セプテンバー5

劇場公開日:

解説・あらすじ

1972年のミュンヘンオリンピックで起きたパレスチナ武装組織によるイスラエル選手団の人質テロ事件の顛末を、事件を生中継したテレビクルーたちの視点から映画化したサスペンスドラマ。「HELL」のティム・フェールバウムが監督・脚本を手がけ、報道の自由、事件当事者の人権、報道がもたらす結果の責任など現代社会にも通じる問題提起を盛り込みながら緊迫感たっぷりに描く。

1972年9月5日。ミュンヘンオリンピックの選手村で、パレスチナ武装組織「黒い九月」がイスラエル選手団を人質に立てこもる事件が発生した。そのテレビ中継を担ったのは、ニュース番組とは無縁であるスポーツ番組の放送クルーたちだった。エスカレートするテロリストの要求、錯綜する情報、機能しない現地警察。全世界が固唾を飲んで事件の行方を見守るなか、テロリストが定めた交渉期限は刻一刻と近づき、中継チームは極限状況で選択を迫られる。

出演は「ニュースの天才」のピーター・サースガード、「パスト ライブス 再会」のジョン・マガロ、「ありふれた教室」のレオニー・ベネシュ。第82回ゴールデングローブ賞の作品賞(ドラマ部門)ノミネート、第97回アカデミー賞の脚本賞ノミネート。

2024年製作/95分/G/ドイツ・アメリカ合作
原題または英題:September 5
配給:東和ピクチャーズ
劇場公開日:2025年2月14日

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第82回 ゴールデングローブ賞(2025年)

ノミネート

最優秀作品賞(ドラマ)  
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映画レビュー

4.0自分も放送クルーのひとりになったかのような没入感

2025年2月21日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

知的

オリンピックの理念は『スポーツを通して心と体を健全にし、国や文化の違いを超え、友情とフェアプレーの精神でお互いを理解し、世界平和に貢献する』こと。

けれど世界的な祭典ということもあり、悲しいことに理念を反して政治的な利用をされてしまう現実もある。このミュンヘンオリンピックでの悲劇もそのひとつだった。
純粋にオリンピックで夢を叶えるために、努力を続けた選手とそれを支えたコーチが犠牲となることの、理不尽さや無力感といったらない。

この作品では、突如起こったこの事件を、本来はスポーツのみを取り扱っているはずのABCの放送クルーたちが、歴史的生中継をする様子を、事件の始まりから終わりまでノンストップで追体験できる。

様々なドキュメンタリー番組で見てきたミュンヘンオリンピックの悲劇。実際の映像を交えながら、あの時放送クルーたちがどんな決断を迫られ、判断をして、動いたのかがわかるだけでもとても興味深かった。それと同時に自分もあの場のひとりになったかのような没入感で、あっという間の91分だった。

慣れてないからこそのミスや、この事件を届けなければという使命感や責任感から、報道や言論の自由は果たしてどこまでなのかという問題もあると思う。安全圏にいるからこその、スクープを誰よりも早く撮ってやる邪な気持ちも無かったわけではないと思う。
けれど、あの場にいた誰もが人質の解放を願っていて、それをいち早く世界に届けたいと思っていたに違いない。

最後の結末は知っているのに、見終わった後は喪失感と無力感が襲ってくる作品だが、一見の価値はある作品だった。

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共感した! 9件)
AZU

4.0前代未聞の報道で浮き彫りになる情報拡散のリスク

2025年2月15日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館
ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする 4件)
共感した! 38件)
ニコ

4.5ドキュメンタリータッチの実録劇映画の大成功例

2025年3月31日
PCから投稿

ケヴィン・マクドナルド監督のドキュメンタリー『ブラックセプテンバー ミュンヘン・テロ事件の真実』やスピルバーグの『ミュンヘン』でも描かれたテロ事件を、衛星中継で報道したアメリカのTVクルーの目線から描く。情報が入らず全貌がまったく見えない中、とにかく報道を続けようと奮闘する姿が映し出されるのだが、ときに調査報道の鑑であり、ときに視聴率優先の見世物であり、ときにエキサイティングな報道合戦であり、また、第二次大戦で敗戦したドイツ側の複雑な事情も見え隠れする。かなり要素の多い作品ながら、報道スタジオを中心に据えることで、わちゃくちゃになることなく、事件の推移に引き込まれていく。とにかくお仕事映画として非常によくできていて、なおかつ報道の功罪をさらりと感じさせるバランスの良さに舌を巻いた。実録ノンフィクション映画のお手本のような作品。

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村山章

3.5スクープ欲求の原罪

2025年4月22日
PCから投稿

悲しい

怖い

 ミュンヘン五輪でのテロ「黒い九月事件」は、Spielberg監督が後日談を中心に映画化(Munich, 2005)していたり、しばしば報道番組でも振り返られる近代史であり、事件のあらましは知ってます。 ただ、その現場を世界に向けて中継したABCクルーの目線からは新鮮。緊迫感も十分再現されていて、見応えある映画でした。テロリストも中継映像を観ていた事で、事態が悪化した可能性はあるものの、地元警察にも対応も甘く、その功罪は微妙。ただ、後半描かれたスクープ(速報)のあり方は、現在の週刊誌報道やSNS運用に通じる原罪を感じました。
(史実だけど、これ以降ネタちょいバレ)
 噂段階でも、事件の解決の吉報は速報したいもの。ましてや地元の公共放送ZDFが生放送で伝えていれば、信じるのも仕方ない。しかし、それがドイツ政府が国民向けに騙らせた希望的観測?プロパガンダ?に過ぎず、その時点ではテロリストとの攻防がまだ続いていたばかりか、最終的に悲劇を迎えた事実を知った脱力感は半端ない。ドイツ政府に嘘を付かれた状況で、正しい裏取りは困難でスクープを決断したABCを責めたくはない。ただ、自分達だけが握っている情報を、誰よりも早く速報して、スクープを称賛されたいという欲求そのものに在る「原罪」は否定しがたい。
 ABCが誤報したとて、テロリストを有利する効果はない。誤報がなければ、人質が助かったわけでもないだろう。ただ、人質家族を無駄に糠喜びさせてしまたろう。ドイツ政府の思惑にまんまと騙された事も、報道としては屈辱的敗北。吉報であってお、スクープに逸らずウラを取る慎重さは重要。フジTVのガバナンスの弱さは、週刊誌やSNSが憶測段階で騒いだことで明らかになった面もある。ただ、加害者の擁護者が不確かな言動で被害者を中傷したり、被害者の女性上司を必要以上に非難された事実もあり、報道を受容する一般人も自身のSNS運用を顧みるべきでしょう。

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LittleTitan