劇場公開日 2007年11月10日

転々 : インタビュー

2007年11月8日更新

三木聡監督インタビュー

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――その岸部一徳さんにはどうやってオファーを出したんですか?

「ちょっと(オファーを)受けてもらえるか不安でしたが、ストレートにお願いしましたよ(笑)。やっぱり面白いですよね、岸部さんは。自分がどう立つか、どう在るかはギャグに対するセンスじゃないですか。あの無防備に眼鏡を洗ってる感じなんて、芝居でやってるんだけど、可笑しいですよねえ(笑)。現場でモニター見ながら、一人で笑ってましたよ。最初は車を縦列駐車している設定だったんですけど、岸部さんが車の免許をもっていないということなんで、眼鏡を洗っている設定にしたんです。そしたら、岸部さんが『オレ、実際3日前に眼鏡洗ったよ』って言ってました(笑)。俳優さんによっては普通の庶民生活と離れたところで生きている人もいるんでしょうけど、岸部さんはすんなりと溶け込んでましたね。そこは、さすがに日本映画を支える俳優さんの一人だなって感じました」

タイトルどおり東京を転々と歩くロードムービー
タイトルどおり東京を転々と歩くロードムービー

――前作に続いてのロードムービーでしたが、今回はロードムービーというジャンルを別の角度から切り取った新鮮な作品だったような気がします。

「2本続けてロードムービーとなったのは、たまたまなんですけどね。原作もあるんですけど、ベタなところはあまり撮らずに、路地とかを中心に撮りました。ただ、この映画を撮影していた時期が、プチバブルで、今まであった建物を解体する時期だったんですよね。だから再開発の嵐で、撮影した場所でも、コインパーキングになったりして、今はなくなってしまったところがいっぱいあります(笑)。そこまでして再開発ばかりしなくてもって思いますよ、やっぱり。僕も古いモノが好きというわけではなくて、規格に合わないモノを外していく感じが嫌なんですよね。今回は歩きのロードムービーだったんですけど、歩くっていう行為は意外に発見が多いですよね。実際、今回ロケしたような場所って行けそうで行けない所で、オダギリさんたちが新鮮だって言ってくれたのは嬉しかったですね」

――時計屋さんの出てくるシーンを含め、映画全体から現在の東京を映像で残しておきたいっていう思いが伝わりました。

東京の意外な“表情”が見られる
東京の意外な“表情”が見られる

「ああいった商店はだいぶなくなってきて、珍しくなってきましたからね。『街の時計屋はどうやって暮らしているのか』っていう素朴な疑問が劇中にも出てきますけど、製作部がロケで店を借りに行くときに、設定を説明したら、時計屋さんから『本当に不思議だね、どうやって暮らしているんだろうね。教えてくれよ』って逆に言われたって話してました(笑)。実際あるものがなくなっていってしまうっていうことも含めてドキュメンタリーの部分もあるんですけど、その空気と街の雰囲気がないまぜになってレンズに収まっているように感じましたね」

――他にも撮りたかったところがいっぱいあるんじゃないですか?

「そうですね。目黒とかにもいい坂とかあったんですけどね。なるべく東京の北部の方でということで今回は泣く泣くあきらめました。でもスナックのシーンで東向島は撮ることが出来ました。あの辺の歓楽街のタイル張りの街や、新宿の超高層ビル群を引きで撮れる割と有名なロケ地も、高層ビル群との間にマンションが建つということで、今撮らないと、この抜けが撮れないぞって気持ちで撮りましたよ。そういった意味でその時代でしか撮れないものを記録したっていう感じではありますよね。今回は体力的には大変でしたけど、いろんなところに行かれて楽しかったですね」

インタビュー3 ~三木聡監督&三浦友和&吉高由里子インタビュー(3)
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