マルコヴィッチの穴

劇場公開日:2000年9月23日

解説・あらすじ

定職のない人形使いのクレイグは、新聞の求人欄を見てマンハッタンにあるオフィスビルの7と1/2階にある小さな会社に就職する。文書整理の仕事を得た彼は、ある日落としたファイルを拾おうとキャビネットを動かし、偶然壁に小さなドアを発見する。ドアを開けて穴の中に入った彼は、それが俳優ジョン・マルコヴィッチの脳へと続く穴であることに気付く。

1999年製作/112分/アメリカ
原題または英題:Being John Malkovich
配給:アスミック・エース
劇場公開日:2000年9月23日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第57回 ゴールデングローブ賞(2000年)

ノミネート

最優秀作品賞(コメディ/ミュージカル)  
最優秀助演女優賞 キャメロン・ディアス
最優秀助演女優賞 キャサリン・キーナー
最優秀脚本賞 チャーリー・カウフマン
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映画レビュー

4.5 【”7 1/2階のエレヴェーターのドアをグイッとこじ開けて入るオフィスの中に或る穴。そして人形の使いの夢。”今作は映画観賞履歴の中でもベスト3に入るヘンテコ映画であり、何度も観ると深い作品である。】

2025年12月11日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD、VOD

笑える

知的

難しい

<Caution!内容に触れています。>

■妻ロッテ(キャメロン・ディアス)に促され、渋々レスター社と言う会社に行く”人形遣いのクレイグ”(ジョン・キューザック)。
 ビルに着きエレベーターに乗ると、同乗していた黒人女性(オクタヴィア・スペンサー)が慣れた感じで”7 1/2階ね!”と言うと、早業で7階を通り過ぎた瞬間にボタンを押し、備え付けの鉄棒を隙間にグイっと入れて(何度も行っているらしく、隙間がボコボコ。)ドアを開けると、そこは腰をかがめないと歩けない高さが異常に低いフロアなのである。

 このシーンから可笑しいのであるが、レスター社長(オーソン・ビーン)の言っている”普通がオカシクて、オカシーのが普通”と言う擦れ違い会話から、尋常ではない会社という事が分かる。

 クレイグはフロアで出会った美女マキシン(キャサリン・ターナー)をチャッカリ、ナンパしつつ、会社の備品棚の裏に開いて居た穴を見つけるのである。
 その穴に四つん這いで入り、進んで行くと突然”すいーっと”吸い込まれると、そこはジョン・マルコヴィッチ(ジョン・マルコヴィッチ)の頭の中であり、彼が見ている世界を共有出来るのである。驚愕するクレイグだが、15分すると車が走る幹線道路脇の土手にドサッと落ちるのである。

 【”人形遣いのクレイグ”は、その事をマキシンに告げると、彼女はそれで一儲けしようというのである。15分、200ドルでジョン・マルコヴィッチの頭の中に入れる穴】は、評判を呼ぶのだが、多くの人が腰を屈めて穴に入る順番待ちのシーンは可笑しい。
 ー けれども、このシーンは人間が他人の頭の中に入りたいという願望を可視化したシーンでもあるのである。ー

 その後、性倒錯者と自称するロッテも、その穴の中に入るのである。そしてジョン・マルコヴィッチの恋人になっていたマキシンと、倒錯的なセックスをするのである。ウーム。不条理だなあ・・。

 自分の身体が乗っ取られている事に気付いたジョン・マルコヴィッチが列に強引に割り込み、”すいーっと”吸い込まれると、そこに展開されていたのは、ウェイトレスも、お客も、メニューも、皆が喋る言葉も、皆”ジョン・マルコヴィッチ”なのである。
ー このシーンは超有名である。不条理シーンとしても一級品の構成である。どのように撮影したのかなあ・・。クスクス。-

 ”人形遣いのクレイグ”は、ジョン・マルコヴィッチの頭の中に入り込み、彼を支配してジョン・マルコヴィッチは有名俳優から、人形遣いになるのである。その過程で徐々に”人形遣いのクレイグ”の人格はジョン・マルコヴィッチの人格を乗っ取って行くのである。少し怖いシーンである。マキシンも又、それに協力するのである。
 だが、それに反発したロッテは、レスター社長に助けを求めるのである。レスターの正体は”穴の中で生き続ける”マーティン船長だったのである。観ていると可なり混乱してくるのである。

