デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章

劇場公開日:

デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章

解説

地球外からの侵略者が日常に溶け込んだ世界で青春を謳歌する少女たちの姿を描いた浅野いにおの同名コミックをアニメーション映画化した2部作の前編。

3年前の8月31日、巨大な宇宙船「母艦」が突如として東京に襲来し、世界は終わりを迎えるかに見えた。その後、絶望的な状況は次第に日常に溶け込み、上空に母艦が浮遊する異様な光景が当たり前となっていた。そんな中、女子高生の小山門出と「おんたん」こと中川凰蘭は、担任教師の渡良瀬や仲の良い友人たちとともに何気ない学生生活を送っていたが……。

音楽ユニット「YOASOBI」のボーカル・ikuraとしても活動するシンガーソングライターの幾田りらが門出、歌手やタレントとして若い世代を中心に人気を集めるあのがおんたんの声をそれぞれ演じる。「ぼくらのよあけ」の黒川智之がアニメーションディレクター、「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」シリーズの吉田玲子がシリーズ構成・脚本を手がけ、「地球外少年少女」のProduction +h.がアニメーション制作を担当。

2024年製作/120分/G/日本
配給:ギャガ
劇場公開日:2024年3月22日

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(C)浅野いにお/小学館/DeDeDeDe Committee

映画レビュー

5.0だけど、傘がない

2024年4月22日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

 原作の知識の無い私が映画館に飛び込んで一気見した印象は、やはり井上陽水氏の「傘がない」でしょうか。例え頭上にUFOの母船が滞在していようとも、青春に悩み、青春を謳歌する女子校生達は身近な現実を生きる他は無い。愚かなのでは無く、そうするしか無いのだと思う。でも、井上陽水氏の歌の自殺者よろしく、頭上のUFOもまた、現実的な問題なんです。そして残酷な人類は宇宙人?達を見つけ次第、残酷な仕打ちをしてしまう。UFOをどうにかしなきゃと思っていても、現実的に何が起こっているのか? そうそう、判るものでは無い。しかし、隠しおおせず包み隠せず、最後には大爆発を起こして吹き荒れ、我が身に降りかかってしまう。この前章のラストはそういう理解で良いのかな。
 原作を知らず、頭の回転が回らない私には、助けた宇宙人からタケコプター?やら光学迷彩マント?に念動力スティック?を得て、勧善懲悪に乗り出す下りは、いったい何が起こったのか。正直、話の構成がついて行けない。その辺は後編で全て話が繋がるのだろうか。後編の期待感が止まないのですが、やっぱり頭の回転が回らない私には、原作を読んだり何度も見返さなきゃ理解出来ないかも。
 何より、登場人物達のファニーなルックスが良いですね。失礼ながら美しさ可愛さ色気が無いだけに、いろんな純粋さや不純さが浮き彫りになっているようで、赤裸々な人間の生き様が生き生きと描かれているように見えてくる。宇宙人との話であるだけに、宇宙人視点とも見ることが出来るのでしょうか。違う生物として性欲が違えば、性的魅力を感じない、ということか。
 映像の作り込みも凄いですね。他の映画を引き合いに出すのもよくないけど、今も上映中のソウルフル・ワールドとは違った意味で背景の作り込みが凄い。町中も店内も超リアルなパロディー振り。お好み焼き屋(もんじゃ焼きだったかな)まで協力を仰ぐほどだから、アニメの仕事の徹底ぶりが窺えます。
 そしてエンディングテーマ曲もぶっ飛んでて最高! いやー、楽しかった。

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猿田猿太郎

4.5この国の生きている感覚をみごとに封じ込めた世界観。

2024年3月31日
PCから投稿

原作未読なため、どこまでが浅野いにおのマンガに忠実で、どこまでが吉田玲子の脚色の妙なのか判別がつかないのだが、如実にわかる藤子不二雄や水木しげるの引用から、震災やコロナ禍の暗喩、この国を覆う閉塞感と展望のないモラトリアム感など、日本で生きてきて「あ、知ってる……」と思う感覚をギュギュッと凝縮させたような世界観であり、ひとつひとつの表象が多層的であることに魅入られて、咀嚼できる許容量をはみ出して知恵熱が出て倒れるかとすら思った。斬新、ではないのだが、自分たちが浴びてきたある種のカルチャーの総決算を目の当たりにしているようで、マジで圧倒された。

あのは実写映画『鯨の骨』での演技も素晴らしかったが、幾田りらともども声優としても空恐ろしいくらい完璧に思える。そして2人のコラボ曲でガツンと終わるポップさが、かろうじて息をつかせてくれた気がする。と、手放しで絶賛しつつ、考えたらお話的にはまだ半分なんで、ストーリー全体をどう評価したものかはまだ保留。5月までに原作を読むか、このまま知識ゼロを保持して後半も映画から観るかでアタマを抱えています。映画を待つのが自分的には正解だと思いつつ、気になってしょうがないんですもん。

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村山章

5.0本当はこの世界はどのくらいヤバいのか

2024年3月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ポスト震災、ポストトゥルース時代の青春映画として大変完成度の高い傑作だと思う。世の中では何か大変なことが起きているけど、自分の半径数メートルは平和で、今しか味わえない青春が大事。「本当はこの世界はどれくらいやばいのか」と教師の質問する主人公の思いは、みんなが抱えているけど、普段それを口に出すことはない。なんとなくヤバいとみんな思ってるけど、人は信じたいものしか信じることはないし、気づいていても気づいてないフリ、見ないフリをしてしまう。
日常が突然壊れたとしても、非日常が日常に変わって日々は続いていく。それは不気味なことだと同時に、決して悪いことばかりでもない。そうしないと人間は生きていけない。この作品は、危機感を持てないことへのいらだちや諦観だけじゃない、それでも生きていく人の強さはその鈍感さにこそあるかもしれないと言っているようにも思える。アニメーションの完成度も極めて高いし、主演二人の声はキャラクターのお腹から出ているとしか思えないくらいにハマっている。今年を代表するアニメーション映画の一本だ。

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杉本穂高

4.0日常を覆うSF要素、二人の声が織りなす固い絆に引き込まれた

2024年3月24日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

原作を何も知らないまま本作に飛び込んだが、SF青春劇に思いのほか引き込まれた。主人公の二人は高校生。それこそ自分とは親子ほど歳が離れているものの、私もこの日本で生きる身として、巨大宇宙船飛来とまではいかなくとも、社会が揺れるたび何度となく似たような感覚に陥ってきた気がする。もしかすると前の世代も、これから後の世代も、感じることは同じかもしれない。想像を超えた事態は何の前触れもなく唐突に訪れ、日常を豹変させる。だがその状況下にあっても、高校時代は、青春は続く。彼女らが交わす他愛のない会話、ただ一緒にいるだけで醸し出される安心感が尊い。門出(幾田りら)の落ち着いた基調トーンと、おんたん(あの)がもたらす破天荒な揺さぶり。時に攻守を反転させながら描かれる二人にとっての「絶対」。通常なら青臭く思えるその概念も彼らを見ているとすとんと胸に落ちるのが不思議だ。後編がどう展開するのか非常に楽しみである。

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牛津厚信

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