天空の城ラピュタ

ALLTIME BEST

劇場公開日:1986年8月2日

解説・あらすじ

「風の谷のナウシカ」の宮崎駿監督が原作・脚本も手がけた、スタジオジブリの長編劇場アニメ。ジョナサン・スウィフトの「ガリヴァー旅行記」に登場する天空の島「ラピュタ」を題材に、少年と少女の出会いと冒険を描いた傑作ファンタジーアドベンチャー。

鉱山町で見習い機械工として働く少年パズーは、空に浮かぶという伝説の島ラピュタに行くことを夢見ている。そんな彼はある日、空から降ってきた不思議な少女シータと出会う。2人は、シータの身に着けていた不思議な「飛行石」をめぐり、非情なムスカ大佐が率いる特務部隊や軍隊、女親分ドーラと空賊一家たちが繰り広げる戦いに巻き込まれていき、空の上にあるラピュタを目指すことになる。

「風の谷のナウシカ」(トップクラフト制作)の成功を受けて1985年に設立されたスタジオジブリが制作。プロデューサーは宮崎監督の盟友・高畑勲が務めた。音楽も「風の谷のナウシカ」に続いて久石譲が担当。声優はパズー役に田中真弓、シータ役に横沢啓子、ドーラ役に俳優で洋画の吹き替えなども担当した初井言榮、敵役のムスカも洋画の吹き替えなどでも活躍した俳優の寺田農が務めた。

1986年製作/124分/日本
配給:東映
劇場公開日:1986年8月2日

スタッフ・声優・キャスト

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映画レビュー

5.0 二人の幸せを祈らずにはいられない。

2024年11月26日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD、TV地上波

 このサイトでもトップランクの高評価を誇る作品。宮崎駿監督の作品として、名作となることが宿命であったと聞きます。私の中でもジブリ作品の最高傑作といえば、ラピュタに他なりません。何度、繰り返し見たか判らない。
 この作品の魅力とは何だろう。宮崎駿監督が宿命を果たすべき方程式は何だったのだろう。それを考えれば結論は一つ。聖書にある「失楽園」への回帰ではないかと思うのです。
 天空=天国、天界。城の中心、「でっかい飛行石」を守る巨大な木といえば、「エヴァ」でもあげられた「セフィロス・ツリー」。「ソドムとゴモラを滅ぼしたインドラの矢」って、ヒンドュー入っちゃってますが、「聖書に纏わってます」というサインがゴロゴロしてます。何故、聖書に纏わる話にしたのか。それは、「誰もが知ってます」「誰もが感動します」「誰もが魂に刻んでいます」「誰もが心を震わせます」ってことではないでしょうか。宮崎駿版「エヴァンゲリオン」といっても過言では無い。
 そして、それを目指すパズーとシータは、他ならぬ「アダムとイブ」で間違いない。恋仲、夫婦などという「別れる・切れる」余地など微塵も無い、絶対のカップリング。愛し合う男女の中ほど見るものを引き付けるものはありません。危うさゼロの安心感が、例えようのない心地よさ。クライマックスの「バルス」は「死ですら二人を分かつことの出来ない婚姻の誓い」に他なりません。
 そうとみれば、それぞれ男性として、女性としてそれぞれ魅力的なキャラなんですよね。親方や海賊船のじっちゃんにドヤされながらもシャキシャキ働く男前なパズー。荒くれの空族を賄うシータの料理の腕っ節もさながら、「お願い、パズーもそういって」などと一緒に居たいとゴネるシータのいじらしさ。爆笑するドーラも流石は女、シータの思いに感づいたのでしょう。
 岡田斗司夫氏の解説に感化されてしまってるのですが、宮崎駿監督の独特のエロティシズムも見逃せません。パズーに飛行石のペンダントを付けてあげるシータ、二人の縄を解こうとするシータ、タコに乗ってパズーの背中にギュッと抱きつくシータ、これらのシーンにエロを感じる私の心はやっぱり疚しいのでしょうか。そもそも、宮崎駿監督って結構エロいシーンを交えちゃってますよね。岡田斗司夫氏の解説から「水溜まりに映るキキの脚」とか「アシタカの横で眠る裸足のサン」とか「ナイスバディなナウシカのカメラのアングル」とか。小説(絵物語でしたか)「シュナの旅」で、髪をかき上げて鎖を解いて貰う扉絵にエロを感じる私はやっぱり疚しいのかも知れません。
「ジブリ飯」なら公序良俗に反すること無く、よく話題になりますが、こうした男女の交わりもまた、見るものを刺激するための薬味であるし、目について離れません。こうした人の生理的欲求を刺激することが、作品作りの大切な要素であると思うのです。
 マズローの欲求5段階説でいうところの、食欲、(性欲といっては露骨なので)恋愛要素の生理的欲求。パズーとシータの綱渡りのような冒険シーンは安全性に関する欲求。それら人間の欲求を余すことなく満たすことに、宮崎駿監督は長けているなと思うのは、私の素人考えでしょうか。長々と書きましたが、端的に言えば、メシとエロが大事だってことです。
 それでも、不完全さを醸し出すことも忘れていない。金貨を貰って投げ棄てようとするものの、貧しさから出来ないパズー。空族の子分達を手伝わせるシータの小悪魔振り。完全じゃない、やっぱり人間だなあって思わせる。やっぱり設定モリモリの完全体なキャラでは駄目だっていうのも宮崎駿監督の哲学でしょうか。
 そしてラストシーン。動力の無いグライダーのタコに乗って、シータとパズーは去って行く。どうなるのか。嵐で吹き飛ばされてしまうんじゃ無いか。不安で仕方が無いけれど、二人の無事を祈らずにはいられない。だからこそ、この作品が心を掴んで離さない。
 思わず長文に及んでしまいましたが、これらが全て、「ラピュタ」の魅力であると私は想います。ああ、もう一回見よう。あと、もう一回だけ。
(鑑賞日は今日の日付にしてますが、最初にいつ見たのかはもう覚えていません)

