グッバイ、レーニン!のレビュー・感想・評価
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資本主義と社会主義の相違点を知る切っ掛け
この作品が、資本主義と社会主義(共産寄り)の相違点を知る切っ掛けになると良いね。
東ドイツの社会主義に傾倒する母親が心臓発作で8ケ月もの間、昏睡状態となるも、目覚め時には壁が崩壊し、西ドイツの波が押し寄せていた。医師からショックを与えることを禁じられていた息子アレックスは、母のために、部屋の中、食料、窓からの風景、テレビ番組さえも独自で制作し、壁崩壊前の東ドイツの再現に走り回る。
ユーモアと風刺と愛情とたくさん詰まったすばらしい作品です。
宇宙から見たらちっぽけなのに
ダニエル・ブリュールは声がよくてナレーションもすごくいい。
2003年の映画だったのか。確かにヘドウィグも善き人のための…など東ドイツ関連の映画は2000年代以降にたくさん制作された。再統一して10年たって振り返り、早すぎたのでは?本当に良かったのか?と考える余裕と内省ができるようになったということなのだろうか。この映画を見る自分も世界も1989年は勿論、2003年と比べたって当然のごとく変化している。でも東西格差はある。いまだにある。壁の崩壊後に生まれた世代間にも差別感情がある。
子どもの為にママは一生懸命に国を愛することにした。そしてママの命の危機のために二人の子ども、取り分けアレックスが滑稽なほど真剣に「なくなった」国にかつてあったものを集めて「ママの世界」を作った。それは自分にとっての「過去」の世界の再構成でもあったんだろう。
アレックスが映画制作好きの職場同僚=友達(いい味出してる!キャスターも堂に入ってた!)と「ママの為に」作ってきたニュースの最後の原稿の言葉には胸を打たれた。「西ドイツからの難民をうちで受け入れて」というママの言葉も涙なしには聞くことができなかった。
子どもの頃宇宙に憧れていたアレックスが東独の英雄だった宇宙飛行士に「ニュース」に出演してもらったこと、ロケットを飛ばして花火と共にママを宇宙に送ったお別れ場面は良かったなあ。
あるインタビュー番組で大事な映画3本を尋ねられたダニエルは「イングロリアス・バスターズ」「ラッシュ」そして、いい映画だと言って「グッバイ・レーニン」を挙げていた。いい映画です、本当に。
母のためについた大掛かりな優しい嘘
アレックスがベルリンの壁崩壊を知らない母のためにつき続ける嘘、バレそうになってヒヤヒヤしたり、誤魔化したり…コントにありそうな展開だけど笑えると言うわけではなく、コメディとして観るのは違うなと思った。
嘘は母が倒れてしまった原因として責任感を感じての行動だし、母親思いの優しい子やなと思ったけど、周りの迷惑を顧みず嘘に巻き込んでるやんと思い、ちょっとイラッとした笑
ベルリンの壁が崩壊したことで、東ドイツの人皆んなが豊かな生活を得ることができたと観る前はなんとなく思っていた。
しかし、社会が変わることに適応することは困難(若い人は比較的大丈夫だけど特にお年寄り)だろうし、資本主義による自由競争についていけない人達も当然出てくる。良いことだけじゃないと認識することができた。
最後に、ララがめちゃくちゃ可愛かった笑。
ついていい嘘
8ヵ月後に母が目覚めたときにはベルリンの壁崩壊の事実も知らずにいたという設定だけで、母親が可哀想になりアレックスと同じ気持ちにさせていただきました。家族の絆という点では、展開がかなり読めてしまうのだが、突拍子もないでっち上げニュースで母親を安心させるテクニックにしびれてしまいました。「ああ、次はこういう嘘がいいかな」などと自分なりに嘘を考えさせられるのも楽しかったです。
映像では効果的な花火!これが見事にこの映画を引っ張っていってくれます。レーニン像を移動するシーンも不思議と震えがくるほどの美しさです。
映画全体を通して、資本主義がいいとか社会主義がいいとかの思想のプロパガンダは一切無く(良い所、悪い所の両者をしっかり描いている)、むしろ思想はどうあれ世界が平和であるようにという祈りが込められていて、民族統一を願う家族愛を中心に描かれていることに好感度大です。
【2004年4月映画館にて】
フェイクニュースに込められた、涙ぐましい母への愛
