夜と霧

劇場公開日:1961年10月

解説・あらすじ

アウシュビッツ強制収容所をめぐるレネ監督のドキュメント傑作。忘却され荒廃した現在のアウシュビッツのカラー映像と、戦争を再現するモノクロ映像を対比させて戦争を糾弾、その美しく厳しい映像と詩的なナレーションが胸に迫る1作。

1955年製作/32分/フランス
原題または英題:NUIT ET BROUILLARD
配給:フランス映画社,日本ヘラルド映画
劇場公開日:1961年10月

スタッフ・キャスト

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映画レビュー

5.0 正視に堪えないが、見なければならない私たち人間が行なった業 ゴウについて

2025年12月27日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD、VOD

【死の臭い】

父が「夜と霧」を書棚に持っていた。

みすず書房。
古い本なので、箱も装丁も黄ばんでいたが、ベージュの硬いブックケースから取り出すと、少し破れた薄いハトロン紙に包まれた本体が現れる。

子供時代の僕は、父の蔵書を見るともなく見、読むともなく読み、ヴィクトール・フランクルのその文体と白黒の写真に触れていた。

ハトロン紙を傷めないようにそっと手に取る。この本のカビと埃のにおいは、死の臭いがして、
禁断の書への怖れと死臭が一体になり、僕を青くさせた。

そんな本を書斎に並べている両親だから、僕は子供時代から幾度も家族そろって「アウシュヴィッツ展」に=新聞社のホールに出掛けていたし、黒い暗幕を張った、呼吸イキも詰まる上映会場で「そのフイルム」もたびたび見てきた。
うちには生々しい、分厚い「写真集」もあった。メンゲレの生体実験など。

怖くて苦手なのだ。
あの頃いきなり、予告もなくスクリーンを見せられたから。その時々、目を閉じる間もなく、耳をふさぐにも間に合わず、眼前に突きつけられて見てきたのだけれど。

・・

【かの地との再会】

この同好サイトは「新しい映画」や「新しい人との出会い」をいつも僕にもたらせてくれる。自分好みのチョイスだけでは到底発見できなかったであろう「人」や「作品」に出会える場だ。

ひとりのフォロアーさんが現地、つまりポーランドのアウシュヴィッツ・ビルケナウ (独語読み)まで、実際にその足で旅して行ってきたのだと知り、僕は非常に驚いたのです。
知り合いであの地を訪ねた人とは初めて会ったので。

それで目標を立てたのです。
「1月27日」がアウシュヴィッツ解放80周年であるゆえ、僕の2025年の年頭の目標は「この80周年の年に『夜と霧』をもう一度観る」こと。

・・だったのだが、しかし
どうしても怖くて手を出せずに、延び延びであり、ついにこんな年末に至ってしまった始末です。

レンタルDVDを借りた。
YouTubeにも、34分。そのままでアップされています。

・・

【映像証拠】

記録好きなドイツ人気質は、ホロコーストについても詳細な文書とフイルムを残し、その膨大な記録はあまりの量の多さから、連合軍の到達前に焼却と隠滅が間に合わなかったほどだ。

「映画」を見れば分かる。人間の所業が。

フランクルは3個所の収容所から生還し、メモと記憶を元に、生還直後に=1946年に「夜と霧」を出版している。
そしてあの著書の中で「状況を超えてなお人間の生命の支えである『希望の力』について」レポートしている。いわく

=「クリスマスに我々は解放されるらしい」との噂が収容所内で流れて、
=しかしクリスマスが過ぎると、それまで保っていた囚人たちがバタバタと、潰ツイえて死んだのだそうだ。

嗚呼、ユダヤ教徒はクリスマスを祝わない人々なのだけれど。なんということだ。

彼の著作は、精神科医であり心理学者であったフランクルの、言語を絶する極限状況下での、静かなる観察日記だった。

・・・・・・

【記録映画の今後について】

NHKには「映像の20世紀」という優れたアーカイブ・ドキュメンタリー番組があった。
その映像は地理的にも時間的にも自分たちとは離れた場所で、しかし確かに起こった世界史の諸事件を、記録映画で見せてくれるものであった。
映像には言葉を凌駕する力があったのだ。

けれど今や「AIの偽物映像」が全世界で跋扈している。YouTube やTikTok の動画コンテンツは、 その映像の信用度を完膚なきまでに、徹底的に破戒し、侵している。
感動も、驚きも、善行や悪行や、そして家族の愛や 涙さえも、 すべてが悪ふざけと視聴数稼ぎの《作りものの嘘映像》に溢れている。

もう誰もがハナから映像を信じない時代に突入してしまったのだ。

見れば分かるはずだった「夜と霧」の震撼も、解放80年にして、その使命が失笑と共に潰ツイえていくのだろうか。

・・

【クリスマスの晩に鑑賞】

フランクルは述べたのだが、希望が絶望を超えるとはどうしても信じられない。
神がもしこの世にいるならば、
我々が根底から造り変えられて救済されるのでなければ、時効など許されずに、あるいはいっそのこと滅びてしまったほうが良い。そんな
「人間の業」がここには映っている。

抑えたナレーションは「人類を侵す記憶の風化」についても厳しく迫っていた。
アウシュヴィッツ解放からたかだか10年後の、青々とした緑の野を映しながらである。

今や「映像の死」も起こっている。

「ネタニヤフ調書」、「手に魂を込め、歩いてみれば」、そして本作を続けて観た。
いろいろと考えながら年末を過ごしている。

·

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きりん

3.5 「過去」ではない

2025年10月4日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

2023年10月に始まったイスラエルのガザ侵攻から2年になります。改めて中東問題に関する本を読んでたら、時々耳にする「ホロコースト・サバイバーのための建国」という言説が、実は建国後10年以上も経ってから考えられた後付けの理由だったとあって、衝撃を受けました。今回の侵攻も周到に準備され、巧妙に仕掛けられていて、各国の利害も絡み合っているために、なかなか解決の糸口が掴めないようです。イスラエル建国の経緯はとても複雑ですが、やはりホロコーストと無関係ではないと思い、本作を観ました。他の動物では絶対にしないような人間の残虐性を見せつけられて、何ともいえぬ虚無感を感じます。80年くらい前にこんな酷いことがありましたという、過去の話で済まされない現実に胸が痛みます。

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赤ヒゲ

4.0 タイトルなし(ネタバレ)

2024年7月12日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
ネタバレ! クリックして本文を読む
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りゃんひさ

未評価 カポが、親衛隊が、密告者が、 あなたの隣にもいるかもしれない。 全...

2023年11月6日
スマートフォンから投稿

カポが、親衛隊が、密告者が、
あなたの隣にもいるかもしれない。

全てをなくなったことにしない
製作者の志に胸打たれた。

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JYARI