大学生の頃にはバイト帰りに焼肉食い放題の店によく行ったものだ。1,500円で焼肉、ご飯、デザートのアイスクリームが食い放題だった。当然のごとく、高級カルビなんてものはなく、白肉メイン、赤肉などは色が悪くなりそうなモノしか置いてなかったのに、それでも食欲旺盛な年代だけに食い溜めするかのように貪ったものでした。さすがに社会人になると、食い放題の店よりは美味いと評判の店に通うようになりましたが、焼肉はやはり一緒に食べる人と仲良くなるための手段となっていたのかもしれません。
映画のストーリーは単純明快であり、予想できる展開と感情移入しにくい漫画チックな俳優の演出でしたが、料理の映像と音の演出が際立っていました。このあたりはチャウ・シンチーなんかが描く香港料理映画とは違い、いかに美味そうに魅せるかということに力を入れていたようです。焼肉料理対決することとなる松田龍平とARATAの二人とも、感情表現よりもコミカルな静止画が冴えていて、そこへ表情豊かな怪優田口トモロヲが絡んでくる。脇役陣の豪華さもさることながら、静かな演技で圧倒的な存在感を見せつけてくれた、これが遺作となった田村高廣が印象に残るのです。エンドロール後の字幕には思わず目頭が熱くなってしまいます。
監督のグ・スーヨンは『偶然にも最悪な少年』に次いで2度目の長編作品となるそうですが、とんでもないストーリーの前作とは打って変わり、今回はストーリーは誰でも思いつきそうな内容を独特な構成にしてしまったというユニークさがありました。山田優のデートの相手とか、ムッシュかまやつの正体とか、倍賞美津子の存在とか、意味不明もしくは不要なシーンを挿入することによって、勝手に想像してくれと丸投げしてるところが面白かった・・・です。無駄といえばランボルギーニも無駄・・・ですか?
松田龍平は苦手な俳優の一人なんですけど、コメディタッチの『恋の門』とかこの作品に関しては全くOK。無表情さの中に真価を発揮するタイプなのかもしれません。無表情といえば、ARATAの助手を務めた矢沢心も凄い!『偶然にも最悪な少年』では死体を演じてましたが、今回は死体並に無表情を装ってました。
そういや焼肉屋なんて久しく行ってない・・・シロなんて好きじゃなかったのですが、ちょっと考えを改めます。カルビ、タン、ユッケ・・・あ、ケンニップもね。
【2007年5月映画館にて】