まる

劇場公開日:

まる

解説・あらすじ

「かもめ食堂」「彼らが本気で編むときは、」の荻上直子が監督・脚本を手がけ、堂本剛が27年ぶりに映画単独主演を務めた奇想天外なドラマ。

美大を卒業したもののアートで成功できず、人気現代美術家のアシスタントとして働く沢田。独立する気力さえも失い、言われたことを淡々とこなすだけの日々を過ごしていた。そんなある日、彼は通勤途中の雨の坂道で自転車事故に遭い、右腕にケガをしたために職を失ってしまう。部屋に帰ると、床には1匹の蟻がいた。その蟻に導かれるように描いた○(まる)が知らぬ間にSNSで拡散され、彼は正体不明のアーティスト「さわだ」として一躍有名人に。社会現象を巻き起こして誰もが知る存在となる「さわだ」だったが、徐々に○にとらわれ始め……。

沢田の隣人で売れない漫画家の横山を綾野剛、沢田と同じく美術家のアシスタントとして働く矢島を吉岡里帆、コンビニ店員・モーを森崎ウィン、ギャラリーオーナーの若草萌子を小林聡美が演じる。堂本が「.ENDRECHERI./堂本剛」として音楽を担当。

2024年製作/117分/G/日本
配給:アスミック・エース
劇場公開日:2024年10月18日

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映画レビュー

4.0あなたの人生に突然訪れるかもしれない「幸運?」とそれに群がるクセ強な人たちのお話

2024年10月19日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

大好きな「かもめ食堂」「川っぺりムコリッタ」の荻上直子監督の作品とあって、本日は映画「まる」を鑑賞。

主演は堂本剛くん、久しぶりのスクリーンで少し謎なキャスティングに思えましたが、映画を観終わってなるほど納得なキャスティングでございました。音楽も担当してたんやね。エンドロールの「街」いい歌ですよね。また脇を固めた個性豊かな隣人たちは、みなさん流石の演技でした。主人公沢田の淡々とした性格との対比が際立って映画を生き生きとさせていました。

私の気になったオススメ
クセキャラベスト3は、

1.やっぱり、片桐はいりさん
そこにいるだけで、もう面白い。抜群の存在感でクセキャラNo.1。

2.綾野剛さん
こういうすごく嫌だけど、なぜか憎めないヤツやらせたらNo.1。穴の向こうの演技で魅せる天才。

3.甲乙つけ難いほどみな同率だけど、久しぶりに観れて嬉しかったよNo.1で、小林聡美さんかな。

ストーリーはすごく好きで、本当は星4.5とか5にしたかった。星マイナス0.5したのは、ラストの沢田の見せ場に私の気持ちが残念ながら乗らなかった…。みんなは、あそこで感動できたのかな?私は、穴の奥から見える綾野剛さんの演技にばかり気を取られてしまいました。あれだけの可視部分で魅せられるって、すごい役者さんだなぁと感心しました。

私のグッとポイントは、
クセの強い、サブキャラたちの中でひときわ普通のいい人で際立っていた森崎ウィンくん演じるベトナム人のコンビニ定員の終盤のひと言。沢田が、「おまえほんまポジティブやな。」の答えに注目です。いい人あるあるで切ない。応援したくなる。いつか沢田の書いてあげた色紙がめちゃくちゃ価値があがったとしても、彼は売ったりしない、根っからいい人なんでしょう。

久しぶりにスクリーンで観た、片桐はいりさんや小林聡美さんもグッとポイントですな。帰って「めがね」や「やっぱり猫が好き」が見返したくなりました。

荻上直子監督が描く、少し奇妙でクセのある人たちが織りなすとびきりシュールで不思議な世界観が私は大好きです。誰もが簡単にアーティストを名乗り情報を発信できる昨今だからこそ、何が?いつ?どこでバズるか分からない。ひとバズりで人生変わっちゃう人だって少なからずいるでしょう。
そう思うと、まだこれからの人生、全く関係のない話ではない、かもしれない…🙄

もし、この先の人生
自分が主人公の立場になったなら?
あなたはどう立ち振る舞いますか?

もし、この先の人生
自分の周りに沢田が登場したら?
あなたはどのクセキャラに扮したいですか?

