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今だからこそ話せる!「ブエナ・ビスタ」大ヒットの“裏側”を、シネマライズ支配人が激白

2018年7月19日 13:00

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シネマライズ代表・頼光裕氏(写真右)
シネマライズ代表・頼光裕氏(写真右)
(C)2017 Broad Green Pictures LLC

[映画.com ニュース]キューバの老ミュージシャンたちがバンドを結成し、音楽界の最高峰グラミー賞に輝くなど大ブレイクしていくさまを切り取った名作「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」。同バンドの“アディオス(さよなら)ツアー”を追った「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス」(7月20日公開)の公開を前に、前作の日本での大ヒットを生み出した伝説の映画館シネマライズ代表・頼光裕氏が、映画.comのインタビューに応じた。頼氏は、当時の狂騒ぶりを振り返ると共に、「この映画、ホントうれしいよね。至福の時間がよみがえるよ」と最新作を惜しみなく称賛。裏話を織り交ぜながら、シリーズの魅力を存分に語った。

1986年にオープンし、「アメリ」「トレインスポッティング」「ムトゥ 踊るマハラジャ」など、今では誰もが知る映画を次々と上映し、流行の中心地として確固たる地位を築いたシネマライズ。2016年に惜しまれながら閉館するまで、世界各国の優れた映画を発信し続けた。ロビーの壁には名だたる映画監督や俳優のサインが書かれており、日本の映画ファンにとっては“聖地”の1つといえるだろう。

そのシネマライズのラインナップの中で異彩を放つのが、2000年に公開された「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」。シネマライズだけで興行収入1億8905万超、観客動員11万7333人といった大ヒットを記録し、「何回も入れなくて帰った人もいたし、『なんとか席を取ってくれ』と1番頼まれた映画だった」(頼氏)という。「当時は、サブカルチャーみたいなものにみんながすごく飢えていた。今では当たり前になっているけど、いろんなタイアップも行ったんだ。そのうちの1つのハバナ・クラブ(ラム酒)は、この作品の以前と以降で売り上げが何倍にもなったらしい。(映画のヒットが一因となり、キューバへの直行便が開通し)キューバへの旅行者もぐんと増えたよね。あと、ウチで映画を見たあと、みんながぞろぞろとタワーレコードに行ってCDを買ったり……そういったムーブメントがあって、1つの“伝説”にはなっていたね」。

まさに、映画を超えた“ブーム”が巻き起こっていたことをうかがわせる証言だが、作品自体に特別な輝きがなければ、これほどの社会現象にはならなかっただろう。頼氏自身、「『シネマライズでどうですか?』と言われて試写を見たときに、スクリーンが見られないくらい涙があふれちゃってさ。これはもう俺の独断で、『この映画と心中したい』という思いでこの映画を引き受けることにしたんだ」と作品の“熱”に誰よりも魅了されたひとり。

通常の映画館館主という立場を超えて、チラシのデザインのディレクション、「キューバから届いた至福の音楽、至福の映像、至福の瞬間」というキャッチコピーの立案、パンフレットの色校チェックまで行ったというから驚きだ。「『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』は、“老人”“ラテン”“ドキュメンタリー”という、『映画のヘレン・ケラー』って言われるくらいの三重苦を背負っていた。それをどう(ヒットに)転がしていったかと言う部分も含めて、伝説になっているのかもしれない。当時はラテン音楽はマイナーで、グラミー賞を獲っていてもタワーレコードには平置きされていなくて(笑)。インターネットもまだ普及していないし、『海外で大ヒット!』といってもこういう類の映画が新聞に載るわけじゃない。かといってテレビも難しくてね。ものすごく苦労したのを覚えている」。

尋常ならざる熱意で身命を賭し、現在に至るブームを作り出した頼氏。誰よりも「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」の魅力を知り尽くした頼氏は、最新作を「すごく上手に作っているよね。音楽もそうだけれど、今回は特に『生きざまを見ろ!』という感じだった」と評する。「『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』の公開時も『とにかくああいう爺さんになりたい』といった声はすごくあって。やっぱり、艶(つや)っぽいんだよね」と語りつつ、「本作では、前作ではまったく描かれていなかった部分がわかってビックリしたし、より人間が深く描かれている」とメンバーの魅力を“再発見”したそう。「『日本とキューバ、どちらが幸せなんだろう?』といったことまでも考えさせられたね。前作ではやっていない部分を、すごく描いてくれるから、個人的にはそこがたまらない魅力だった」と顔をほころばせた。

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」の時点で70歳を過ぎていたバンドのメンバーたちが、18年経っても力強く音楽を奏でる姿には、往年のファンならずとも驚かされ、心を動かされるだろう。頼氏の語る彼らの「生きざま」の格好良さは、本作でよりまばゆく、輝きを増している。

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス」は、7月20日から全国順次公開。


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