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「万事快調 オール・グリーンズ」界隈で超話題の一作。新宿ピカデリーは満員。今年ベスト!笑って泣いて、そして胸が締め付けられる。最高の青春映画が爆誕した!
女子高生が大麻を栽培するという以外、前情報はほとんど入れずに臨む。原作小説も知らない。よって青春学園コメディくらいに軽く考えていた。
もちろんコメディ要素も青春要素もふんだんにあるのだが、その一方でしっかりとキツイ話し。特に序盤、主人公たちの家庭環境が語られるくだりは、観ていて本当にしんどかった。そして東海村という土地。その閉塞感たるや。久々に来た個人的超好みのジャンル、地方都市ノアールもの、でもあるのだ。
30分近く続くだろうか、その行き場のない鬱屈とした日常からついに一歩踏み出す瞬間、デーンとタイトルが!なんて最高のタイトルの出し方。ここまでアバンだったのかー!もうこのタイトルの出し方でこの映画、優勝である。
その後も児山隆監督によるエッジーな演出が続く。斬新なカメラワーク、急な無音、その他色々書きたいが、ネタバレになるので書けない。ぜひそのサプライズを体感してほしい。ともかく映画のテーマ同様、既成の概念をぶっ壊すという気概に満ちている。最高の映画作家だ。
主演の南沙良さん。鎌倉殿の13人で印象に残った役者だ。この圧倒的存在感の難役を見事に演じ切った。タバコをふかし、ストゼロロング缶を飲むやさぐれ感は堂に入っている。辛い家庭環境での鬱屈とした表情、感情を爆発させたときの表情、仲間を見つけて青春を感じ笑い合う表情、全てに引き込まれる。
そして何よりラップだ。主人公朴秀美はラッパー。駅前のサイファーで思いの丈をぶつける。その後、心情を吐露するときのフリースタイルラップは屈指の名シーン。決して上手くはないのだが、めちゃくちゃ心を打たれた。これがヒップホップか。上手いかどうかなんて関係ない。魂の叫びこそヒップホップ。
仲間の矢口美流紅を演じた出口夏希さん。こちらもなかなかの家庭環境と境遇。でもこちらはサッパリと明るい。そして芯が強い。オール・グリーンズをグングン引っ張っていく。大変魅力的なキャラクターだ。完全に虜になってしまった。
もう1人の仲間、岩隈真子を演じた吉田美月喜さんもいい。コメディエンヌとしての才能がほとばしる。何度も笑わせていただいた。そして朴秀美に思いを寄せるラッパー仲間ジャッキーを演じた黒崎煌代さん。どこかで観たと思ったら昨年の「今日空」で強烈な印象を残したあの子だ。今回も最高だった。
他にも強烈なキャラが何人も。安藤裕子の毒母や金子大地の悪役も素晴らしい。そして、とある2人の男子も最高。劇場中大爆笑だった。
行き場のない鬱屈とした日常、そのメタファーである東海村から脱出する必要性を序盤に丁寧に描くからこそ、女子高生が大麻栽培に手を染めるという突拍子もない話しが説得力を持つ。そしてそのブレイクスルーを経て、やっと彼女たちの青春が始まる。映像も陽の光が明るく、多幸感に溢れる。
因果応報なんて信じない、と彼女たちはいう。しかしこの映画を観ている誰もが因果応報により、よくない結末を迎えることを予感している。もちろん、大筋ではそういう展開になっていくのではあるが、ここでも予想を裏切る。決してステレオタイプではない展開。ただでは転ばない。
そして驚愕のクライマックスを迎える。最高にぶっ飛んだシーン。今年のベストシーンになるかもしれない。心の中で雄叫びをあげガッツポーズだ。
ラストのラスト、エンドロールに入るまで常識を覆す演出。この映画、終始、世界に対して中指を立て続けている。まさにヒップホップだ。なんて最高の映画だろう。オレもやってやるぜ!という気にさせてくれた。この映画に携わったすべてのひとに感謝!