帰りの電車を待ちながら、
ふとそんなことを思いました。

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共感した! 20件)
ななやお

4.0不遇の

2025年6月5日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

知的

癒される

氷河期世代と日常的によく見る光景。あれ?といちいち気持ちを寄せていたのでは自分がもたない。ジタバタしたりいっぷくしたり。巨大な円の大きな渦に飲み込まれてはいないかしら、、、? ゆったりときにチクチクしながら丁寧なお点前を頂戴しました。福徳円満。円満具足。底辺×高さ÷2も意味深。ズレがあるから風が吹き四季が巡る。とはいえ格差に搾取はいただけない。地震や滅亡の元ではみな平等だけれど欲で目が曇っていては美しさには気づけない。ふと立ち止まれば健気な蟻。わたしは、、働くとするか、剛☓剛!

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共感した! 1件)
she'lly

3.0片桐はいりは帽子とサングラスでずっと顔が隠れてれているので誰なのかわからない。 小林聡美がいると画面がきりっと締まる気がする。 この映画は荻上直子監督作品としては出来はよくない気はする。

2025年5月25日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

楽しい

動画配信で映画「まる」を見た。

2024年製作/117分/G/日本
配給:アスミック・エース
劇場公開日:2024年10月18日

堂本剛(沢⽥)
綾野剛(横山)
吉岡里帆(矢島)
森崎ウィン(モー)
小林聡美(若草萌子)
戸塚純貴
おいでやす小田
濱田マリ
早乙女太一
片桐はいり
吉田鋼太郎
柄本明

