劇場公開日 2007年11月10日

転々 : インタビュー

2007年11月8日更新

三浦友和インタビュー
「なるべく原作のイメージに近くした方がいいと思ったんです」

(聞き手:編集部)

三浦友和
三浦友和

――三木監督のこれまでの映画をすでに見ていたそうですが、やはりピンと来るところはあったのですか?

「『亀は意外にはやく泳ぐ』という映画が、自分としては割とツボにはまった感じはありましたね。ああ、こういうのを撮る人がいるんだなあって思ってね。あとは『時効警察』を見て、ちょっと舞台っぽいなあっと思いながらも不思議な世界観だなって感じてました」

――髪にエクステを付けたのは、三浦さんのアイデアだったとか。

「なるべく原作のイメージに近くした方がいいと思ったんです。三木監督としたら内心どうだったかはわかりませんが(笑)、このエクステに関しては特に何か言われたことはなかったですね。他の衣装なんかはおおまかだけど、イメージは明確で、結構細かかったかもしれません。たしかオダギリ君の方が、ボブ・ディランの若い頃の写真をモチーフにしていたのかな。髪の毛のふくらんだ感じとかを含めてね。で、僕の方は『スケアクロウ』のジーン・ハックマンで、あのたくさん服を重ねて着ていた感じですよね。10枚くらい重ねて着ていて、その中にちょっと派手な洋服もあって、そのミスマッチ感がいいなあと(笑)」

――監督と役について話し合ったことは?

「三木監督の持っている世界観っていうのは、彼独特のものですから、話し合うというよりは一生懸命近づこうかなと努力したつもりですけどね。何をこの監督は望んでいるのかを考えながら。でも、脚本はなんとなく面白いですけど、何を面白がっているのかは、スタッフもキャストもはっきりと分からないと思うんです。本読みのときも笑っているのは監督だけですからね。ただ、何かを面白がって表現しているわけですから、現場の雰囲気や、指示で監督の理想に近づけて行ければいいかなと思ってました。三木さんの考えていることは出来上がってみないと分からないと思います。非常に個人的な映画の作り方をする人ですから」

――三木監督は、故・相米慎二監督の「台風クラブ」(85)を見て、今回の役を三浦さんに頼んだそうです。

若手監督からオファーが続々
若手監督からオファーが続々

「20年も前の映画なのに、そういう監督が多いんですよ。不思議ですよね。映画の出来が素晴らしいというのもあるんでしょうけど、あのときに演じた教師の20年後を演じてくださいっていう若手の監督からのオファーが非常に多いです。『ALWAYS 三丁目の夕日』の山崎貴監督、『松ヶ根乱射事件』の山下敦広監督も、『茶の味』の石井克人監督もそうでした。必ず出ますよね、『台風クラブ』の話と相米組の話は(笑)。だから『台風クラブ』をやってなかったら、この人たちからは声が掛からなかったということですよね(笑)。いろんな意味で、この仕事に対する取り組み方が変わった、もの凄く大きな節目でなんだと思います」

――「台風クラブ」に出演したのは、何かイメージを変えたいと思ったからなのでしょうか?

「いや、何も思ってなかったんですよ。たしか、あの映画に出たのは33か34歳の頃だと思うんですけど、その時まで20代は文芸作品、青春ものの企画しかオファーが来ませんでしたからね、現実的に。そのあとで、何をしたらいいか分からない時代が30代に入ってあったんです。そんなときに、相米さんからもの凄い低予算の、しかもわけの分からない映画の話が来たわけですが、僕としては初めての低予算のマイナー系の映画で、そういう映画をやってみたいと思ってやったわけではなく、やってみたらどうだいと言われてやった仕事だったんです。最初に相米さんから話を聞かされたときは、『この役から三浦友和のイメージは浮かんでこない。なんでこういうキャスティングするんですか』って逆に聞いたくらいですからね。で、相米さんは『夢で見たからいいじゃない』っていうんですよ、多分嘘だと思うんですけどね(笑)」

――今回初共演となったオダギリジョーさんの印象は?

オダギリは“他に類をみない若手俳優”
オダギリは“他に類をみない若手俳優”

「面白いですよね。独特の反骨精神があって、独特なモノのとらえ方があるんです。あの年代の俳優を全員知っているわけではないですけど、例を見ないですね、ああいう俳優は。人、個性、全部含めて。知らないと似ているように見えるんです。だけど、個人的に知り合ってみると、このタイプはいないですよ。面白いと思っているもの、美しいと思っているものが個性的なんでしょうね、きっと。価値観が凄くハッキリしているんですよ。自分の中の何かと合わないと、閉じてしまうタイプだと思うので、多分もの凄く人見知りですよ。幸い、僕はちょっとどこかで合ったみたいです。馬鹿みたいな話ですけど、彼と僕は2人とも辰年で水瓶座なんですよ。普段こういう話はあまり信じないんですけど、なんとなく嬉しいじゃないですか、こういうのって(笑)」

――映画では、三浦さん扮する福原はカレーライスを食べてから刑務所に入りますが、もし三浦さんが刑務所に入るとしたら何を食べますか?

「何でしょうね? 死ぬ前の最後って言うわけではないですからね。居酒屋で一杯やりながら刺身とか、くどい揚げ物とかを食べるのかな(笑)」

インタビュー4 ~三木聡監督&三浦友和&吉高由里子インタビュー(4)
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