 数か月後、 ”人形遣いのクレイグ”が乗っ取ったジョン・マルコヴィッチはマキシンと結婚するが、妊娠中の彼女は誘拐され、”人形遣いのクレイグ”はレスター社長からマキシンを助けたければ、ジョン・マルコヴィッチの身体から出て行けといわれ、逆にジョン・マルコヴィッチの身体の中には、レスター社長とその仲間達が永遠の命を得るために、入り込むのである。もう何が何だか分かりません・・。

 今作では、チャーリーシーンや、ショーン・ペンも実名で登場するのもアクセントとして面白いのである。そして、8年後。見事に禿げあがったチャーリーシーンも登場するのだが、そこは本筋には関係が無い。
 マキシンとロッテはお腹の中に居た”彼女達の女の子”と暮らしているのだが、女の子の中にはジョン・マルコヴィッチの中に戻ろうとしていて、胎児の中に入ってしまった”人形遣いのクレイグ”が居て、二人をプールの中から、じっと見ているのである。

<今作は私の映画観賞履歴の中でもベスト3に入るヘンテコ映画であり、何度も観ると深くて、ちょっと怖い作品なのである。
 個人的な意見であるが、マア、今作は、2回観ると中々だと思います。>

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NOBU

4.0 コメディ作品なのに哲学的なことを色々と考えさせられます

2025年7月8日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

マルコビッチの穴
1999年公開

奇想天外な稀代のカルト映画です
コメディ作品なのに哲学的なことを色々と考えさせられます

人形使いと人形の実体はどちら?
そりゃ人形使いに決まってます
不道徳な人形劇を子供に見せたなら親から殴られるのは人形使いで人形ではありません

クレイグとマルコビッチなら実体はどちら?
クレイグ?
マルコビッチが誰かに失礼を働けば、殴られるのはマルコビッチ
クレイグは、意識だけなのだから殴られてはいない?
失礼を働いたのはそのように肉体を操り、その罰を受けたマルコビッチの肉体の痛みをクレイグは意識として受けることになる
本当に殴られたのはどちら?
まあそのようなどうでもいいことをグルグルといつまでも考えさせられる映画です

なんで7階1/2 ?
もちろん大人になりきれない大人の為のフロアのこと
モラトリアムなクレイグの居場所?
そういう意味のはず
終盤になってやっと大人になったクレイグはこのフロアから用無しになったのです
考え始めると幾らでも考えられる映画です
でもそんなどうでもいいことをいつまでも考えているようなら、モラトリアムのフロアの住人になってしまいます
タンスの後ろ側の壁にマルコビッチの穴が空いてしまうかも知れません
それでもヤッパリ考えさせられます
それほど魅力的なカルト映画です

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あき240

4.0 見る人を強烈な世界に誘う映画

2025年5月7日
スマートフォンから投稿

もう何十年も観ていないのですが、その頃は何十回も鑑賞した映画です。強烈なアイディアにより物語の進行はパラレル!! 妙な方向世界と同時進行してゆく。次第に登場人物達は、そのパラレルの虜となり切なくも幸せな状態に陥いると言うもの。

“なんだこれは”の連続

マルコビッチは実在の俳優。
その人がその人で登場。
穴による彼の戸惑い
穴による思惑と行動
その結果は幸せであり
悲しくもある。

最初の思いを寄せる暗く切ないシーンは、ラストの明るく切ないシーンと繋がるのでは無いかと思う。楽しく笑えて驚いて、ちょっと切ない映画です。

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星組

3.5 まごうことなき奇作 人の頭の中に入りその人の生活を覗いてみたいとい...

2024年9月5日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

まごうことなき奇作

人の頭の中に入りその人の生活を覗いてみたいという欲求
他人になりすまし称賛を浴びたい欲求
男になりたい欲求

ニッチな欲求を満たせるマルコヴィッチになれる穴

のっけから不思議な世界で7と1/2階にあるオフィス
言葉の通じない秘書
何かがずれた社長
そして動物をたくさん飼ってるクズ主人公(妻有)

不思議な世界観を出したいのかあくまでファンタジーですよと強調したいのか唐突に出る割にその後活きることはあまりない

個人のアイデンティティーを題材にしている部分はぶっ飛んだ設定から現実的に考えられていてよかった

だけど永遠に生きるとか言い始めたところがよくわからなかった
そこはさらっと流すだけで終わってしまうし

抵抗不可能な上乗っ取られまでされるマルコヴィッチがひたすら不憫な映画でもある

突飛な発想でいい作品なのに作品内で消化しきれていないといった具合の感想

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高い坂