海を飛ぶ夢
劇場公開日 2007年4月16日
解説
事故により四肢麻痺となった男性が尊厳死を求めて闘う姿を実話に基づいて描き、2005年・第77回アカデミー外国語映画賞をはじめ数々の映画賞に輝いた社会派ヒューマンドラマ。尊厳死活動家ラモン・サンペドロの手記を基に、「アザーズ」のアレハンドロ・アメナーバル監督がメガホンをとり、「夜になるまえに」のハビエル・バルデムが主演を務めた。スペインの海辺の町で生まれ育ち、船員として世界中の海を旅して回ったラモン。しかし25歳の時に事故で頭部を強打し、首から下が不随となってしまう。それ以来、彼は献身的な家族に支えられながら、実家で寝たきりの生活を送ってきた。事故から26年が経った頃、ラモンは自身の人生に終止符を打つことを決意。現在の法律では認められていない尊厳死を実現させるため、支援団体を通じて知り合った弁護士フリアに協力を依頼する。
2004年製作/125分/PG12/スペイン
原題:Mar Adentro
配給:東宝東和
スタッフ・キャスト
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2021年9月30日
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テーマは深刻でインパクトが大きい。
でも、それと同じくらい、ラモンや、家族をはじめラモンを取り巻く人びとの、心の機敏や愛情の深さが上手に描かれていて、とても印象に残った。
身近にラモンのような人がいると、まわりの人は、いつの間にか思慮が深くなったりするものかもしれない。
義姉の言うことが最も的を得た。
「(神父は)うるさい。ラモンの好きなようにさせるしかない。どうすべきかよくわからない。彼は愛情に包まれている」というような…。
そう言えばスペインの女はしっかり者、と聞いたような。
安楽死問題はすごく難しく感じる。
ここではカトリックが「うるさい」存在なってしまっているけれど、それでも、もしラモンが、信仰とまでいかなくても宗教的な感覚でもって人生や世界をとらえていたなら、考え方が少しは変わっていたかもしれない、と、チラリと思う。
先日、難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症した女性に対する嘱託殺人容疑で医師2人が逮捕された事件がセンセーショナルに報道された。「安楽死」や「尊厳死」を考えるきっかけになった人も多いと思う。
この世で唯一絶対なものは、「死」は誰にでも必ず訪れ、決して抗うことはできないということ。その死に対して、自ら意思決定する「権利」はあるのか。
この問いに対し、絶対解はないし、一般化(抽象化)して議論すべきでないし、簡単に答えを出すべきではない。
「人生には生きる価値がある」なんて他人の押し付けがましい意見だ。
主人公ラモンに対して「あなたの考えは間違っている」と安易に非難する権利は私たちにあるのか。
生きる権利があるように、死ぬ権利は存在するのか。
本人の意思も大事。が、家族の悲しみは如何ばかりかと思いもめぐる。
テーマは重いが、決して絶望的な内容ではなく、人間の尊厳と自由を問う作品で、答えは一人ひとりが見つけていくもの。
主人公がいきなり、悲観的だ。
死にたがっている。
しかし、それは彼の誇りのための死だという。
印象的なのは、尊厳死反対派のキリスト教徒との議論。反対派は
「命を代償にする自由は自由ではない。」
しかし、主人公はこう言い返す。
「自由を代償にする人生は人生ではない。」
それが正解とは言い切れないのが人生であり、その答えを求め行く旅が人生だと個人的には思っている。
「命は自らの所有物ではない。」
この言葉に私は最も感銘を受けた。自分で所有していると思っているのが間違いだと。
なるほど。この命は親のもの。友人のもの。社会のもの。地球のもの。大きなものに所有されているとしたら、生きていく責任はぐっと重くなる。
私個人としては、安楽死には賛成である。
大賛成である。
今の私には、死んでいい理由は見つかるが、生きることを義務とする理由が見つからない。
”生きる義務”
それは私には重すぎる概念であり、憂鬱にさせる一つの原因にもなりうる。
簡単にいうと、そう思いながら生きていくのは、しんどすぎる。
社会の一部、ほんの一握りの恵まれた環境で生きる人間でない限り、常に生き生きと生活するのは難しいんじゃないかと思っている。
そして、死という選択が頭をよぎった経験をほとんどの人が持ち、それらの人々は尊厳死を認めると思う。
まずそういう経験をしてしまう人々が最小限になるような法律を定めたあとで、
尊厳死は認めないと言ってほしい。
2017年10月27日
iPhoneアプリから投稿
事故で四肢麻痺になり、家族の献身的な愛に支えられながらも、己の生きるという尊厳を貫きたく、尊厳死を選択したラモン・サンペドロの実話に基づく物語。
登場人物それぞれの心情が丁寧に描かれており、立場によって尊厳死の可否が変わるのがよく理解できる。
「生きることは義務ではなく権利だ」と言うラモンの言葉が身につまされる。
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