カーズ : 映画評論・批評
2006年6月27日更新
2006年7月1日より日比谷スカラ座ほか全国東宝洋画系にてロードショー
もう少し短くすれば、傑作になったかも
意外に思われるかもしれないが、ピクサーという会社はCG技術に対しかなり保守的で、ドリームワークス・アニメーションなどライバル会社の遥か後方を走っていた。しかし今回、7年ぶりのジョン・ラセター監督作品とあってか、社のプライドを賭けた懸命の技術的追い上げが見られる。特に光の表現が見事で、朝、日中、夜間など、時間帯による色彩の違いまでリアルに描き分けられ、まるで空気がそこに存在しているかのよう。また背景となるアメリカの雄大な景色は、岩山、森林、路面のアスファルトなど、ディテールの細かさも相まって、キャラクターがいなければほとんど実写にしか見えないだろう。そのキャラクターたちも、最近の塗装、昔の塗装、ラメ入り塗装、ボロボロにサビた車など、微妙な表面質感の違いまで完璧に描かれている。
しかし2時間もの間、ずっと擬人化された車に感情移入し続けるのは、かなり疲れたというのも正直な感想だ。レースやアメリカの自動車文化の知識がないと分かりにくい描写や、少々クドイと思われる場面もある。最初からディレクターズ・カット版を見せられたような感じで、もう少し短く刈り込んでいったら、傑作になったような気がするのが多少残念だ。
(大口孝之)