東西ドイツ統一 1990年 の歴史的激変の社会状況下、東ドイツの社会主義指導者として生き甲斐を得ていた母親に、精神的なショックを与えないよう孤軍奮闘する青年の涙ぐましい愛情を描いた良心作。第二次世界大戦以後のドイツ映画沈滞から、統一を経て客観的な視野に立ち、一方的な深刻さと暗さも薄れて、自由主義社会のユーモアも含まれたこの作品を観ると、ドイツ映画も21世紀に完全復活してくれると期待したくなった。
民主主義と資本主義の生活様式に変わっていく中で、主人公が旧東ドイツの食品・衣服・行事などを追い求め、失われる過去を再確認するところに、この映画の狙いがある。それは郷愁と云うより、自己形成の分析であろう。それを一途に母親を救うための行為で、さり気無くみせるところが巧い。
父がひとりで西側に亡命した家族の悲劇から、子供たちにその理由も自分の心情も正しく伝えなかった母の苦しみ、女を選んで妻子を棄てたと思っていた長女の父に対する接し方など、一見バラバラに見える家族の繋がりは良く視ると強い絆で結ばれている。家族の新しい統一の形を思わせる、繊細で自然な描写が素晴らしい。
仕事仲間が偽装の東ドイツテレビのニュース番組制作に協力するシークエンスがいい。かつての宇宙の英雄、今はタクシードライバーになっている元飛行士の関わり方もうまく処理されて、フェイクニュースが母を安静にさせる。なんと幸せな母親と想わずにはいられない。マザコン青年をここまできれいに頼もしく描けるのか、と感心至極です。
ドイツが越えた時代の大変動
どう考えてもあり得ない話なんだけれど、ドイツの越えた時代の激流をうまくコメディタッチに変換して描いている。
わずか数年前の生活を変えないようにすることがここまで難しいか、と思わせておいて、
全体を見終えると、東西統一による生活の変化がいかに大変動だったか、しみじみと感じさせるのである。
イデオロギーが一気に逆転したとき、その急激な時代の流れに人々の心の切り替えが追いついていなかった現実を炙り出しているかのようだ。本作は、先行して流れていった時代の波と人間の感情の橋渡しをしているように感じた。
オスタルギー
東独への郷愁、オスタルギー。
抑圧された社会なのに懐かしいと思うのが人の心の複雑さか。
母のために東独を再現しようとコミカルに描いているが、なかなかどうして単なるコミカルじゃない。母は必ずしも東独に対して肯定的ではなかったところがひねりとして入っている。楽しめるし、東欧社会主義がなぜ崩れたのかまでも考えさせられる。
時代の厳しさとそれに対する反抗心
母にショックを与えないように嘘をついてるが、その嘘の生活にアレックス自身も救われているという設定が面白い。
ドイツの急激な変化は、自由で華やかで一見良いものに見えて、アレックスや母のように地道に働いてきた労働者にとっては生きにくい世界を作り出してしまった。
当時のドイツの時代の流れは急激で、色々な新しいものに抗いたい気持ちを多くの人が持っていたのだろう。
アレックスの家族内でも、妹と婿は新しいことに順応しているけど、アレックスと母は昔の方が良かったと思っていて、気持ちの分裂があった。
アレックスは母への愛と自分のプライドで母に真実を明かさなかった。母のためだけじゃないってところが良い。
赤ちゃんがとにかく可愛かった。なんでそんなに演技が上手なの!?笑
「エーミールと探偵たち」(2001年に製作されたドイツの映画) の...
「エーミールと探偵たち」(2001年に製作されたドイツの映画)
のラストシーンと合わせて見てみると面白い。
全くバラバラのように見えていた子供たちが突然群れになって
行動しだす。
その時になって初めて自分が追われていたことに気がつく悪役の男。
それはフィクションでもパラノイアでもなんでもなく、
国民の90人に一人が秘密警察の関係者で、
通りを歩いている人や自分の友人さえもそうかもしれないと思いながら生きてきた東ドイツの人にとっては、
たいして異常なことでもない。
秘密警察には
各国民個人の行動習慣や人間関係、ビン詰めにされた体臭サンプルまで保管されており、
そうしたデーターベースや心理テクニックを基に、
ある個人がある個人に対して特定の行動をするように仕向けることも可能だった。
この「グッバイ・レーニン」は、
国家が個人の視聴覚の外延と呼べるものを事実上全てハイ・ジャックすること可能だった時代から、
NGOや企業、テロ組織などがそうした能力を引き継ぐ時代へと移行していく、
まさにその瞬間の様子が克明に表されていると思う。
東ドイツの秘密警察(STASI)は解体されたが、
その手法を引き継いだ組織は北朝鮮と
日本(にある朝鮮総連)に現在存在している。
主人公に共感できず!!
