曲作りするシーンのフラッシュバックで更に切なさが募ります。このアップで押し通した淡くぼやけた色彩の映像が“ライズ”の曲と見事に融合している巧さは、実に音楽的と言えるでしょう。
後半はロンドンに進出するためのデモテープ録音のエピソードがクライマックスになり、バンドメンバー3人が加わった本格的な曲作りを丁寧に再現してくれます。

主演のグレン・ハンサードとマイケタ・イルグロヴァのお二人は実際の音楽家でありながら、無理のない自然な演技でした。表現者として優れた歌手も、歌いながら演じることを身に付けていると思えば当然かも知れません。カーニーの演出との相性も良かった。これは本格的な音楽映画を目指したキャスティングが嵌り、演出家ジョン・カーニーの音楽的素養が映画の世界で開花した珠玉の作品と言っていいと思います。

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共感した! 5件)
Gustav

3.0もやもや、もやっと

2025年2月23日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悲しい

楽しい

 ストリート・ミュージシャンの男が、花売の女とピアノセッションしてみる。彼は感触が良いと感じ、より彼女と親しくなろうとする。幼い娘を養っているチェコ移民の彼女は、彼との楽曲制作に協力し。
 別れた元カノに未練がある彼、彼女もまたチェコにいる夫に同様なのかな、そのためか躊躇がある二人。もやもや、もやっとしているところが、なんともリアルでした。

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sironabe

5.0穏やかで自然で透き通っているけど ほろっと苦い…私は大好きな作品で...

2024年7月6日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

穏やかで自然で透き通っているけど
ほろっと苦い…私は大好きな作品でした。
演者も監督もミュージシャンだからか
音楽への愛に溢れていて、音楽の力や素晴らしさを改めて実感しました。
映画館で鑑賞したかったなぁ、あの音楽に包まれたかったなぁ、あのレコーディングメンバーたちと一緒に音楽を全身で浴びたかったなぁ。
途中のセッションのシーンも、とても好きでした…!

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とも

5.0いい映画。

2024年6月15日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD
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共感した! 4件)
マサシ

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