マルタの鷹

ALLTIME BEST

解説・あらすじ

 私立探偵サム・スペードはワンダリーという女性から仕事を依頼される。サムの相棒アーチャーがそれを引き受けるが、その後、彼は何者かによって殺害されてしまう。犯人を追うサムの前に現れる怪しい男たち。やがてサムは莫大な価値を秘めた彫像“マルタの鷹”の争奪戦に巻き込まれていく。ハードボイルド探偵小説の映画化であり、ジョン・ヒューストンの初監督作品。ボギーことハンフリー・ボガートの当たり役にもなった傑作ミステリー。

1941年製作/101分/アメリカ
原題または英題:The Maltese Falcon

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映画レビュー

4.0 鷹の正体

2025年9月5日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

『マルタの鷹』は、ハードボイルド探偵小説を原作としたジョン・ヒューストンの監督デビュー作であり、フィルム・ノワール初期を代表する作品です。物語は複雑な会話劇を通じて展開され、観客は探偵サム・スペード(ハンフリー・ボガート)の行動や言葉から真実を探り続けることになります。

映像面では、冒頭の編集のつながりの滑らかさが特に印象的で、当時としては力の入った挑戦が感じられます。ただし全体としてはセリフ依存が強く、映像で語るよりも「言葉で説明する」比重が大きいため、小説やラジオドラマ的な側面が前に出ています。そのため字幕で鑑賞すると「読む作業」に追われてしまい、映像的な厚みを十分に味わいにくいのが残念に思いました。

テーマ面では、サム・スペードという男の倫理観が試される物語として読むことができます。彼は相棒の妻と不倫していた過去があり、依頼人の女性に心を動かされながらも、最終的には彼女を警察に突き出し、賄賂も拒絶します。愛も金も友情も捨てて、「信義」を貫く選択をするわけです。しかしそれは単純な勧善懲悪ではなく、主人公自身がグレーな存在であることを観客に突きつけるものです。

そして何より象徴的なのは、みなが命をかけて奪い合ったマルタ像が「偽物」だったことです。この像は人間の欲望、特にお金や富への執着のメタファーとして機能しており、最後の「夢が詰まっていたのさ」という台詞は、欲望に翻弄された人間たちの虚しさを凝縮しています。

総じて本作は、映像的にはまだ発展途上の部分が見えるものの、ボガートの存在感と「愛より信義」を選ぶラストによって、フィルム・ノワールの原点らしい苦みを残す作品だったと感じました。

鑑賞方法: U-NEXT (HD画質)

評価: 84点

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neonrg

4.5 ノワールの最高傑作だ。

2024年12月28日
PCから投稿

相棒を殺された私立探偵が、莫大な価値を持つ彫像「マルタの鷹」の争奪戦に巻き込まれるミステリー。当たり役となったハンフリー・ボガートも見事だし、俳優陣がどれも魅力的で印象深い。

フィルム・ノワールの古典的名作だけあって、インパクトの強い主人公、謎めいた美女、いかがわしい男たち、ハードでドライな雰囲気と、後世に多大な影響を与えた要素を盛り込んでいる。

タイトで引き締まった演出の中に、安易なアクションに頼らず、大量のセリフに基づく会話劇の色合いもある。登場人物たちの丁々発止のやりとりを通じて、最後まで観客を引き込む力を持った、最上級のサスペンスだ。

約100分という上映時間の中に、次々に起こる出来事を劇的に見せることで、全く飽きることが無い。ミステリアスなストーリーを、魅力的なキャストと優れた演出で描き切った、ノワールの最高傑作だ。

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岡崎仁

5.0 読んでから観ましょう

2024年1月21日
PCから投稿

原作も映画も不朽の名作です。
圧倒的なテンポでグイグイ引張るような演出が際立っています。
ボガート先輩のハマりぶりも圧倒的で、原作のヒリヒリする雰囲気を完璧に再現しています。

但し、原作があまりにも有名すぎるので、読んでいることを前提に作られています。
そもそもハードボイルド小説自体が客観描写に絞った文体が特色なので「なんでそれが分かったの?」「この人なんでここにいるの?」的な背景や心理状態の説明はしてくれません。

ヒューストン先生も原作のこの独特な文体を再現するような演出をとったそうなので、原作を読んでいてさえ集中して観ないと置いてけぼりになります。

参考 ハメット先生はそれまでの探偵小説の概念を根こそぎひっくり返して、ハードボイルドという分野を生み出した作家として探偵小説史上に燦然と輝く巨星です。
ちょうど清張先生がそれまでの探偵小説の概念を破って社会派推理小説を確立したのと相似形と言えます。
両者ともにそれまでの作り物の小説をリアリズムに引きずり出した点で共通します。

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越後屋

0.5 ボガードさんのセリフは流暢なヤンキー英語。 喋り過ぎ。

2023年7月9日
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マサシ