劇場公開日 2007年11月3日

ONCE ダブリンの街角で : 映画評論・批評

2007年10月30日更新

2007年11月3日より渋谷シネ・アミューズほかにてロードショー

素朴さやつつましさがフィルムに充填された奇跡の映画

甘く切ない、典型的な“ボーイ・ミーツ・ガール”の物語だ。移民が増加傾向にあるアイルランドのダブリンを舞台に、プロのミュージシャンを夢見るストリートミュージシャンの男と、チェコからやって来た花売りや家政婦をしている若い女の出会いが描かれる。恐ろしいほどの超低予算の小品(製作費は日本円でわずか1800万円)ながら、アラン・パーカー監督「ザ・コミットメンツ」を彷彿とさせる、アイリッシュ魂や彼らの音楽の神が宿ったかのような奇跡のフィルムだ。

アイルランドの人気ロックバンド“ザ・フレイムス”のフロントマン、グレン・ハンサードによるアダルトオリエンテッドなラブソングが全曲、胸に沁みる。夢の実現に向けて、男のギターと女のピアノの音色が“愛”を交歓させる彼らのレコーディング風景は、音楽ファンなら誰しも血がたぎる映画の白眉だ!

父親のバイク、トライアンフを駆る海辺へのドライブデートや、ダブリンの街角を散歩する2人のさりげない2ショットが心を揺さぶるのは、この男女の手の“距離感”が均衡を保たれているからだ。まるで「マディソン郡の橋」の男女のような運命に導かれた“たった一度の恋”なのだ。「歌を歌う友だちをビデオで撮影し合ってた16歳の頃に戻ったようだ」と語る元ベーシストのジョン・カーニー監督の素朴さやつつましさが、フィルムのひとかけらひとかけらに奇跡的に充填されている。

(佐藤睦雄)

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