まる

劇場公開日:2024年10月18日

まる

解説・あらすじ

「かもめ食堂」「彼らが本気で編むときは、」の荻上直子が監督・脚本を手がけ、堂本剛が27年ぶりに映画単独主演を務めた奇想天外なドラマ。

美大を卒業したもののアートで成功できず、人気現代美術家のアシスタントとして働く沢田。独立する気力さえも失い、言われたことを淡々とこなすだけの日々を過ごしていた。そんなある日、彼は通勤途中の雨の坂道で自転車事故に遭い、右腕にケガをしたために職を失ってしまう。部屋に帰ると、床には1匹の蟻がいた。その蟻に導かれるように描いた○(まる)が知らぬ間にSNSで拡散され、彼は正体不明のアーティスト「さわだ」として一躍有名人に。社会現象を巻き起こして誰もが知る存在となる「さわだ」だったが、徐々に○にとらわれ始め……。

沢田の隣人で売れない漫画家の横山を綾野剛、沢田と同じく美術家のアシスタントとして働く矢島を吉岡里帆、コンビニ店員・モーを森崎ウィン、ギャラリーオーナーの若草萌子を小林聡美が演じる。堂本が「.ENDRECHERI./堂本剛」として音楽を担当。

2024年製作/117分/G/日本
配給:アスミック・エース
劇場公開日:2024年10月18日

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映画レビュー

4.0 あなたの人生に突然訪れるかもしれない「幸運?」とそれに群がるクセ強な人たちのお話

2024年10月19日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

大好きな「かもめ食堂」「川っぺりムコリッタ」の荻上直子監督の作品とあって、本日は映画「まる」を鑑賞。

主演は堂本剛くん、久しぶりのスクリーンで少し謎なキャスティングに思えましたが、映画を観終わってなるほど納得なキャスティングでございました。音楽も担当してたんやね。エンドロールの「街」いい歌ですよね。また脇を固めた個性豊かな隣人たちは、みなさん流石の演技でした。主人公沢田の淡々とした性格との対比が際立って映画を生き生きとさせていました。

私の気になったオススメ
クセキャラベスト3は、

1.やっぱり、片桐はいりさん
そこにいるだけで、もう面白い。抜群の存在感でクセキャラNo.1。

2.綾野剛さん
こういうすごく嫌だけど、なぜか憎めないヤツやらせたらNo.1。穴の向こうの演技で魅せる天才。

3.甲乙つけ難いほどみな同率だけど、久しぶりに観れて嬉しかったよNo.1で、小林聡美さんかな。

ストーリーはすごく好きで、本当は星4.5とか5にしたかった。星マイナス0.5したのは、ラストの沢田の見せ場に私の気持ちが残念ながら乗らなかった…。みんなは、あそこで感動できたのかな?私は、穴の奥から見える綾野剛さんの演技にばかり気を取られてしまいました。あれだけの可視部分で魅せられるって、すごい役者さんだなぁと感心しました。

私のグッとポイントは、
クセの強い、サブキャラたちの中でひときわ普通のいい人で際立っていた森崎ウィンくん演じるベトナム人のコンビニ定員の終盤のひと言。沢田が、「おまえほんまポジティブやな。」の答えに注目です。いい人あるあるで切ない。応援したくなる。いつか沢田の書いてあげた色紙がめちゃくちゃ価値があがったとしても、彼は売ったりしない、根っからいい人なんでしょう。

久しぶりにスクリーンで観た、片桐はいりさんや小林聡美さんもグッとポイントですな。帰って「めがね」や「やっぱり猫が好き」が見返したくなりました。

荻上直子監督が描く、少し奇妙でクセのある人たちが織りなすとびきりシュールで不思議な世界観が私は大好きです。誰もが簡単にアーティストを名乗り情報を発信できる昨今だからこそ、何が?いつ?どこでバズるか分からない。ひとバズりで人生変わっちゃう人だって少なからずいるでしょう。
そう思うと、まだこれからの人生、全く関係のない話ではない、かもしれない…🙄

もし、この先の人生
自分が主人公の立場になったなら?
あなたはどう立ち振る舞いますか?

もし、この先の人生
自分の周りに沢田が登場したら?
あなたはどのクセキャラに扮したいですか?

帰りの電車を待ちながら、
ふとそんなことを思いました。

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ななやお

3.0 アートって、こんなものなのかな?

2025年8月29日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

この作品のアートというものの捉え方、描き方、というものには正直、抵抗が
ありますね。優れたアートと呼ばれてるものには、やっぱり力があると感じる
ことが多いし、他とは違うと思う。ヘタウマと言われるものも含めて。

それは、置いといて、私はこの監督の作品が好きなんですが、前作から、
なんか作風が変わりましたね。今までの路線はもういいから、チャレンジ
ということなんですかね。あの独特の世界観が好きだったのにな。

あと個人的には、主演は他の人の方が良かったような気がします。
かつて大人気だったアイドルでしょ。変なことはさせられない、
みたいなな気遣いみたいなものを感じてしまって。
ひょっとしたら、堂本剛さんありきで作った映画なのかな。
そのあたりが残念ですね。

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tochi06

3.0 芸術って何ぞや…?

