ブラックブックのレビュー・感想・評価
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【御大、ポール・バーホーベン監督の練りに練った作品構成に魅入られる、エロス&バイオレンスをタップリ含んだ、一見反ナチス映画。矢張り、変態ポール・バーホーベン監督は”極北の人”なのである。】
ー ご存じの通り、ポール・バーホーベン監督は優れた監督であるが、立派な変態である。(物凄く、褒めてます。)
その変態性が作品に齎す影響は、他の追随を許さないのである。
■1944年、ナチス・ドイツ占領下のオランダ。
美しいユダヤ人歌手・ラヘル(カリス・ファン・ハウテン)は家族を殺された復讐のため、名をエリスに変え、レジスタンスのスパイとしてドイツ将校・ムンツェに近付いていく。
しかし、彼の優しさに触れ、次第に心が惹かれていく。
◆感想
・裏切りに次ぐ、裏切りが見事に描かれた作品である。
・レジスタンスの中にも裏切り者はおり、この辺りの構成がポール・バーホーベン監督ならではの、ナチス=悪、レジスタンス=善という類型的な設定を見事に蹴散らしている。
ー ナチスでありながら善なる心を持ち男、ムンツェ将校。一方、レジスタンスの中には・・。ー
■エリスがナチスの手先であるとある人物の企てにより思われ、囚われた挙句収容先で壮大に糞尿を頭からぶっ掛けられるシーンには驚くが、流石変態ポール・バーホーベン監督。
最高っすよ、ポール・バーホーベン監督!。
ホント、スイマセン。けれども、主演女優にあそこまでやるかね。
<二転三転するストーリー展開。誰が裏切り者なのか、疑心暗鬼になるなあ。
そんな優れた構成の中に、ぶち込まれる変態シーンや、エロティックシーン。(今作は、やや抑えめです・・。)
矢張り、ポール・バーホーベン監督は誰も追従出来ない”極北の人”なのである。>
歴史の中のサスペンス
終戦間近、ナチ占領下のオランダ。ナチ親衛隊に家族を惨殺された女性の復讐を描く物語。
放送したCS放送局のレビューでは、「官能」のような言葉があり少し敬遠していたのですが、鑑賞した結果はとてもしっかりとした映画でした。
外れのないナチのユダヤ人迫害を描く映画。その中でもこの映画は、家族を殺した犯人への復讐譚をサスペンス色を交えて描き、私的にはそれが秀逸に感じます。
悪辣なナチス、それに対するレジスタンス。それだけではなく、レジスタンスの中でのユダヤ人に対する侮蔑も、ナチスに協力するオランダ人も、ナチスを見限りレジスタンスと和平を目論むドイツ将校も描くなど、新鮮さも十分。
クライマックスがやや冗長に感じたことで少しマイナスを付けましたが、それでも4は付けられる映画だったと思います。
一難去ってまた一難、そしてまた、また…。
「苦しみに終わりはないの?」
という言葉の通りの展開。
世の中の情勢に翻弄された女性がたどった半生。
よくぞ、生き延びたと言いたいのだが…。
誰が信じられて、誰を信じてはいけないか。
ナチスだから、ナチスの協力者だから、レジスタンスだからとかでは判別できない。
一番損得に目ざといあの人が…。
親身になってくれたあの人が…。
ハンスの言葉、「殺されると脅されれば…」ある一面の真実なんだが、そうくるか。
変わり身の早さは、ある意味、自分を助ける?ある人にはほっとし、ある人には唾を吐きたくなる。その違い。
人としての誠実さは報われる?
大切な人を奪われ、一人残されたやるせなさ…。
”国籍””人種””組織””信条”では図れないそれぞれの想い。
交差する心。
それでも、ほっとできる間柄も。
でも、だからこそ深まる悲嘆、怒り。
命を懸けたサバイバル。
”正義”その言葉を借りた攻撃性の発露。
溜まった鬱憤の捌け口は、常に手出しの出きぬ者へ。
そして、安易に祭り上げる英雄。
簡単に落とされる名声。
そして、地獄は続く…。
ラストの映像に絶句する。
だが、これが史実。
何故?歴史は繰り返す。
それでも生きていく。
その姿に涙する。
事実をベースにした物語。
それを思い返すと、なんと皮肉なメッセージを込めた映画なのかと唸ってしまう。
事実は小説より奇なり。
簡単なハッピーエンドでは終わらない。
そんな世界情勢、人の心の有様を炙り出した作品。
☆ ☆ ☆
この映画の監督は、第二次世界大戦終結時6才だったとか。
この人間模様が、幼い子の眼に映ったものか?
日本の、戦争時子どもだった人々が、終戦を期にすべてがひっくり返ったとおっしゃるが、こんな体験だったのか?
大人になった私たちが、この終戦後の混乱を見れば、整理もつこうが、
まだ大人の示す世界が世界の総てと信じる世代にとっては…。
映画は、目を覆いたくなるような描写もありながら、
(特に、食事しながらの鑑賞はお勧めしない)
乾いた描写でサクサク進む。
一つ一つは胸がえぐられるほどの描写なのだが、
次々に展開していくので、
ヒロイン同様、涙が出てこない。
圧倒的な現実に出会うと感情がマヒするが、そんな感覚?
