野良犬

ALLTIME BEST

劇場公開日:

解説・あらすじ

巨匠・黒澤明監督が初めて本格的な犯罪サスペンスに挑んだ意欲作。暑い夏の日の午後。若い刑事村上は射撃練習を終え、満員のバスに乗り込み帰路につく。しかし、車内でコルト銃を盗まれたことに気づき、慌てて犯人らしき男を追うが結局路地裏で見失う。コルトには実弾が7発。村上の必死の捜索もむなしく、やがてそのコルトを使った強盗事件が起きてしまう。窮地に追い込まれた村上は老練な刑事佐藤の助けを借り、コルトの行方を追うのだった……。真夏の都会を覆う息苦しいほどの灼熱の空気が緊迫感を生み出し、切れ味鋭い演出が目を見張る。

1949年製作/122分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1949年10月17日

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映画レビュー

4.5刑事と犯人、二人を分けたのはなんだったのか?

2025年5月24日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

物語の発端は、若き刑事(演:三船敏郎)がバスの中で拳銃をすられるところから始まる。その拳銃は殺人事件に使われ、刑事の内面には激しい自責の念と焦燥が渦巻く。相棒となるのはベテラン刑事(演:志村喬)。冷静で穏やかな彼との対比によって、未熟な若者の情熱と、年長者の経験が火花を散らす構造となっている。

若くて情熱的な三船敏郎と、老練で経験豊富な志村喬。彼らの関係には、戦前と戦後の価値観の違いが象徴されている。志村のキャラクターは「悪い奴は悪い」と断言する絶対主義的な立場に立ち、一方で三船は、「人間は環境によって変わる」と考える相対主義の立場。世代間の思想の断絶と、そこに流れる痛みのようなものが随所に表れている。

犯人と刑事の対決のラストシーンは、汚れた泥の中で繰り広げられる生身の肉弾戦。前作の『静かなる決闘』では主人公の内面の葛藤が描かれていたが、本作では対立する二人の外面的な戦いとして描かれている。彼らは鏡のように似ている。ほんの少しの違いで、こちらがあちらになり得る。その恐ろしさと不安が、観る者の胸に迫ってくる。

全編に汗と埃が匂い立つような生々しさがあり、若き三船の感情の爆発と、志村の熟練の落ち着きの対比が実に鮮やかだ。三船の「らしさ」が芽吹いた作品でもある。そしてこの作品は、後の『天国と地獄』にも通じる、犯人と刑事という対立構造を越えた人間ドラマの原点でもある。

『野良犬』は、斬新なカメラワーク、動きのある絵、人物の重ね合わせなど魅せる黒澤明が始まった初期代表作だ!

4K UHD Blu-rayで鑑賞
92点

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neonrg

4.0【”アプレゲール犯罪。世の中に悪はない、悪いのは環境だ。”今作は戦後混乱期の日本で拳銃を掏られた刑事がベテラン刑事と共に、その拳銃を使い犯罪を起こす犯人を追ういぶし銀の如きサスペンスなのである。】

2025年5月14日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

怖い

知的

ネタバレ! クリックして本文を読む
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NOBU

3.5佐藤(志村喬)が登場してからの安心感は流石

2025年4月15日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 村上(三船敏郎)は まるで兵隊のようで戦中の暗喩。対する まわりのルーズな雰囲気は戦後の平和の象徴でしょう。

 後楽園球場でのベースボールは男の戦いを描いていて戦中の暗喩。対するアイスキャンディーや ハルミ(淡路恵子)たちのユニークなダンスは戦後の平和の象徴でしょう。

 クライマックスの村上と あいつの勝負は戦中の暗喩。対する女性のピアノは戦後の平和の象徴でしょう。

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Don-chan

3.0若々しい三船敏郎

2025年3月22日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

三船敏郎扮する村上新任刑事は満員バスの中でピストルを盗まれたので処分待ちとなった。

ちょっと情けない所からのスタートだったね。盗まれたコルトが殺人事件を起こしてしまっては立つ瀬がないね。とはいえ野球場で犯人を呼び出すなんてちょっとね。まあ若々しい三船敏郎が精悍そうだったからまあいいか。

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重