父親たちの星条旗

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劇場公開日:

解説

 「許されざる者」「ミリオンダラー・ベイビー」のクリント・イーストウッド監督が、太平洋戦争最大の激戦だったといわれる硫黄島の戦いを日米双方の視点から描く映画史上初の2部作。本作はその第1弾で、アメリカ側の視点による作品。硫黄島の擂鉢山に星条旗を打ち立てた6人の兵士の写真の真実と、戦場から生き残り米本土に帰還した3人のその後の人生を描く。

2006年製作/132分/アメリカ
原題または英題:Flags of Our Fathers
配給:ワーナー・ブラザース映画
劇場公開日:2006年10月28日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第79回 アカデミー賞(2007年)

ノミネート

音響編集賞  
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映画評論

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写真:Splash/AFLO

映画レビュー

4.5【”戦争に英雄なし。されど命懸けで戦った者たちには敬意を。”今作は第二次世界大戦下の硫黄島の激戦中に、摺鉢山山頂に星条旗を掲げた”6人”の男の戦中と戦後の生き様を描いた逸品である。】

2024年12月10日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD、VOD

悲しい

怖い

難しい

■太平洋戦争末期、硫黄島に上陸した米軍は塹壕に潜みゲリラ戦を行う日本軍に苦戦しつつも、圧倒的な戦力で”戦中に”戦意高揚のため擂鉢山の頂上に星条旗を立てる。
 その写真は米国の勝利のシンボルとなり、旗を立てた6人のうち3人ジョン・“ドク”・ブラッドリー(ライアン・フィリップ)、レイニー・ギャグノン(ジェシー・ブラッドフォード)、アイラ・ヘイズ(アダム・ビーチ)、は帰国後に英雄となり、国債を国民に買ってもらうツアーに引き出される。

◆感想<Caution!内容に触れています。>

・冒頭は、帝国陸軍の栗林硫黄島総司令官の指示により、水際作戦ではなく塹壕戦を取った日本軍からの一斉射撃に”全滅したのか?”と呟きつつ上陸し、前進していく米兵たちが次々に銃弾に斃れる姿が映し出される。
 緊迫感が尋常ではない。
 ー アメリカ側の視点で、硫黄島の戦いを描いた今作の軸は、摺鉢山に星条旗を立てた6人のうち、生き残った3人の兵士が、戸惑いつつ”英雄”として国債を国民に買って貰うツアーに引き出される過程で、”戦争には英雄はいない。されど命懸けで戦った者たちには敬意を。”というクリント・イーストウッド監督のメッセージが込められている点であるが、戦争シーンも手抜きなく苛烈に描かれているのである。
  そして、結果的に硫黄島を陥落させた米軍兵士たちの死に様を、敢えて描くことで、強烈な反戦映画にしているのである。-

・旗を立てた6人のうちの3人ジョン・“ドク”・ブラッドリー、レイニー・ギャグノン、アイラ・ヘイズが、米国に戻り国債を国民に買って貰うツアーのシーンが、今作では秀逸である。
 息子が戦死した母親たちが”これは息子よね。”と言いながら3人に抱き着き涙するシーンは”真実”を知っている彼らにとっては辛かったであろうし、逆のパターンも辛かったであろう。
 特にネイティブ・アメリカンのアイラ・ヘイズが、精神的に参って行きアルコールに頼って行く様や、彼の非業の最期のシーンなどは、正に”戦争に英雄なし”という言葉を雄弁に物語っていると思う。

<物語の作りも、衛生兵ジョン・“ドク”・ブラッドリーが、老いてからも、PDSDに悩まされる姿や、彼が息子ジェームズに硫黄島の真実を語る設定とジェームズのモノローグが、この作品に余韻を与えていると思う。
 ラストシーンの、現在の硫黄島の山頂から見下ろした、米軍兵たちが上陸し、星条旗を掲げた後に子供のように波と戯れた海岸を映すショットも見事である。
 そして、改めて思うのは、クリント・イーストウッド監督が、如何に早撮りで有名とは言え、一年間に硫黄島の戦いを米軍側、日本軍側の視点で2本も、それも夫々秀逸なる作品を作り上げた事には、驚嘆するのである。矢張り、現代の世界の映画界の名匠である。>

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NOBU

凄い

2024年11月16日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:その他

知的

今まで見てきた中で全然違う視点の戦争映画だった
これが戦い
恐ろしいことを再確認させてくれた素晴らしい映画

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hotaru

3.5英雄という虚像

2024年3月10日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

作中で財務省の役人が発言していたように、当時のアメリカの財政は、膨大な軍事費の支出によって逼迫していた。硫黄島の戦い以前に国債を発行した際は、全く売れず、紙幣を増刷することになりインフレを招いたというのは知らなかった。第二次世界大戦末期で連合国軍の勝利は目前だったが、もう少しで終戦の条件において日本に譲歩することになりそうだったのは意外だった。

だからこそ、硫黄島で星条旗を掲げる写真にたまたま写った3人の兵士を、政府は英雄に祭り上げた。国債の購入促進のための広告塔にするためだ。政府の切実な事情は理解できる。しかし、芸能人でも無いのに、政府の都合で広告として利用される兵士にとっては虚しい気持ちにしかならない。

インディアンのアイラが人種を理由に入店拒否されたことからも分かるように、大衆は彼ら自身を見ていない。政府によって作られた英雄という虚像を見ているに過ぎない。そして、戦争が終われば過去の英雄として忘れ去られてしまう。そんな虚しさを描いた作品。

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根岸 圭一

3.0 太平洋戦争の激戦地の一つである硫黄島の戦いを日米双方の視点から描...

2024年1月25日
PCから投稿
鑑賞方法:その他

 太平洋戦争の激戦地の一つである硫黄島の戦いを日米双方の視点から描いた2部作(日本視点:硫黄島からの手紙)の戦争映画の一つ。

 こちらは米兵目線で描かれている。『硫黄島からの手紙』と対をなすとのことで、硫黄島の上陸戦そのものにfocusしているのかと思ったが、こちらは1枚の写真(硫黄島の星条旗:硫黄島での戦闘初頭時の2月23日に摺鉢山頂上に星条旗を立てる姿を撮影したもの)を政治利用し、戦地から帰還した兵士を英雄に祭り上げ、戦時国債発行促進政策に協力させる歴史的事実にspotを当てている。

 戦場とパティ―会場がクロス・フラッシュバックする手法を取っており、 『硫黄島からの手紙』で感じたような没入感・臨場感が薄れてしまっていて視聴中に長さを感じてしまった・・・。また丁寧に人物描写してはいるものの、ヒーローに祭り上げられて喜んでいたり、そこにアメリカ先住民の人種問題要素も入れてしまっていたり、登場人物への共感がしにくい構成となってしまっているのも残念。

 ちなみに米兵が戦う理由は『戦友の為に戦い、死ぬ。死んだ者がヒーローで、ヒーローになりたいから戦うのではない。』との解釈で説明がなされている。硫黄島との対でなければ☆2評価。

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