悪い奴ほどよく眠る
劇場公開日:1960年9月15日
解説・あらすじ
黒澤プロ設立第1作として監督が選んだテーマは、当時社会問題となっていた政治汚職。汚職事件の隠蔽工作により自殺に追い込まれた男の息子による復讐劇を通して、政界に根深くはびこる腐敗の構造にメスを入れた意欲作。極めて社会性の強いテーマでありながら、スリルとサスペンスを盛り込むことで十二分に娯楽映画として通用する作品。
1960年製作/151分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1960年9月15日
劇場公開日:1960年9月15日
黒澤プロ設立第1作として監督が選んだテーマは、当時社会問題となっていた政治汚職。汚職事件の隠蔽工作により自殺に追い込まれた男の息子による復讐劇を通して、政界に根深くはびこる腐敗の構造にメスを入れた意欲作。極めて社会性の強いテーマでありながら、スリルとサスペンスを盛り込むことで十二分に娯楽映画として通用する作品。
1960年製作/151分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1960年9月15日
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2012年8月8日村上弘明、黒澤作品リメイク主演「願い叶った」
2010年2月19日世界的に有名な黒澤明監督!とは言っても、自分の中では圧倒的に時代劇の監督というイメージが強い。勿論、色々な作品があるんだけど、普段自分が見るジャンルのものではないため、今まで眼にする機会がなかった。
最近BSで黒澤明監督の作品を続けて放送しているのを見かけて、先日「生きる」を録画して初めて見たんだけど、これがメチャ面白かった。
そんなわけで、本作品も何の情報もなく見てみる事にした。
いきなり、結婚式のシーンから始まる。あぁ、昔の結婚式ってこんな感じだったな〜と懐かしみながら見てたんだけど、何やら不穏な雰囲気が漂っていく。警察に連行される人も現れ、一気に引き込まれた。
新郎が三船敏郎さんだった。荒々しい侍のイメージしかなかったので、七三分けのスーツ姿は違和感でしかなかったが、これがなかなか野性味あふれているビジネスマンで馴染んできたから、ホンっと魅力的な役者さんです。
汚職事件に絡む復讐劇という感じで、早々に三船敏郎さんが正体を表し、なかなか見応えのある展開で楽しませてもらいました。
【ネタバレ】
ドキドキワクワク、巨悪に挑む三船さんがホンっと良かった。リベンジの為に悪に徹しようとするが、それができない。接触のために利用した娘を蔑ろにできない優しさが切ない。
時折、流れる軽快な音楽が、ドス黒い復讐計画を緩和してくれるようにも感じた。
ただ・・・
ラストがいただけない。九分九厘、確実視していたリベンジが最後の土壇場で崩れてしまった。
そのシーンは、説明と言う形で言葉で示されたため、最後の最後までわずかな期待を持っていたんたけど・・・
あっさりと″終″の文字が画面に映し出された。
えっ、このまま終わっちゃうの!何とも後味の悪い最後だった。
確かに、子供に見離された親は惨め以外の何ものでもなかったが、結局汚職事件も真の黒幕も明かされないまま。
如何にもな昭和的映像、そして昭和的な展開、結末って感じ。スッゴイ面白かったから、余計にこの終わり方で打ちのめされてしまった。
日本未利用土地開発公団副総裁である岩渕(森雅之)、公団管理部長の守山(志村喬)、
公団契約課長の白井(西村晃)の3人は、部下を巻き込んで巨額の公金を横領しています。そのやり口は実際の工事費用より随分高い金額で落札し、その差額を懐に入れるというもの。5年前には前課長補佐だった古谷が自殺しています。
映画は結婚披露宴で始まります。新郎は岩淵の個人秘書である西幸一(三船敏郎)、新婦は岩淵の娘、岩淵佳子(香川京子)。
この西という男は、実は自殺した古谷の婚外子であり、身元を偽って岩淵の懐に潜り込んでおり、いよいよその娘との結婚に漕ぎ着けました。彼の目的は岩淵の悪事を世間に公表し罪を償わせること。そして自殺した父の無念を晴らすこと。高級官僚の汚職事件を扱った社会派サスペンス映画です。この巨額汚職事件に対し検察とマスコミの追及の手が伸び、現在の課長補佐和田(藤原釜足)は厳しい取り調べの後、自殺を図ります。