そんなところが☆マイナス1。
と言って、情緒たっぷりに描かれたら、トラウマ級の映画になり、二度見できなくなりそうだが。
そんな演出の中でも、ヒロインには充分に感情移入できる。演技・覚悟に乾杯。
戦争の混乱が生む犯罪や無秩序
肩がこらないで見れる映画。けど、テーマは面白い。
ナチス・ユダヤ物の定型的パターンかもしれないがテンポの良さと綺麗な起承転結でグイグイ見せる
第一の裏切り者は最初から怪しさフンプンだったが、真の裏切り者がまだいた!!という展開にそう来たかと。
テレビドラマ的雰囲気ながらヌード明け透け、し尿の盛大なぶちまけなどやれることは全部やったという潔さが感じられ、描かれている悲惨な事象とはまた別の奇妙な爽快感が吹き抜けた。
監督と制作陣の胆力の良さを評価したい。もちろん演技者達にも笑
上を書いた後に調べたら監督がポールバーホーベンだったのね。納得
ユダヤ狩りの進むオランダでの裏切りと罠の中で命を燃やす抵抗運動
ネットを覗くと、イスラエル・パレスチナ問題では圧倒的にパレスチナに同情的な人が多い。無理もない。自分たちの土地に勝手に入植して支配地を広げ、壁を作り、パレスチナ人を排斥している報道を知るにつけ「それはないよ」と思わせる面のあることを。しかし、紀元前にパレスチナ・ペリシテ民族が滅亡し、その後のイスラエル王国も滅亡、彼の地は列強の侵攻で支配者の変遷の激しい地域であったことは認識しておかなければならないだろう。そして、先の大戦に乗じてナチスドイツによるホロコーストで600万人以上のユダヤ人虐殺があった。同じ人間とは言えない悲惨な仕打ちを受けたユダヤ人が安住の地を求めたことは否定できない。
戦争という人間の殺し合いを知ったのが、ノモンハン戦争でありホロコーストであったため、幾多の書物や映画を見てきたが、必ずしもイスラエルが悪とは言えず、むしろかわいそうな民族という認識は変わらない。
この映画はユダヤ狩りの進むオランダでの、裏切りと罠の中で、命を燃やす抵抗運動を描いた力作だ。
裏切り者は誰だ
信じれるのは己ただひとり
どこまでいっても地獄
地獄めぐりとチョコレート
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カテゴライズの難しい映画ですね。どこに置いても微妙に座りが悪いというか。。
一見すると戦下もの、スパイ潜入ものですが、ちょっとハミ出る。
あえて言うなら戦争を背景にした復讐ものでしょうか。いちばん近いのは「イングロリアス・バスターズ」かも。
主人公のラヘルは裕福なユダヤ人家庭の生まれとあって物怖じせず聡明だが、人を疑うことを知らない。歌手だったのにユダヤ人というだけで潜伏生活を強いられ、そのために残酷な運命を課せられる。
タイトルの「ブラックブック」は、一応劇中に登場しますが、なんとなく日本語の「黒歴史」的なニュアンスで作品全体を象徴しているような気がします。
ページをめくってもめくっても、地獄のような局面の先にはまた新たな地獄が見えてくる。
オープニングで現在の彼女が登場するので、生きのびることだけはわかりますが、その間どんなものを見てきたのか、それが本編として描かれます。
美人で才媛なので当然モテるわけですが、それすらも戦時下のナチスとの闘いにおいては貴重な資源として活用することを求められる。
前半で棺桶の死体として脱出する場面はちょっと現実感がない気もしますが、おそらくこの作品にとって重要なメタファーなので生かされたのでしょう。
そう考えると、回想の終盤で彼女の隣にいる人物、そして不当な最後を迎えるあの人も、彼女を動かすのと同じ動機を抱えている。
どうあっても、水に沈んだ死者を忘れることはできない。
映画偏差値としてはハイレベルなんだけど、妙に軽いというか重厚感がなく、湿度が低いところが独特だなと思います。
おそらくハリウッドで撮ってもアカデミー賞はとれないんじゃ、という。
劇中で本人もなぜか泣けないんだと言ってましたが。泣いても終わらない、こちら側にいる以上、まだやることがあるんだという内なる声のせいでしょうか。どんなに無念でも死んだら何もできないから、生きてる側の人間が報いなきゃいけない。
とはいうものの、生きてる以上心があるわけで、一切に蓋をして目的遂行マシーンになれるわけじゃない。
ラヘルはもともと感受性豊かな人だし、ナチュラルに人を好きになったりもするし、気丈とはいえ傷めつけられたら苦しむ。つまり抜け道を完全に塞がれた状態で地獄にいるわけです。
すばらしい集中力で演じきった主演の女優さんはじめ、キャストも演出もよかったと思います。
観終わってチョコレートを食べたくなりました。
そういえば、ラヘルが公証人のオフィスを初めて訪ねる場面でウサギのにんじんをつまみ食いするシーン、あれってどういう寓意なんでしょうか…?
かなり見ごたえあり
美しい・・・
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