オーシャンズ11 : インタビュー
アカデミー賞監督の実感? とても奇妙な気分さ
小西未来
――この映画が実現したのは、あなたとパートナー関係にあるジョージ・クルーニーの存在があったからだと思うのですが、どうしてそこまで仲がいいんですか?
「ぼくらの趣味がとても似てるってことなんだろうね。ビジネスに対する考え方もとても似ていて。彼のことをとても尊敬しているし、とにかく波長が合うんだよ。数年前、彼がプロダクション会社を作ろうとしていて、パートナーを探していたんだ。で、一緒にやらないかって誘ってくれて。ぼくの方は、自分たちが心底やりたいと思うような作品しかやらないってことなら、ぜひやらせてよ、って答えたんだよ」
――クルーニーって、俳優としてもいまどきの俳優にない魅力を持ってますよね。
「その通り。とてもユニークな存在で、ほかに同じタイプの俳優がいないから、ハリウッドで特異な立場にいるよね。少年っぽさは一切なくて、まさに大人の男って感じで、他の映画スターとなると、彼よりずっと若いか、ずっと年をとっているかだから。40歳の彼だけが、ぽつんと存在していて」
――クルーニーはついに「Confessions of A Dangerous Mind」で監督デビューを果たしますが、先輩としてなにかアドバイスをしているんですか?
「ぼくが彼に言ったのは、監督として悩むべきことと、悩むべきじゃないことの区別の付け方だね。監督って、すべてをコントロールしようとして、あらゆる悩み事を抱え込んでしまうものなんだけど、全部こなすのは絶対に不可能なんだ。そんなことをしようとしたら、一日だってこなすことができない。だから、なにが一番重要かを見極め、それ以外の要素については悩まないようにすべきなんだ。映画製作におけるすべての要素を完全に把握するなんて、絶対に不可能だからね」
――去年のアカデミー賞を受賞されたとき、そうとう驚かれていましたが、いまではアカデミー賞監督としての実感はありますか?
「いや、すべてはパラレルワールドで起きた出来事のように思えるんだ。いまだにうまく飲み込むことができなくて。あれが現実に起きたことだって頭ではわかってるつもりだけど、なんだかとてもとても奇妙な気分で。ぼくが素直に喜べないもう1つの理由は、あのとき父親がいなかったからなんだ。ぼくは大学教授をしてた父の影響で映画に興味を持つようになったんだけど、『アウト・オブ・サイト』を完成させる前に他界してしまっていて。言ってみれば、ぼくは、ホームランを打った瞬間を見せることができなかったんだ。もし父が見ていてくれたら、きっと喜んでくれたと思うんだ。どれだけ喜んだか、想像もできないぐらいだよ。だから、なんとも切ない気持ちになってしまうんだよね」
――アカデミー賞受賞も含め、ここ1、2年で、あなたはこれ以上ないほど恵まれた立場になりました。こういう状況をどうとらえてますか?
「別に自分のものの見方に変化はないな。こういうものって、すぐに変わるものだから。つねにアップダウンがあるもので、またダウンの時期がきっとくるだろうし。いま作っている映画(ジュリア・ロバーツ出演の「Full Frontal」)や、来年の春に撮影開始する映画(「惑星ソラリス」のリメイク)なんて、誰も見たいと思わないかもしれないし。なにしろ、ぼくは、誰も見たがらない映画を、5本連続で撮った過去のある男だし(笑)」
――(笑)
「でも、当時は、そういう映画を作る必要を感じていたわけだし、そのことを後悔なんてしてないよ。だから、これからベストの仕事を続けていくこと以外は考えてないな」
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