配給収入は前作の「隠し砦の三悪人」3億4千万、次作の「用心棒」3億5千万に比べ本作は5千万と、製作費も回収できないほどの不入りでした。その原因をいくつか考えて見ました。
①冒頭の披露宴のシーンの不自然さ
格式の高いホテルで盛大な披露宴が開催されますが、なぜかマスコミの取材陣に公開されています。式場外のソファに陣取ったマスコミの男たちのおしゃべりで映画の観客に状況や設定を説明します。映画上必要なのは分かりますが、普通は主催者の許可なく披露宴をマスコミに公開したりしませんので、極めて不自然です。
②西幸一(三船敏郎)と岩淵佳子(香川京子)の関係性
いくら自分の素性を隠すためとはいえ、宿敵の娘と結婚する必要があるでしょうか。いやない。娘と結婚しても復讐の足しになるどころか、見事に足を引っ張られます。娘との結婚を承諾した西の真意は謎です。しかも佳子のことを「本気で愛している」とか言い出して、復讐心が揺らいでしまいます。黒澤監督のラブシーンは取ってつけたみたいで、なんとも不自然。感傷的なシーンはカットしてもっとハードボイルドにしたほうがよっぽどよかったのでは。佳子という女性は事故で足が不自由。頭も悪く、いいのは性格だけ。なんとも無力な女性です。足が不自由なら頭は切れるとかにしないと、ただの可哀想なだけキャラになっちゃいます。
③岩淵佳子(香川京子)と兄、岩淵辰夫(三橋達也)の関係性
兄の辰夫は、自分のせいで妹の足に障害が残ってしまった罪悪感を抱えています。妹を幸せにするために披露宴で新郎に「殺すぞ」と脅しをかけたり猟銃をぶっ放したり、頑張る方向性を間違えています。兄の不健全な過干渉は妹の精神的成長を妨げているようです。兄は兄で定職にもつかずに父の汚い金でリッチな生活を満喫中。なんとも変な兄妹です。父が倒れたらこの二人も共倒れしかねません。
④西幸一(三船敏郎)と盟友、板倉(加藤武)の関係性
西と板倉は厳しい戦後を協力して生き抜いてきた盟友です。盟友が行き過ぎて、二人は戸籍を交換しています。岩淵の秘書として潜り込むために身元を偽るためですが、いくら友達とはいえ、そこまでするでしょうか。西の復讐を手伝うために板倉は献身的に働きますが、彼の動機はなんなのか。「友情」「正義感」だけで人はあんなに一生懸命になれるものなのか。あと、この二人はスーツにコート姿とダンディなのですが、ハットがないのでちょっと締まらない。ファッションもアメリカのハードボイルド映画には敵いません。
④西幸一(三船敏郎)と宿敵、岩渕副総裁(森雅之)の関係性
岩渕はおそらく元は高級官僚で、天下りで日本未利用土地開発公団副総裁に収まったものと思います。政治家ではありません。そんな彼は個人秘書を雇い、邪魔者は殺し屋に始末させます。公団の副総裁ってそんな絶大な力を持っていたのですね。現代の感覚では不自然に感じますが、当時は説得力があったのでしょう。でも、コネもない、どこの馬の骨ともわからない男を秘書にしたり、娘の婿にしたりするのでしょうか。普通は自分と同じような高級官僚とお見合いさせるんじゃないでしょうか。
⑤課長補佐和田(藤原釜足)の自殺方法の選択
火山に飛び込んで自殺しようとします。問題は死体が出てこないこと。その場合「失踪宣言」「認定死亡」などの手続きが行われますがいずれも相当の時間を要します。しかも生命保険もなかなか受け取れませんので、役人だった和田がこんな死に方を選ぶはずありません。本作では遺体がないまますぐに葬式が行われていますが不自然であり、西の仲間にするためにこじつけた無理な設定です。
本作はいい奴か悪い奴しか出てこない、白黒はっきり勧善懲悪物語です。懲悪には失敗しますが。西が自分も悪に染まっていったりしたらもっと面白かったかも。
出てくるキャラクターはみんなリアリティを欠いています。演出はわざとらしさ満載、三船敏郎の台詞回しは棒。これじゃ客は入らないでしょう。
結末がバッドエンドになる事は予想できていた。分かっていても、西が殺されたことを知った板倉の慟哭はとても響いた。感化され私自身もはらわたが煮えくり返る思いがした。
最後、子供たちから縁を切ると言われた岩渕。彼等を追うことよりも黒幕からの電話に出ることを選ぶ。電話を切る頃にはもう子供達の事は頭から消えている。彼は一体何の為に生きているのだろうか、何が楽しくてこんな事をしているのか。こんな空虚な生活を守るために失われるものの大きさ、何とも救いがない。