ティム・バートン最初期の作品。
30分の短編作品なのに、ティム・バートン・テイストの作品として完成していることに驚かされる。
安っぽいところやチャチなところは一切ない。演出も映像も俳優もA級の作品と言える。
Wikipediaによると本作の製作費は100万ドルだそうである。
当時のレートで日本円にして2億3750万円ちょっと。
当時25歳でまだ一介のアニメーターに過ぎなかったティム・バートンにこれだけの製作費を与えて30分の短編映画を作らせた会社側の決断力にも驚かされる。
結果的にこの決断は大英断だった。
若き鬼才ティム・バートンはその才能を遺憾なく発揮して、ジェームズ・ホエールが1931年に撮った『フランケンシュタイン』へのオマージュに満ちた傑作を作り上げた。
ただ、この作品は『フランケンシュタイン』とは決定的に異なる部分がある。
『フランケンシュタイン』のテーマが「新たな生命の創造」であるのに対して、本作のテーマは「死者の復活」なのである。
これ、似ているようで全然違う。
死にかけているというならともかく、完全に死んでしまったものを再び蘇らせるというのは、生命の創造以上に禁断の行為という気がする。
そのせいで、なんとなく本作に複雑な感情を抱く観客も多いのではないだろうか。
自分もかつてコロという雑種の黒犬を飼っていた。
コロは13歳で老衰で死んでしまったのだけれど、自分と同じように飼っていた犬との別れを経験したことのある人は涙腺を刺激されてしまうこと必至の作品である。
自分も観ていて何度かウルっとしてしまった。
でも、やっぱり死んでしまったものは無理に蘇らせたりしないでそっとしておいた方がいいと思う。
それが一般人の感性であり、そういう意味ではこんな作品を作るティム・バートンの感性はいびつでありどうかしているのである。
そして、この一般人とかけ離れたいびつな感性こそがティム・バートンの作品を唯一無二の怪作たらしめているのである。
ティム・バートンにはやはり天才よりも鬼才という称号の方が相応しい。
本作はティム・バートンが25歳の新人監督という段階で既に鬼才としてほとんど完成していることを証明してみせた驚異の一本である。
本作単体でも充分楽しめるけれど、ジェームズ・ホエールの『フランケンシュタイン』と『フランケンシュタインの花嫁』を観ていると何倍も楽しめる。
自分もこの二作を観たあとで改めて本作を観直したら「あ、この場面そっくりじゃん!」と何度もニヤニヤしてしまい、前に観たときより評価が上がってしまった(笑)。