日本公開当時、前作『WHO AM I?』からほとんど日が経たないうちに公開されたため(調べると1か月後)、なんでこんな短期間にジャッキー映画が続けて公開されるんだ?とちょっと不思議に思った記憶がある。この頃のジャッキー映画はいくら面白くても、どうしても同工異曲になってしまうため、似たような映画を続けて公開するのはどうなのかと勝手に危ぶんだのだ。しかしそんな杞憂は勝手な思い込みで、『WHO AM I?』とは全く違うタイプの映画だった。ジャッキーが『ラッシュアワー』でハリウッド進出に成功した後の作品だが、アクション映画ではなく、アクションシーンのあるラブコメディ映画だったのだ。
もともとジャッキーはプロデューサーだけの予定だったらしいが、紆余曲折の末に主演もすることになったとのこと。ジャッキー自身も自分がこの映画の主人公を演じたのでは観客は受け入れてくれないだろうと思っていたらしいが、監督やスタッフの説得で主演することになったらしい。結果として、それがこの映画の成功の要因の1つになったと思う。ジャッキーが主演する予定ではなかったことで、いい意味でいつものジャッキー映画にはなっていないのだ。ジャッキー単独主演ではなく、スー・チーとのダブル主演と言って良く、特に前半はむしろスー・チーのほうが主演で、ジャッキーは準主演のような役回りになっている。それがいい。ジャッキーが主人公ヒロインを見守る「あしながおじさん」的な恋のお相手のポジションに終始しており、それが絶妙にハマっていた。また年齢的にいつもの無鉄砲なキャラクターに少々無理が出てきたジャッキーが、ずっと年下の女性を見守る大人の男という年相応の役を演じていることにも新たな可能性を感じさせた。
しかし、この映画はなんといってもスー・チーである。この映画はヒロイン次第で良くもなれば悪くもなる映画だ。スー・チーが良くなければ、ここまで良い映画にはならなかっただろう。ヒロイン役は当初からスー・チーの予定だったが、スケジュールの都合などから一時別の女優に代えることになったものの、やはり最終的にはスー・チーが演じることになったという。これは大正解で、スー・チーは後々も若い頃の彼女の十八番となる、ちょっとオツムは足りなそうだけど心はどこまでも純粋な女の子をこれ以上ないほど好演しており、僕はこれ1作で彼女に心をわしづかみされ、以後彼女の出演映画をレンタルビデオで探し回って観るようになった(日本公開されても地元に来なかったり、そもそもVHS&DVDスルーの映画が多かったので)。さすがに今ほどの大女優になるとは予想できなかったが、90年代のマギー・チャンに代わる新世代スター女優の誕生は予感させた。さらにトニー・レオン、エミール・チョウ、リッチー・レンなどの俳優陣もこれ以上ないようなハマり役でいずれも好演である。
そしてアクション・シーン。本作ではジャッキー演じる社長の趣味が格闘技という設定にして、エミール・チョウ演じるライバル社長が雇った格闘技の達人を演じるブラッドリー・ジェームス・アランとの凄まじいファイト・シーンが描かれている。『スパルタンX』での対ベニー・ユキーデ戦に勝るとも劣らないジャッキーのベスト・ファイトだろう。ブラッドリー・ジェームス・アランはジャッキーのアクション・チームの一員で、後にハリウッド映画などでもアクション・コーディネーターとして活躍したが、2021年に48歳の若さで死去したとのこと。合掌。
僕はこの映画に新たなジャッキー映画の方向性を感じ、ジャッキーはこういう映画を作り続けるべきだなどと勝手に思ったりしたんだが、残念ながらそんな勝手な期待は裏切られ、ハリウッド進出成功という名の個人的ジャッキー暗黒時代へと突入していくことになる。
なお最初に出たパイオニアLDCのVHS&DVDは日本公開版が収録されているが、その後のポニーキャニオンのBlu-ray&DVDは香港公開版が収録されており、終盤のシーンが若干違っている。まぁそこまで気にするほどの違いではないが。