コラム：大高宏雄の映画カルテ　興行の表と裏 - 第2回

映画離れに歯止めを打つ対処策は必須

これに対して、映画界は今のところ成すすべがない。配給、興行側ともに、日々の仕事に明け暮れ、一喜一憂しているに過ぎない。というより、一喜一憂しているのかどうかも定かではないのだ。配給側なら、また次の作品にとりかかる。興行側なら、次から次と回ってくる多くの作品に振り回される。こんなことの繰り返しが、延々と続いている。

映画界の総意として、映画離れ、映画館離れの現状をしかと把握し、その結果を踏まえて、対処の仕方を考える。否、考えるだけではなく、様々な対処策を実践していく時期が来たと言えよう。興収の大幅減とスクリーン数減は、いいきっかけと考えるべきだろう。というより、そう考えないと、何も動きはしない。

では来年の映画興行はどうなるのかとの見通しを立てるなら、やはり東宝を中心に回るだろう。絶対ということはないので、不測の事態が起これば別であるが、それがないならば、そうなると思う。それほど、東宝のラインナップは盤石である。

「ハリポタ」シリーズ終焉で予測不能な時代へと突入

夏の2本、シリーズ4作目の「BRAVE　HEARTS　海猿」と、細田守監督の「おおかみこどもの雨と雲」。定番アニメ含め、いちいち他のタイトルは挙げないが、それぞれの作品の興収アベレージが高くなるポテンシャルは、他社と比べて群を抜いている。今年の東宝は、年間興収でほぼ600億円前後とみられるが、それをどれほど上回ってくるかによって、映画興行全体の動向は決まると言って差し支えない。

洋画は、ディズニーが夏にピクサーの「メリダとおそろしの森」と「アベンジャーズ」。ワーナーが5月に、ティム・バートン監督の「ダークシャドウズ（仮）」、夏にクリストファー・ノーラン監督の「ダークナイト　ライジング」。ソニーが夏に「スパイダーマン」シリーズの4作目などの公開を予定している。これらは、いずれも大きな期待がもたれている作品であり、その成果が予想を下回るようだと、全体の興行に大きな影響が出ることは必至だろう。

今年、アカデミー賞に絡んだ作品で、「英国王のスピーチ」や「ブラック・スワン」といったヒット作が登場したが、その分野にも当然期待はかかる。さらに「ハリポタ」が終わった今年は、このシリーズがこの10年の国内の映画興行を大きく支えてきた時代の終焉でもあろう。邦画も洋画も、異色な作品のヒットがどれほどで出てくるかが、極めて重要な時代になってきた。だからこそ、予測不能な時代に入ったと言えるのである。こうしたことなどを、映画関係者は面白がる必要があると私は思っているのだが、それを詳しく述べていくスペースはすでになくなった。