パルムドール受賞の韓国映画「パラサイト」が大ヒット 2週間で動員60万人超 : 佐藤久理子 Paris, je t'aime

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コラム:佐藤久理子 Paris, je t'aime - 第72回

2019年6月28日更新

パルムドール受賞の韓国映画「パラサイト」が大ヒット 2週間で動員60万人超

パルムドールを受賞した「パラサイト(英題)」 パルムドールを受賞した「パラサイト(英題)」 [拡大画像]

今年のカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞したポン・ジュノパラサイト(英題)」が、フランスで爆発的にヒットしている。6月5日の公開以来、たった2週間で60万人を超える動員を記録したのだ。昨年パルムドールを受賞した「万引き家族」よりも勢いがあり、韓国映画としては過去最高の記録。しかも「X-MEN:ダークフェニックス」や「メン・イン・ブラック インターナショナル」といったハリウッド大作が軒並み公開されている状況での快挙である。

プレスの反響も、カンヌでの絶賛に始まり、カイエ・デュ・シネマ、ポジティフ、リベラシオン、テレラマなど、主要メディアが軒並み5つ星の満点(allocine.fr調べ)を付けている。パルムドールとの相乗効果により、この勢いだと動員100万人を超えるのも夢ではないかもしれない。

「パラサイト」は、全員失業中の貧しい家族のメンバーがブルジョワ家族に仕えることで、まったく接点のない異なる階級の人間たちが触れ合い、そこで予期せぬ問題が勃発する物語。笑いと涙とバイオレンスと風刺を豪快に混ぜ合わせ、力技で見せ切る。

フランスの配給会社The Jokersの代表ジョリー氏は今回の成功を、「『パラサイト』は、作家主義と大衆映画の、完璧な異種交配であり、万人受けするものです。社会に対するメッセージを、悲惨さを強調したり教訓的に描くのではなく、あくまで映画的な演出によって描き出す。そこが批評家にも評価されている点でしょう。たとえばニコラス・ウィンディング・レフンの『ドライヴ』や、パク・チャヌクの『お嬢さん』などもそうですね。演出の並外れたこだわりを維持しながら、とてもエンターテインメントであり、なおかつ現代の空気を反映しているのです」と語っている。

ちなみにこの配給会社は設立からまだ5年の若手。フランスの劇場ブッキングは通常実績がないとかなり厳しく、とくに若い会社の場合、まず作品そのものの判断よりも、「実績を積んでから来い」と言われることが多いという(とはいえブッキングできなければどうやって実績を積むのか?)。ポン・ジュノの場合は、とくに「スノーピアサー」や「オクジャ」などで、すでに監督としてのネームバリューがあるため一概には比較できないが、「パラサイト」の大ヒットはこうした業界の慣習にも揺さぶりをかけるに違いない。

気づいてみれば、フランス映画界でも現在ジャンル映画(いわゆるホラー、スプラッターなどのファンタ系、もしくは奇妙なオフビートコメディやエロティックなコメディなども含まれる)が流行っている。6月に公開を迎えたものだけでも、ベルトラン・ボネロの「Zombi Child」、DJミスター・オイゾことクエンティン・デュピューがジャン・デュジャルダンを起用し、スウェード皮に恋する男を描いた「Le Daim」、人工知能のOSを搭載した「しゃべる冷蔵庫」を描いた若手ブノワ・フォルジュアールの「Yves」がある。もちろん、ジャンル映画だからといってヒットするかといえばそんなことはない。ジャンル映画オタクの輪を超えて広く一般に受け入れられるには、やはりポン・ジュノのようにバランス感覚のある、突出した才能が必要である。

いずれにしろ、「パラサイト」大ヒットの余波で、当分ジャンル映画ブームは続きそうだ。(佐藤久理子)

[筆者紹介]

佐藤久理子

佐藤久理子(さとう・くりこ)。パリ在住。編集者を経て、現在フリージャーナリスト。映画だけでなく、ファッション、アート等の分野でも筆を振るう。「CUT」「キネマ旬報」「ふらんす」などでその活躍を披露している。著書に「映画で歩くパリ」(スペースシャワーネットワーク)。

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