天国と地獄

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劇場公開日:

解説

エド・マクベインの原作を得て、黒澤明監督が映画化した全編息づまるサスペンス。製靴会社の専務権藤の息子と間違えられて、運転手の息子が誘拐された。要求された身代金は三千万円。苦悩の末、権藤は運転手のために全財産を投げ出して三千万円を犯人に受け渡し、無事子供を救出する。非凡な知能犯の真の目的とは。鉄橋を利用した現金受け渡しのシーンは秀逸で、実際にこれを模倣した誘拐事件が発生した。また白黒作品であるにもかかわらず、最も重要なシーンで一個所のみ着色を施すなど新たな演出も印象深い。

1963年製作/143分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1963年3月1日

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映画レビュー

4.5【”丘の上の瀟洒な二階建ての家に住んでいる男を見て、丘下の貧しきアパートに住んでいた男が思いついた凶事。”誘拐犯を追い詰める捜査陣の執念の姿を描いた社会派サスペンス映画の逸品。】

2024年8月23日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

怖い

知的

難しい

 ・戦後の混乱期の昭和を舞台にした作品であり、今作がきっかけで誘拐罪の量刑が改正された事は、学生時代の授業で知ったものである。

 ・何とも退廃的な、後半のヘロイン中毒者がたむろするヘロイン窟の重いシーンの数々や、ラスト、捕まり死刑宣告を受けた犯人を演じた若き山崎努氏の貧しさ故の鬱屈が爆発した狂的な演技と彼の強がりを憐れみの眼で見るナショナル・シューズの元重役・権藤金吾とが刑務所の金網を隔て対峙するシーンも凄い。

・更に言えば、二人の未来を暗示するような”ガシャーン!”と二人の間に降りるシャッターの金属音は重い余韻を残す作品である。

<今作を真似て、多数の誘拐事件が発生したそうであるが、この作品を観ていると”俺も出来るのかもしれない・・。”という狂的な思いを誘発するが如き、重厚な作品である。
 恐ろしい作品であるが、そういう意味では敗戦の雰囲気を色濃く漂わせるこの社会派作品は、矢張りサスペンス映画の逸品であるのだろう。>

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NOBU

4.0日本のサスペンス映画の傑作

2024年4月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

興奮

知的

日本映画発祥の地・京都のほぼ中心辺りにある京都文化博物館は、京都にまつわる映画フィルム原版を約800本所蔵し、テーマ企画に沿って館内のフィルムシアター(170席)で毎日上映しています。
先月、“アウトローなヒーローたち・現代劇篇”というテーマ企画で上映された、日本映画史に残る本作を観賞しました。

言わずもがなの、日本三大巨匠の一人にして世界的名匠・黒澤明監督のサスペンス映画の傑作です。2時間23分の長編であり、多種多様な登場人物が出てくるにも関わらず、巻頭からラストまで全く息を抜く間もなく一気に観終えてしまいました。
誘拐事件発生と身代金授受という、三船敏郎扮する製靴会社専務・権藤視点の一人称で進められる前半は、室内劇で恰も舞台劇のようであり、事件がひと段落した後の犯人を追及していく後半は、謎解きミステリードラマに一変し、主体が警察官たちに移行しひたすら地道に現場を辿っていきます。ここでは捜査責任者・戸倉警部を演じる仲代達矢の沈着冷静にして鋭い慧眼ぶりが、圧倒的存在感でドラマをリードしていきます。前半の主役だった権藤は気力体力を使い果たしたことにより存在感が希薄になり、もはや脇役で終始します。
この前半後半の切り替え、ドラマの焦点の移行、サスペンス性の切り口の変換は見事です。

前半は、登場人物たちの欲望と憎悪、怒りと悲しみが諸に曝け出され、裏切りと出し抜きが露見していき、舞台が権藤邸内に限定されていたこともあって、常に緊張感が漂い不安感を煽られていました。最近のように極端な寄せアップは殆どなく、ほぼミドルレンジでフィックスかスローな移動カットで、時に長回しも用いられ、観客は落ち着いて観られるので、却ってスパイラルに不安が増幅されながら先行きへの興味関心が募っていきます。
後半に、この興味関心が謎解きミステリーの渦中に放り込まれ、作者に弄ばれます。戸倉警部の切れ味鋭い捜査追及は、ぐいぐい観客を惹きつけ興味関心をどんどん掻き立てていきます。
実はこの時点で観客には、山崎努扮する犯人の正体を仄めかしているのですが、そこに辿り着き追い詰めていくプロセスの快刀乱麻の痛快さに、観客は益々酔わされていくのです。
犯人の暮らしぶりに映像が移ると、途端に彼の寄せアップの長回しが増え、この人物の閉塞感と虚無感、聡明さと暗さを顕著に漂わせます。既に観客を、犯人の動機の解明への関心に導いているのです。

個性的な名優たちが、刑事や新聞記者、街中の一般人という端役で短い時間のみで、次々と登場しますが、彼ら彼女たちが強く印象に残る演技を披露していくことで、本作にドラマの重みと厚みを備えさせてくれました。その結果、息苦しいまでの緊迫感と重苦しい空気感を、最初から最後まで観客に与え続けたのだと思います。

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keithKH

5.0天国と地獄がまさに黒沢天皇の手の中!

2024年1月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

興奮

知的

確か一度ノーカットで衛星放送で観てるのですが
覚えていなかったシーンがたくさんあって
やはり映画館で見ると集中力が違うよなあ〜と改めて感じました。

前半舞台劇の様な犯人のとのやりとりシーンでは
何よりも三船敏郎の圧倒的な存在感!
他人の命と我が身の成功を秤にかけて苦悩するところは
室内のシーンが続くのにまったく飽きずグイグイ引っ張って行かれる。
で、後半は仲代達矢のスマートで淡々としながらも
結構えぐい捜査手法を選ぶ警部と地道な刑事たちの捜査のシーンが
徐々に犯人に迫って行く姿もハラハラして目が離せない。

で、同じ様な警察捜査物の名作「砂の器」の犯人の動機に
ぼろ泣きした身としては、
どんな動機なのか?とドキドキしたのだけど〜〜

これは、一種の不条理映画なのかな〜〜

でも、自身の成功より命の重みを選んだ権藤さん(三船敏郎)と
自身の満足のために命を軽んじた犯人との対比は
やっぱり心にグッとくるし、
時代が変わっても普遍的なものに落ち着いたことが
やはりこの映画を名作にしてるんだろうな〜〜。

撮影過程でよく言われる、
身代金の受け渡しの鉄橋のそばの家の
二階が邪魔だからと、二階を外して撮影したとか
まあ、天皇と言われた頃の
黒沢パワーが映画全面に溢れかえってます。

とにかく面白い!!見ものです!!

あと、余談ですが冒頭の靴の話〜。
あんな簡単に手で引っ張って壊れる様な靴、
絶対売って欲しく無いわ。(by靴屋)

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星のナターシャnova

5.0後世に誘拐事件模倣が実際に行われた恐るべき映画 魅力が列車と現金を...

2023年12月9日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

寝られる

後世に誘拐事件模倣が実際に行われた恐るべき映画
魅力が列車と現金を渡すシーン、推理のシーン、尾行のシーンと見どころ満載
最後に犯人の山崎努が三船相手に震えながら告白するところ良かった
三船の背中で終。犯人が存在があやふやになって三船のことが羨ましくて悔やんでる自覚してるかどうかわからないが全身のすごい震えからよく伝わってきた

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チャン・パー