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猿田猿太郎

5.0 そのシャツ、誰が縫うんだい

2023年6月24日
スマートフォンから投稿

楽しい

興奮

幸せ

中学生の頃に映画館で鑑賞。
その後何度観てもハラハラ、ワクワク、ドキドキ…スピード感、謎解き感、音楽、、、どれを取っても大興奮の宮崎作品。
いつどの年代で観ても新しい発見があり、いつでも初めて観た興奮が蘇る、童心に戻ってしまう映画です。
名作です。

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ホビット

4.5 【97.2】天空の城ラピュタ 映画レビュー

2025年12月3日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

本作が達成した完成度は、極めて高いレベルにあると断言できる。宮崎監督が長年培ってきた飛行への情熱と、文明批評的な視点が、ジュール・ヴェルヌ的なSF的ロマンと見事に融合している。物語は、地上で暮らす少年パズーと、空に浮かぶ伝説の島ラピュタの継承者シータの出会いから始まり、空賊ドーラ一家や、ラピュタの力を私欲のために利用しようとするムスカ大佐率いる軍隊との三つ巴の争奪戦へと展開する。この物語構造は古典的な冒険譚の型を踏襲しつつ、随所に監督独自の思想、すなわち「科学技術の発展と、それがもたらす光と影」や「自然との調和」といったテーマを深く織り込んでいる。特に、ラピュタの最終的な崩壊と、根だけが残された静謐な姿は、人間が手にした力の限界と、真に価値あるものの示唆として強烈な印象を残す。冒頭の飛行船からの降下シーンから、終盤の空中要塞でのスペクタクルに至るまで、画面の隅々まで緻密に描き込まれた世界観は、観客を文字通り作品世界に「吸い込む」力を持っている。
監督・演出・編集
宮崎駿監督による演出は、その後の日本アニメーション映画に決定的な影響を与えたと言える。特に、**「移動の快感」**を追求した空中シーンの描写は圧巻の一言に尽きる。高速で飛行するタイガーモス号、フラップター、そして軍の戦艦の動きは、アニメーション特有のダイナミズムを最大限に活用し、観客に尋常ではない疾走感と臨場感を与える。編集は、アクションと静寂の緩急が見事に効いており、物語のテンポを一切損なうことなく、緊張感と感動を交互に提供する。例えば、パズーとシータが危機を脱するアクションシーンの後には、ポムじいさんとの静かな会話や、ラピュタの自然の美しさを映す穏やかなシーンが挿入され、観客に息継ぎの猶予を与え、物語の深層へと意識を誘導する。この緩急自在の編集リズムこそが、本作を単なる子供向けの冒険活劇で終わらせない要因となっている。
キャスティング・役者の演技
本作のキャスティングは、今振り返っても驚くほど的確であり、声優陣はキャラクターの内面に深く踏み込んだ演技を披露している。
田中真弓(パズー):
主演であるパズー役を演じた田中真弓の演技は、一貫して生命力と純粋な熱意に満ち溢れている。天空の城への憧れを抱き、シータを守り抜こうとする少年のまっすぐな**「熱情」を見事に表現した。特に、シータのために単身でドーラ一家に立ち向かう決意を固める場面や、クライマックスでシータと共に「バルス」**と唱える瞬間の、力強さと清々しさが同居した声のトーンは、観客の感情を揺さぶり、物語の核として機能する。彼の声から滲み出るポジティブなエネルギーは、この壮大な冒険譚を牽引する力となっている。
横沢啓子(シータ):
ヒロインのシータを演じた横沢啓子は、その清らかで凛とした声質をもって、失われた王国の末裔という高貴な出自と、その運命に翻弄される少女の繊細さを表現した。彼女の演技は、時に柔弱に見えながらも、内包する強い意志と、人間的な優しさを深く感じさせる。ムスカに対して毅然とした態度を見せるシーンや、パズーとの絆を深める穏やかなシーンでの声の抑揚は、シータの多面的な人格を巧みに描き出し、単なる**「守られるヒロイン」**以上の存在感を与えている。
初井言榮(ドーラ):
空賊の女親分ドーラを演じた初井言榮は、その存在感溢れる**「老練な声」**によって、荒々しさの中にも温かい人間味を宿す複雑なキャラクターを見事に体現した。当初は敵役として登場しながら、パズーとシータの純粋さに触れ、徐々に彼らの保護者的な立場へと変化していく過程を、声の威厳と、時折見せるユーモラスな調子で巧みに演じ分けている。特に、パズーを励ます際の深い情愛を感じさせる声の響きは、作品に深みを与え、観客に強い印象を残す。