10年位前に観て面白かった気がするのでまた観てみましたが、母を亡くした事もあり、終始お母さんを騙し続ける内容が酷いと思いました。お母さんが社会の一員としてのモチベーションが高いので、東ドイツ体制の良かった部分を感じました。主人公のドヤ顔と無駄に可愛いガールフレンドも何だかなあという感じでした。
この時代の新しいパターンだけれど…
ベルリンの壁により様々なストーリーが生まれ、それが題材になった作品はいろいろと見てきたけれど…また新しいパターン。
感想ではなく自分メモ↓↓↓
社会主義を推進する東にいるお母さんが倒れ、ベルリンの壁が崩壊した時は昏睡状態で、目が覚めた時には東西が統一したことを知らない。
息子さんが、お母さんにショックを与えないように、必死でそれを隠す…
単につまらなかった
2時間ほどの映画ですが、1時間ちょいでつまらなくて視聴を辞めた。
コメディーを期待してたけど、個人的には笑えなかったのでヒューマンドラマに思えた。
主人公による母親に対する嘘が喜劇部分の主軸として展開しますが、母親が気の毒に思えて笑えなかった。作中のヒロインも「母親に嘘をつき、ぬか喜びさせるのは気の毒」という内容で主人公を非難してたけど、ヒロインの意見に全く同感で、全く笑えない。ヒロインにこういう台詞を言わせるところから察して、作者も人を選ぶ映画と分かりながら作ってるように思う。
また、母親を気遣っての嘘だとも思いますが、個人的には人に気遣いされるのが好きじゃないので、それも笑えなかった理由。もし自分があの母親の立場なら、気遣いされるのが嫌なために、第一に鬱陶しく、心暖まるなんてことはない。
評価がそこそこ良いので、おそらく良い感じで終わるのだろうけども、つまらなさすぎて最後まで見れなかったのは残念。
逆に、他人に気を遣われるのが好きな人や、嘘をつかれる母親を気の毒に思わない人は楽しめそう。人は選ぶ映画。
コメディ
シチュエーションコメディとしては凄く面白いと思う。自国の人に響くのも納得。
ママが部屋から出ちゃうシーンとかドキドキしたし、結構見ごたえある。
ママに嘘をつきつつ、それが自分の精神を保つためでもあるというところがまた人間らしい。
ママは本当に信じてたのかな
そこに生きる人々
いつもテレビの中では世界で起こっているであろう現実が、まるで映画のようにニュースとして流れていく。遠くの世界で起きたベルリンの壁が崩壊という、まるで映画の一部のような映像の裏では現実に、その歴史のうねりに飲み込まれながら日々を送っていた人々がいたこと。遠い彼方の人々の歴史の1ページをかいまみたきがします
暖かくも残酷、優しくも滑稽
大好きな映画の一つです。
母親の為に体制存続を演じる息子は、暖かく、ある意味では残酷です。
その息子の演技に仕方なくも付き合ってくれる優しい人達は、ハタから見たらやっぱり滑稽だと思います。
そして、ラストのロケットの打ち上げシーンで少し涙が出そうになりました。
肩肘張らず何にも考えなくても観れる映画だと私は思います。そのくらい分かりやすい。
けど、深いんです。
ドイツ映画史に残る名作だと思います。
●母への優しさ。
舞台は旧東ドイツ。厳格な母親が心臓発作で昏睡状態に。寝てる間にベルリンの壁が崩壊してしまう。意識が回復するも、息子のアレックスは崩壊を言い出せない。母親を刺激せぬよう、以前と同じ生活を送る。はたしてバレずに済むか。
崩壊後、資本主義の波が容赦なく襲う。スーパーの商品はあっという間に西側製に。それでも古いビンを見つけ出しピクルスを詰めたり、TV番組まで製作して平穏を維持する。西側への憧れとの葛藤。母親への愛情。西に渡ってしまった元夫。
クライマッックスは、母親が一人で外出するシーン。程度は違えど、こうした急変に直面したときにどうやって人はそれを受け入れるのか、なんてことを考えた。ある程度、自分の都合のいいように解釈して、少しずつ現実を受け入れるのだろう。それが早いか遅いか。
母親は息子のおかげで救われた。ラストはなんかいい終わり方だった。
以外と最近の映画だと知ってびっくり
テイストや題材のアレンジの仕方がすごく古い感じのものだったから1980年くらいに作られた映画かな?と思って観てしまっていたけど、2004年の映画なのか。びっくり。
結局母親がどの程度真実を知っていたのか、観客には最後まで明かされない。病院の看護婦などから聞いている可能性もあるかとは思う。個人的には大体のことん知ってて、それでも言わなかったんじゃないかなと。
母のために作り出した国家が、いつしか自分の理想になっていく。他国と対立してるなかで、自分たちが描く勝利というものがなんなのか、私には全く想像がつかない。
父親が亡命した理由を知った息子の複雑な感情。それは、母が東側に全て心酔していたわけではなく、東側の主義に心酔していたわけではなく、息子や娘を手放したくなかったという事実を認めると、これまで自分が行ったeffortが消え去るからなのか。ただ、自分たちを置いて亡命したと思った父が、仕方がなかったからなのか。
自由とは何なのだろうか?
最後のほうで家族みんなでドライブに出かける。その車のデザインの先進的なこと。まるで21世紀の水素自動車やハイブリッド車を思わせるデザインではないか!
多くの人々が自由を待ち望んだのだろう。決して少なくなくはない数の人が共産党政権下で思想や身体の自由を奪われていたことだろう。
しかし、西側が自由だったのかと言えば、そうとは言えない。
市場原理によって、登場人物たちが慣れした親しんだピクルスすら消え去るのが「自由で豊かな」消費社会なのである。そこでは、東側の生産効率に代わって販売効率が幅を利かせる。販路を得た西側の製品が東の市場を席巻するのにほんの少しの時間も必要なかったのだ。
自由に商品を選びとっているのと同じように、主人公の父親は自分の人生も自由に選び取ったはずだった。だがしかし、それは彼の自由を勝ち取ったわけでなく、別の抑圧が始まる物語だったのだ。
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