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ロックバンド「ザ・イエロー・モンキー」の吉井さんと彼の音楽の先輩であるエロさんという男性にまつわる物語。
2人は元々同じバンドメンバーだったが、バンド解散後の吉井さんは音楽業界で大成功を収めた国民的スターになり、片やエロさんはインディーズでコツコツ音楽を続けるという対照的な人生を歩んでいる。
最近、吉井さんは喉頭癌を患う経験をし、エロさんは脳梗塞で右半身を麻痺するという【人生後半に訪れる生死の境界を体感する】という現実に直面する様子が描かれていた。
吉井さんの病気の症状が中々良くならずに何度も手術を行いながらドーム公演に挑んで行くシーンはとても痛々しく描かれていた。リハを繰り返す度に喉にダメージが蓄積されていくようで(もう、ライブとかやめて)と思えるほどの状況だった。
それでも吉井さんは長い年月を掛けて信頼を築いてきたメンバー達と不安や苦難を乗り切りドーム公演を大成功させるシーンは、この時会場にいた人も感じたであろう安堵感と感動的な気持ちで胸が一杯になった。
またエロさんも脳梗塞の後遺症に悩まされながらも(また再びギターが弾ける身体になり、表現活動を再開したい)という思いでリハビリを続け、その後、当時のエロさんの心の支えとなっていた街の教会で弾き語りのライブを成功させ、皆から賛辞の言葉を投げ掛けて貰うまでに回復した。
エロさん自身(ロックという言葉に人生を狂わせられたかもしれないが、今日のような素晴らしい喜びも与えてくれている)と音楽に捧げてきた人生に感謝の言葉を述べていた。
僕にとってこの映画は(人の成功って一体何なのだろう)というヒリヒリとした思いをずっと胸の中に訴えかけてくる映画だった。
実は吉井さんがプロを目指そうと上京を決意した際にエロさんにも声を掛けたが、エロさんは地元に残る事を選んだという。
もしかするとここがその後の2人の人生を分ける重要なターニングポイントだったのかもしれないが、人生なんてどう転がるかは誰にも分からない。
上京後、表舞台を歩くことになった吉井さんの感じる人生の充実感と、スポットライトを浴びることなく音楽活動を続けてきたエロさんのそれとを比べることなど、吉井さんやエロさん達が基準を設定しない限り誰にもできないはずだ。
しかし実際のところ(生活保護を受ける手前のギリギリの生活を送るエロさんの人生)と(今でも東京ドームでライブを行える吉井さんの人生)、どちらかを選べと言われたら、僕を含めて殆どの人が吉井さんの人生を選ぶだろうというのが現実ではないだろうか。
誰にも2人の人生の充実感は図れないと言っておきながら、多くの人はどうしても吉井さんの人生の方が羨ましく思えてしまう。恐らくエロさん自身もそう考えている部分もまだ残っているかもしれない。
このような「人の心に自然に湧いてくる業(ごう)」のようなものが、(本当の自分の気持ち)を見えなくさせている気がする。
そんな事を考えると、(自分の持つやましい気持ち)や(人生を狂わしてしまう不条理な現実)に対して胸が苦しくもなるが、その思いに絡め取られないように自分の人生を肯定できる時間を作り、その感触に思いを馳せることが「自分の人生を生きる」ということなのかと感じた。