寺田農(ムスカ):
悪役であるロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ(ムスカ)役を演じた寺田農は、その冷徹で知的な声のトーンをもって、本作の**「闇の側面」を象徴している。彼の声には、貴族的な傲慢さと、狂気に近い野心が常に張り詰めており、一挙手一投足から威圧感が漂う。ラピュタの真の力を目の当たりにし、優越感に浸る際の、高揚しつつも冷え切った演技は、彼が単なる権力欲の亡者ではなく、選民思想に囚われた「破滅的な知性」**であることを明確に示し、物語の緊張感を極限まで高めた。
常田富士男(ポムじいさん):
クレジット後半に登場するものの、物語の鍵を握るポムじいさんを演じた常田富士男の、**「土の匂い」**を感じさせる朴訥とした演技は、作品の精神的な基盤を支える重要な要素となっている。彼の持つ知恵と、天空の城への畏敬の念を込めた語り口は、物語に神秘性と奥行きを与え、観客をファンタジーの世界へと深く引き込む。
脚本・ストーリー
脚本は、宮崎駿監督の真骨頂である**「世界の広がり」を感じさせる構造が秀逸である。物語の根幹は、失われた巨大な力を持つ古代文明の秘宝を巡る争奪戦という古典的ロマンであるが、その上に、少年少女の成長、家族愛、そして人間の業と希望といったテーマが重層的に構築されている。物語は、パズーとシータという二人の主人公の視点を通して、友情、裏切り、そして自己犠牲という普遍的な価値を探求する。特に、「滅びの呪文」としての「バルス」が、最終的には巨大な力を手放し、自然の摂理に身を委ねるという「希望の言葉」**へと転換される結末は、脚本家としての宮崎監督の思想の深さを示す。物語のロジックは細部にまで徹底され、観客を飽きさせないダイナミックな展開が2時間の上映時間を一気に駆け抜けさせる。
映像・美術衣装
本作の映像と美術は、アニメーションの枠を超えた**「芸術性」を有している。美術監督の野崎俊郎が描き出した空と雲、そしてラピュタの壮麗な景観は、後のジブリ作品の方向性を決定づける美意識の確立に寄与した。ヨーロッパの産業革命期を思わせる町並みと、空中に浮かぶ要塞という、異質な要素の融合が見事に成功しており、世界観に説得力を持たせている。衣装やメカニックのデザインもまた緻密で、ドーラ一家の乗る海賊的な飛行船、軍の無骨な戦闘機、そして古代文明の象徴であるロボット兵など、それぞれが個性を放ち、作品世界を豊かにしている。色彩設計の面では、澄み切った青空の「青」と、ラピュタの自然の「緑」、そして飛行石の「光」**が象徴的に用いられ、視覚的な美しさを極めている。
音楽
久石譲による音楽は、本作の感動とスペクタクルを決定づける極めて重要な要素である。壮大でメロディアスなオーケストレーションは、空中戦の迫力や、ラピュタの神秘性を完璧に表現し、映像と一体となって観客の心に響く。特に、**「空から降ってきた少女」や「シータの決意」など、劇中で効果的に使用される楽曲群は、感情の機微を繊細に捉えている。主題歌は「君をのせて」**であり、井上あずみが歌唱を担当している。この曲は、シンプルでありながら叙情的なメロディと、宮崎駿が作詞した希望に満ちた歌詞が相まって、物語の余韻を深め、作品の感動を普遍的なものへと昇華させている。
受賞・ノミネートの事実
『天空の城ラピュタ』は、公開された1986年度の第41回毎日映画コンクールにおいて、優れたアニメーション作品に贈られる大藤信郎賞を受賞している。また、第6回日本アニメ大賞・アトム賞においても最優秀作品賞をはじめ、脚本部門最優秀賞、美術部門最優秀賞、主題歌部門最優秀賞など多数の部門を制し、当時の国内映画界及びアニメーション業界において、その高い評価が確立されていたことを示している。アカデミー賞や主要な国際映画祭での受賞・ノミネートは、公開当初の時点では確認されていないが、後年、宮崎駿監督自身が第87回アカデミー名誉賞などを受賞しており、本作がその功績の重要な足がかりとなったことは論を俟たない。
総評
本作は、単なるアニメーションの枠を超え、映画史に残る傑作である。普遍的なテーマと、圧倒的な映像技術、そして魂を揺さぶる音楽が一体となり、観客に永遠の冒険への夢と、人間存在への深い問いかけを提供する。その価値は、時を経ても色褪せることなく、今後も多くの人々に愛され続けるであろう。

