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1)エルマンノ・オルミ監督
製薬会社の顧問をしている老教授がオーストリア出張の帰り、飛行機が全便欠航となったため列車でローマに帰ることになった。そのチケットを手配した出張先の女性秘書が手際よく、しかも気の利いた計らいで、教授を和ませてくれる。テロ対策の厳重な警備の中、列車内でパソコン入力の仕事をしていた彼は、出発前に魅了された彼女のことが忘れられず、まるで初恋のような想いで彼女にメールを打とうとする。
ほんの数分ではあったが、彼女の優しさに触れた。列車内には乗客の国籍も多種で満員となっていて、狭い通路も軍人たちが無造作に歩き回っているのだ。そんな殺伐とした雰囲気の中でも彼は純粋になってゆく。そして、通路には赤子にミルクを与えようとしている若い婦人。軍人が通りかかったとき、ぶつかってミルクをこぼしてしまうのだった・・・
2)アッバス・キアロスタミ監督
傲慢な態度の将軍未亡人。息子かと思われた男が付き添っていたのだが、彼フィリッポは兵役義務の一環としてお供していただけだった。指定席を買ったわけでもないのに、堂々と席に座る未亡人。やがてその席に座るべき人がやってきても席を譲ろうとしない・・・大阪のおばちゃん以上の存在だ。
3)ケン・ローチ監督
チャンピオンリーグの試合を観るためにスコットランドからやってきたスーパーで働く3人。ベッカムのユニフォームを着た少年と仲良くなり、彼の家族にもサンドイッチをあげたりして仲良くなったのだが、車掌が検札に来ると1人のチケットが見当たらない・・・もしかすると、あの難民家族が怪しいんじゃないかということになり・・・
セルティックFCのユニフォームを着たおとぼけ3人組。ナンパにも失敗し、今夜泊まるところがないという事態に陥ってしまう。しかも無駄遣いしたおかげで、無くしたチケットの罰金を払うことさえできないのである。難民家族の母親から辛い事情を聞いたけど、信用できないと意固地になる青年もいる。ローマに着くまでに解決できるのか・・・
1話と3話がとてもいい。多分、どの登場人物も滅多に列車に乗ることはないと思われる。不安だったり、はしゃいでいたり、出会いを求めていたり。そんな特殊な状況の中で、人間、こうも純粋になれるものなのか。小さな事件ではあるけれど、ちょっとした勇気を与えてくれる温かい物語。しかも撮影が絶妙であり、単純にハンディカメラを回しているだけではないことも窺える。列車の乗客も全員が優れた役者なんじゃないかと思わせるほどで、小さな作品であるが力強い作品でもありました。