ビューティフル・マインド : 映画評論・批評
2002年3月15日更新
2002年3月30日より日比谷スカラ座ほか全国東宝洋画系にてロードショー
この世界は天才の目にどのように映るのか
この映画の主人公ナッシュは、「ゲーム理論」の発明者として1994年にノーベル経済学賞に輝いた数学の天才。だけど、神様は公平というわけか、僕たちだけじゃなく天才の人生だって本人の思い通りに進まないようだ。
天才には凡人に見えないものが見えてしまう。それが独創的な新理論や暗号の解だけならいいけど、諸々の幻影が現実の人間と対等の資格でナッシュの前に出現し、彼の人生に複雑な影を落とす。さて、ナッシュは精神分裂病(と僕たちが呼ぶ症状)といかに付き合い、波乱の人生を全うさせるのか……。
天才と狂人は紙一重だと言われるし、そうした存在を描く映画だってある。「レインマン」でダスティン・ホフマンが演じた人物なんかそうだ。で、そうした天才=狂人は大抵その周囲で生きる一般人の視点から捉えられ、特異な人物とされる。
一方、この映画の斬新さは、通常のパースペクティブを反転させ、この世界が天才=狂人自身の目にどのように映り、生きられていくか……という視点を徹底し、僕たちにその世界を追体験させてくれる点にある。そうした実験に際してロン・ハワード監督が採用するのは、「シックス・センス」を思わせる感動的なアプローチだが、詳しい説明は差し控えよう。スクリーンを前に心ゆくまで涙しよう!
(北小路隆志)