荻上直子監督と言えば、
川っぺりムコリッタ
めがね
かもめ食堂
がよかった。
どれも好きな作品である。

予備知識なしで見始める。

知っているのは監督が荻上直子、主演が堂本剛ということだけ。

沢⽥は人気現代美術家秋元のアシスタントを2年半やっている。

秋元は高圧的で嫌な男で、吉田鋼太郎のキャスティングがぴったりはまっていると思った。

矢島もアシスタントの一人であるが、沢田に対して言い放つ、

「私たちは(秋元に)搾取されている!安い時給で!」

いつもおとなしめの役の吉岡里帆だが顔にピアスをいくつもつけていて、
いつもとは雰囲気が違うと思った。

沢田は感情の起伏がほとんどない男だ。

矢島にそう言われてみてもほとんど心は動かない。

後日、沢⽥は自転車で転んで利き腕を骨折してしまう。

秋元は沢田を即刻解雇するのであった。

仕事がなく途方にくれる沢田。

部屋に帰ると蟻が1匹いる。

その蟻を見ながらなんとなく紙に書いた〇(まる)。

金がない沢田はそれを画廊に持ち込む。

「金が欲しい!」

それが現実になる。

誰にでも書けるような〇(まる)が知らぬ間にXやインスタグラムで拡散され、
沢田は正体不明のアーティスト「さわだ」として一躍有名になってしまう。

最初に書いた〇(まる)は250万円で売れたという。

117分の上映時間のうち前半はあまり面白くない。

しかし沢田が有名人になってからはいろいろなことが動き出す。

綾野剛がうっとしい、うざい沢田の隣人を演じている。

森崎ウィンがミャンマー人のコンビニのアルバイトとかそのまんまで面白い。

片桐はいりは帽子とサングラスでずっと顔が隠れてれているので誰なのかわからない。

小林聡美がいると画面がきりっと締まる気がする。

この映画は荻上直子監督作品としては出来はよくない気はする。

満足度は5点満点で3点☆☆☆です。

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ドン・チャック

4.5現代社会を象徴

2025年4月20日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

非情に象徴的な作品
すべての登場人物がとても奇特に描かれている。
そこに解釈の筋道を描いているのがコンビニのバイト仲間のミヤンマー人だろうか。
この作品に描かれているのが現代における人間社会だろう。
主人公の沢田は絵が好きなだけで自分をアーティストとは考えておらず、どちらかと言えばボーっと生きているような人物。
彼は自転車事故で利き腕を骨折したことで仕事を失った。
アーティスト秋元の工房
秋元は沢田に対し無価値を宣告した。
自分の価値など考えてもいなかった沢田は、おそらく初めて価値という概念を肌で感じたのだろう。
価値とはそもそも自分自身の中にあるものかもしれないが、それは他人が勝手に付けているものでもある。
この作品のテーマはこの「価値」なのだろう。
先生と呼ばれている謎の人物
彼は公園で鯉にパンを与えていた。
そこに登場した「先生」と叫ぶ付き人のような人の言葉で、沢田は彼を先生と呼び始める。
ここにもある種の「価値」が登場している。
誰かが言った先生という言葉は、自分にとって特段意味のない人間を途端に先生に変えてしまう。
その人が何者なのかなどどうでもいい。
しかしながらこの先生は、沢田に不思議な言葉をいう。
日付と起きた出来事 「次は31日だそうです」
そして円周率 無限なまでに数字が続く。
これが数学的に「真円」が存在しない理由とされている。
この存在しないものを、人は信じているということを言いたいのだろうか?
円相
人は、手書きされた円相の中に何を見るのか?
怪しい男「つちや」
黒い名刺に「つちや」という文字と₊906-という怪しい携帯番号
彼は自分を「手品のできない手品師」だという。
おそらく彼は、価値のないものに価値を付ける男なのだろう。
誰かが言う言葉 それに釣られて動く人々
アイドルと同じような構造 初めて見る「宝石」という名の石と同じ。
沢田の書いた円相は、無意識にアリを閉じ込めるように書いただけの円だった。
確かにそこにあったのは無欲だったかもしれない。
生活費に困った挙句に母の店に持っていっただけのもの。
欲は、他人にはよく見えるのだろう。
無欲についた価値、つけた価値という概念は、非常に興味深いものを感じた。
やはり芸術とは嘘がないことを言うのだろう。
無価値だった沢田は、時の人となると同時に掌返しをする人々がいるもまた、現代社会を象徴している。
さて、
秋元の工房で同僚だった女性矢島は何者だろうか?
彼女は沢田に「秋元に利用されているだけ」だという。
彼女はいつまで経っても社会に搾取され続けていると思っている人々の代表だろう。
昨今海外で話題となった環境保護団体の行為と似ている。
彼女は眼鏡のポーズをとる。
それは彼女の見ている世界というのか、彼女の視点で物事を常に見ていますというような宣言だろうか?
非常に批判的であり「OOねばならない」という思想に満ちているようだ。
いつまで経っても評価されない彼女らは、環境保護団体のように突然価値の付いた沢田の画を攻撃対象にした。
この行為は京アニ事件とも似ているように感じた。
これもまたこの社会の一部であるのは間違いない。
さて、、
自分自身が感じられない自分の価値を、他人が仕掛けてつけるという行為。
それが「つちや」の娘が言った「私はあの人のペットなの」という言葉に現れている。
価値を感じられない自分に価値を付けてくれる人の言いなりになるのもまた、この社会の在り方の一部だろう。
この作品は非常に哲学的でもある。
最後に、何故か交通誘導のバイトをしていた先生は、三角表示板を持ちながら沢田に言った。
「底辺×高さ÷2 割る2だ」
この言葉もまた人間社会を表現しているのだろう。
自分がこの社会の底辺にいると思っていても、実際にはその半分で平均的に生きているのだと言いたいのだろう。
ミヤンマー人のバイト仲間は沢田のことを見て仏教用語を使って表現していたのは、この物語を仏教視点で見てほしいからだろう。
特に鳥の話の中で「そう思わないとやっていけない」という言葉がそれを象徴していた。
しかし、
あの先生とはいったい何者だろう?
「次は23日だ」
地震が起きる日を当ててしまう。
最初に沢田が先生と会ったとき「次は31日だそうです」という。
この日は沢田が矢島のデモを見かけた日だった。
これは沢田の中に新しい視点を作った。
沢田に起きゆく変化の出来事
資本主義に対する反旗 何も考えていなかった自分 画家としての自分と社会との関係…
少々わかりにくかったが、これは沢田の中に起きた変化だろう。
地震という物理現象も、やはり変化の兆しだろう。
そして「アリ」
隣人ヨコヤマ 「2割のアリはさぼっている」
そこに感じる無価値だが、その無価値があるからこそ価値を探す8割がいる。
この「価値」に対する概念
主人公が冒頭から口ずさむ「平家物語」
おぼろげながらも沢田は、最初から自分に葛藤を持っていることが伺える。
平家の繁栄と没落を描いた平家物語は、この現代社会が大きく変わろうとしていることを表現していると解釈した。
先生はそこに加わって先を見通している。
ヨコヤマの人類滅亡論もまた同じで、当然デモを繰り広げている矢島も同じだ。
いまこの現代会の在り方は大きく変化しようとしているのかもしれない。
沢田が眠れなかったのは、アパートの傾斜や隣人の物音などの要因もあるのだろうが、実際には彼自身が感じていた「このままでいいのだろうか」という漠然とした疑問だろう。
この社会に対しデモという行動を起こした矢島
働かない無価値なアリを自分に例えて苦しむヨコヤマ
偽物のの「まる」 偽物の「さわだ」 なんでもそうなってしまう現代社会
寿司とは、金持ちのモチーフ
このような細かいモチーフを絡めながら、この作品は変化する「いま」を描いている。
哲学的で象徴しかない作品だが、この現代社会の「いま」の地点を上手に表現していた。
なかなか凄い作品だった。

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