色々と問題のある中学生。喩えるのは失礼だけど、金八先生に出てくるようなエピソードをもっと暗くしたような雰囲気。教師側は生徒たちの思いがけない行動に対処できずにいるような、悩める先生ばかり。決して模範的な教師像を描いたわけじゃなく、自分の中学生時代を生徒たちに投影するかのように対処していく、精神面を描いた作品でした。
主人公でもある26歳の中学教師深津(並木愛枝)は中学時代に教師を彫刻刀で刺してしまった過去を持ち、通っている精神科医の影響で自ら教師の道を選んだ女性。医師の指摘通り、自分の14歳の時と同じ苦悩を持つ生徒を助けてあげたいと望んでるのだ。彼女の同級生であった杉野(廣末哲万)は平凡な会社員となっていたが、上司の頼みで自分の諦めた道でもあるピアノ教師をすることになった。彼もまた14歳の時に苦い経験があったのだ・・・
傷害事件などが頻繁に起こる映画。傷そのものはたいしたことなくても、被害者も加害者もトラウマとなるかのような事件。彼らの心の中は、教師の高圧的な説教によって自己表現すら禁じられてるかのような精神世界でもあり、深津も杉野も14歳の記憶が欠如してしまってるかのよう。自分たちが教える側に立って、同じことをしているのではないかと気が付くところが絶妙な脚本となっているのです。
『ある朝スウプは』(未見)で高い評価を得た高橋泉が脚本、その出演者でもあった廣末哲万が監督・出演している。それでも低予算の作りに徹していて、手ぶれカメラ、照明もわざとなのか逆光にする場面があったりして、登場人物の心の闇を映し出してる。少年が弾く「亡き王女のためのパヴァーヌ」が全編通して流れ、バレエを禁じられた少女が「くるみ割り人形」を口ずさみながらステップを踏むシーンも印象的。
いわゆる学園モノ作品で、ドキュメンタリーのように日常を描きつつ、心の叫びを感じる映画はなかなか作れないと思う。ただ、バレエ少女につきまとわれるみっちゃんや、ピアノ少年に「気持ち悪い」と拒まれた女の子、それに傷つけあう少年たちの描写が少ないので不完全燃焼でした。そんな中、「憲法よりも校則が上」と主張する香川照之は圧倒的な存在感でした。