猿の惑星 キングダム : インタビュー
「猿の惑星 キングダム」監督が完全新作の舞台裏を語り尽くす 実写映画「ゼルダの伝説」についても言及
SFの金字塔とも呼ばれる傑作「猿の惑星」。ピエール・ブールによる原作は1963年に発行され、映画版の第一弾は1968年に公開。その衝撃と歴史的ヒットを受け、以後これまでに9作品の映画やビデオゲームなどが製作された、一大フランチャイズだ。この最新作となる「猿の惑星 キングダム」は、2011年に始まった「猿の惑星 創世記(ジェネシス)」からのリブート3作に続く世界観を持つ超大作。本作の監督を務めたウェス・ボールに、製作の裏側について聞いた。(取材・文/よしひろまさみち)
あまりにも光栄な話だと思った。68年の第一弾が公開されたときは、僕はまだ生まれていなかったから、最初に観たのはおそらくVHSかテレビ放映だったと思う。その辺はちょっと曖昧な記憶なんだけど、自由の女神が出てくるあのラストシーンのビジュアルははっきりと覚えていたし、その後続くシリーズ作も当然追っかけていたんだ。これだけ続いている素晴らしいレガシーの一部になるだなんて思ってもみなかったよね。
ただ、不安もあった。それは新しくこの作品を作るとなると、これまでの作品に見合ったストーリーが必要だし、さらに革新的な映像も必要。お金儲けのためだけに続ける新作、ということには絶対にしたくなかったし、シリーズを観ていないと分からないような作品ではなく、独立した一作として楽しんでもらえるものを作らないといけないというプレッシャーがあったんだ。
ふふふ……(笑)。正直全部を見直してはいないんだよね。なんせ9作品もあるし、新しいものを作るにあたって過去作はあまり参考にしないほうがいいと思ったから。純粋にこの世界観のファンとして見直した、というのが正直なところ。
また、原作本はオーディオブック版を散歩しながら聞いたりしてた。それで気づいたのは、じつは「最後の猿の惑星」が原作にちょっと近いところがあったってこと。いろいろ忘れていることに気付かされたよ。
そう。でもパート4ということではないんだ。なぜかっていったら「猿の惑星 創世記(ジェネシス)」からの3作は“シーザー3部作”だから。本でたとえるなら、“シーザー3部作”で一度完結して、この作品が新章の序章にあたるものにすることが大事だった。「猿の惑星」シリーズで育ってきたファンの皆さんにとっても、この作品を新鮮な気分で観てもらいたいし、ここから観るという人には、ノアと一緒にこの世界での発見を共有してもらいたい、と思ってるんだ。
だって、シーザーは民衆を約束の地に連れて行くモーセみたいな存在だからね。神話になるべきキャラクターだし、その存在を消すことはできない。ある種、全く違う視点からシーザーを見ることが必要だったんだ。
それに、神話や伝説っていうものは、現実問題、時間が経つとそのときの人々によって歪められたり、間違って伝えられてしまう、という危険性がある。それが本作の大きなテーマの一つにもなっているんだ。
たしかにそうなんだ。それはそれとして作るのはアリだと思うし、本作で導き出した“神話の変遷”が、どのようにして変わっていったのかを描くことだってできる。
ははは(笑)。キャストやスタッフ、制作陣、スタジオとは今回、非常にいい関係を築けたと思っているから、そうなると嬉しいよね。でも、時間とお金がかかる企画でもあるから、うまいことスケジュールにハマらないと……(笑)
そう。ノヴァをしゃべることができるキャラクターにした最初の作品になるよね。これは脚本のジョシュ(フリードマン)のアイデア。退化して野生に戻った人間、というのが、このシリーズの人間キャラの基本にあるから、68年版以降も何度かしゃべらないノヴァは登場するよね。だけど、そのオリジナル設定のままやるのはちょっとつまらないし、新しい挑戦だとは思えない。だったら、ノヴァがしゃべれるならどうなるか、というアイデアをジョシュが出してきたんだ。
おっと、そこからはネタバレ。
そこ……めちゃくちゃ苦労しました。たとえば、ノアをはじめとするイーグル族。誰と誰が共感していて、誰と誰が家族だ、とか、そういった内面的なところを感じさせるためにも、同じエイプでも個性を持たせないといけなかった。
イーグル族で一番考えさせられたのは、ノアの父のコロかな。エイプのキャラデザインは、どれも実際の動物を観察して生み出したんだけど、コロに関してはかなり苦心したんだよね。威厳があって、ノアとの関係性も特別だったり……ちょい役ではあるけど、一発でそれを感じ取れるデザインにしないといけなかったから。
あと、エイプは全て役者によるパフォーマンスキャプチャーだけど、そのキャプチャーデータも活用してる。だから、100人くらい出てくるエイプのシーンには同じ数の役者がいて、彼らの表情や動きをとりいれているんだ。
これは本当にご縁だったね。本作のプロデュースには、僕が手掛けた「メイズ・ランナー」シリーズのプロデューサーであるジョー・ハートウィック・Jr.がいるんだけど、その一方で制作陣にはアマンダ・シルバーやリック・ジャファなどがいる。アマンダとリックは、『アバター ウェイ・オブ・ウォーター』も手掛けているから、パフォーマンスキャプチャーについてはよく知っていて、僕が本作に関わり始めたときにパフォーマンスキャプチャーの勉強をすることになった。
その最中のことなんだけど、これは神話になったシーザーの話だから、シーザーをやったアンディにも絶対にオッケーがもらいたい、と思ったんだ。だから、アンディにも声をかけることにした。プロデューサー陣が彼のスケジュールを確保してくれて、アラン(ゴティエ)と一緒にモーションの研究をしていた役者たちに会ってくれたんだ。正直これは本当にやってよかったと思えた作業。彼は僕らの仕事をみて「勇気を持ってやれ」と言ってくれたんだ。そんな彼の指導やアドバイス、またはオッケーがあったおかげで、役者やスタッフ、僕ももちろんだけど、自信を持つことができたんだよ。
ランダムにかけてたんだよ。僕のプレイリストにあるサントラをランダムでかけて、そのリズムにのってダンスするように、カットの可能性をみつけていたんだ。でも、いわゆる既存曲ではなくて、オリジナルのスコアもの。僕が大好きなせいか、ランダムでもよくかかっていたのは、ジョン・ウィリアムズと久石譲だった。
(笑)。本当に好きだから大丈夫。
それなら絶対外せないのは「千と千尋の神隠し」。その次に「天空の城ラピュタ」だね。宮崎駿監督の作り出す世界観や物語の設定、ストーリーテリングは本当に好きだけど、この2作に関しては特別だと思ってる。
ごく普通の子どもが、ある日突然別の大きな世界に出て、成長していくっていうのは夢があるよね。しかも、あのビジュアル。そこに住みたいとすら思えるほどだから。これらの影響は僕の深いところに刻み込まれていて、たとえばこの作品のどこそこにインパクトを与えた、っていうピンポイントではなく、全身全霊にとりこんでしまっている、という感じなんだよ。
ははは(笑)。今日は何度もしゃべったけど、何が聞きたい?
もちろん! 80年代育ちだから、ファミコンと一緒に育ったようなもので、「ゼルダの伝説」も大好きなゲームだったんだ。だから、僕が監督にオファーされる前から、「誰かはやくゼルダを映画化してくれ!」って思ってた。それがまさか自分のところに舞い込むなんてのは想像していなかったから、オファーされたときは信じられないの一言だし、夢がかなったって思ってるよ。