2025年8月4日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

笑える

楽しい

知的

スローライフから抜け出して、近年はトランスジェンダー題材や初のシリアス作など意欲的な作品続く荻上直子監督。
今回はアートに挑戦。
しかし、勿論この監督。風変わりな画を。

美大を卒業したものの一向に芽が出ず、40を過ぎても著名美術家のアシスタントで食い繋ぐ日々の沢田。さらには自転車で事故に遭って片腕を折ってしまい、アシスタントの仕事はクビ。コンビニでバイトを始める。
全くうだつの上がらないある日、部屋に紛れ込んだ蟻に誘われるようにして“○”を描く。
古物屋で金にもならん程度で売ったその“○”が、いつしかSNSや世界や本人の知らぬ所で大バズり。
“○”と謎のアーティスト“さわだ”が世間を賑わす中、当の沢田本人は…。

“○”なんて誰でも書けるやん!
ただの“○”ではなく、本作に於いての“○”は“円相”。初めて聞いた言葉…。
禅の書画の一つで、この“○”で宇宙や真理や仏教や悟りを表しているという。
終わりも無く始まりも無く、何ものにも囚われず心の解放も表しているという。
つまりは、人によって何を感じるか、どう解釈するか。
たかが“○”。されど“○”。

世間の人々はこの“○”に癒しや救いを求めて…。
一方では美術の冒涜だと批判。
一枚100万円以上で売買。さすがに欲がある沢田、世間に名乗り出る。
すると群がってくるエゴい奴ら。謎の商人、有名画商のギャラリー、ウザイ隣人、クビにした著名美術家は“私が育てた”なんてホラを吹き…。
欲が出てから“○”を描くといい“○”が描けない。
無心に返るといい“○”が描ける。
世間も沢田も“○”に取り憑かれ…。“○”を求められ、他の画が評価されず…。

何と! これが映画単独主演27年ぶりだという堂本剛。『金田一少年の事件簿』を27年前、劇場で観ました。
掴み所の無い脱力感。戸惑いや悶々、芸術への向き合い、何かを見出だしていく。根はいい人なんだと思わせる好演。
いい感じでウザイ隣人、綾野剛。
真の芸術を推奨する、吉岡里帆。
今回はヤな奴の吉田鋼太郎。
何者? 柄本明。
荻上作品の常連、小林聡美と片桐はいりは期待どおりの個性。
キャストの中でとりわけ愛すべきは、バイト先の外国人同僚役の森崎ウィン。外国人故受けてきた差別偏見を滲ませながら、あなたの気の良さ、優しさ、金言は悟りのよう。

人物描写などに荻上監督らしいゆるいユーモアやシュールさを感じ受けるが、皮肉や風刺も効いている。
謎のアーティスト。実際にいるね。天才か、世間騒がしか…?
全く見向きもされなかったのに、突然評価が一変。
何が変わった…? 何が変えた…?
確か『コンフィデンスマンJP』で言っていた。世の中で評価されている絵画や骨董なんて誰かが何処かのタイミングで価値を付けただけ。それが後世に高値で称えられている。
もし、ピカソの画を誰かが見出だしてなかったら…?
もし、沢田の“○”を誰かが見出だしてなかったら…?
価値って何…?
評価って何…?

つまらなくはなかったけど、かと言って好みかと言われたら…?
私の荻上作品ベストは『彼らが本気で編むときは、』。
好きな人は好き。合わない人には合わない。
あたかも芸術作品のよう。分かる人には分かる。分からない人には分からない。
荻上監督は本当に芸術作品を創り上げたのか…? それとも…?

芸術って何ぞや…?

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近大

3.5  一見冴えない人たちの内面に潜む光る原石

2025年8月4日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

斬新

「役に立たないとだめなんですかね」
 主人公の沢田の言葉が気になった。「社会貢献」とか「人に寄り添い、人のためになる」という言葉が、メディアに溢れ、自分のことで精一杯の人間は、なにかと居心地が悪い。人それぞれ様々な事情があり、みんながみんな「世のため人のため」というわけにはいかない。最低限人に迷惑をかければそれでよし、という生き方だってある。
 人には干渉しない。だから自分も干渉されたくない。それも一つの生き方。だから文句も言わないし、文句も言われたくない。
 そんなアート志望、でもとりあえず食うためにコンビニのバイトをしている沢田。そして、漫画家になって人のためになりたいと願いながら、言ってることとやっていることがちぐはぐな横山。この堂本剛、綾野剛のコンビが、本作の肝。
 一見冴えない人たちの内面に潜む光る原石。その原石が光っている様はなかなか見ることはできない。そのもどかしさを、萩上直子はいつも優しく表現してくれる。
 今回は、ただ墨汁で〇と書いたようにしか見えないアートによって。

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ジョー