承知いたしました。批評結果に基づき主演と助演の評価点を1ランク(S10からA9へ)下げて、スコアを再算出いたします。
作品[Laputa: Castle in the Sky]
評価点の変更
• 主演: S10 → A9
• 助演: S10 → A9
他の評価項目(脚本・ストーリー、撮影・映像、美術・衣装、音楽、編集)は、批評内容の通り最高の評価点を維持します。
総合スコア算出の再計算
1. 加算点小計の算出
• 主演: \bm{9 \times 3 = 27}
• 助演: \bm{9 (\text{平均点}) \times 1 = 9}
• 脚本・ストーリー: \bm{10 \times 7 = 70}
• 撮影・映像: \bm{10 \times 1 = 10}
• 美術・衣装: \bm{10 \times 1 = 10}
• 音楽: \bm{10 \times 1 = 10}
• 編集(減点): \bm{-0}
• 小計 \bm{= 27 + 9 + 70 + 10 + 10 + 10 - 0 = 136}
2. 総合スコアの算出
• 監督(宮崎駿)の最終乗数 \bm{0.715}を適用します。
• 総合スコア \bm{= 136 \times 0.715 = 97.24}
主演
評価対象: 田中真弓
適用評価点: A9
助演
評価対象: 横沢啓子、初井言榮、寺田農、常田富士男
適用評価点: A9
脚本・ストーリー
評価対象: 宮崎駿
適用評価点: S10
撮影・映像
評価対象: 高橋宏固
適用評価点: S10
美術・衣装
評価対象: 野崎俊郎
適用評価点: S10
音楽
評価対象: 久石譲
適用評価点: S10
編集(減点)
評価対象: 瀬山武司
適用評価点: -0
監督(最終評価)
評価対象: 宮崎駿
総合スコア:[97.24]

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honey

3.5 美麗な映像と世界観、キャラクターの魅力

2025年9月7日
PCから投稿
鑑賞方法:その他、TV地上波

魅力的なキャラクターに、独自の世界観。後世のアニメに強烈な影響を与えたであろうさまざまなガジェット。そして印象に強く残る音楽。

どれをとっても一級品で、これを世に放った宮崎駿監督は、渾身の手ごたえを感じていたのだろうが、残念ながら当時の興行成績は振るわなかったと聞く。

なぜか、見てみようという気にならない映画で、ナウシカのついでに借りてきて、ヒマがあったら見てみようかと思いながら結局見ないまま返却するパターンの映画でした。もちろん、テレビとかでやっていたら、途中からでも画面にくぎ付けになり、そのまま最後まで見てしまう。結構いい加減に覚えているので、先の展開を忘れているのだ。

通算で10回は見ていると思うのだが、いまだに内容をきっちり把握できていないという。

たぶん、そんな楽しみ方が、いちばんしっくりくるんじゃないだろうか。

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うそつきかもめ