コラム:OSOREZONE ANNEX by 映画.comホラー映画部 - 第3回
2019年8月22日更新
「夏のホラー秘宝まつり」が今年も開幕直前!前夜祭イベントをレポート
キングレコード主催の夏の恒例行事「夏のホラー秘宝まつり2019」の前夜祭イベントに、ホラー動画専門の動画サイト「OSOREZONE」が飛び入り参加。そこで、上映作品のキャスト・監督が大集合したイベントの模様をレポートします。
今年で6回目を迎える「夏のホラー秘宝まつり」は、観客参加型の映画祭。前夜祭イベントは、東京・新宿ロフトプラスワンで開催され、「怪談新耳袋 殴り込み!」シリーズでおなじみ山口幸彦プロデューサー(キングレコード)のが司会進行を務めました。「夏のホラー秘宝まつり」の目玉のひとつ、観客投票による「ホラー総選挙」で、昨年グランプリに輝いた「怪談新耳Gメン 冒険編」の出演者でもあり、「王者の風格を持ってチャレンジャーたちと話していきたい」とビール片手に闘志を燃やしていました。
筆者がこの日一番楽しみにしていた作品は、バイオレンス群像劇「星に願いを」。ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2019で話題を呼んだと小耳にはさみ、ひと足先に鑑賞したのですが完全にノックアウトされました。暴力性とトランス感と交錯する人間模様のミックスが見事なんです。
本作は、短編映画のワークショップがとん挫し、「それでも作品をつくりたい」と佐々木勝己監督のもとに集まった有志たちが自ら持ち出しで完成させた自主映画。個人的には、「ファイト・クラブ」ミーツ「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」ウィズ日本の下衆と勝手に位置づけていたのですが、佐々木監督の「『デモンズ’95』が本当に好きで、勝手に和製リメイクしたならこの作品」との説明に思わず膝を打ちました。ついでながら、登壇者全員がおそろいで着ていた「星に願いを」Tシャツが、全員悪役の「スーサイド・スクワッド」をイメージしたっていうのもニクい。
佐々木監督は、「マジで殺してやりたいやつの1人や2人、80年生きていると出てくると思うんですよ。リアルで殺すとダメですけど、映画や創作の中では殺してもいい。その怨念返しを込めた映画なのでぜひ見てほしいです」。さらに「映画をつくるのは我々ですけど、映画を育てるのは映画を見てくれるお客様の力。今後、我々以外の若手監督や出番を待っている役者さんたちの活躍する機会ができるので、1本と言わず全部見てください」熱弁をふるいました。
一方、“ディフェンディング・チャンピオン”の新作「怪談新耳袋Gメン 孤島編」では、出演者の後藤剛さん、谷口恒平監督、マスコットの市松人形はちに加え、サプライズゲストで「怪談新耳袋」の原作者・木原浩勝さんも飛び入り参加。
2泊3日の撮影期間中、ロケ地のO島は5メートル先すら見えない悪天候で「嵐だと心霊現象は撮りづらい」とボヤいた山口さん。しかし、「怪奇現象は撮れたんですか?」という木原さんの問いかけに対して、谷口監督は「はい!」と自信満々。心霊マニアの皆さん、これは劇場で目撃するしかありませんよ。
さらに谷口監督は、「大学時代に一緒に映画をつくってきた佐藤(周)監督、佐々木監督と戦えるのが感慨深い」とコメント。同世代の監督たちの個性や成長ぶりを一度に見られるって、映画祭ならではの醍醐味ですね。
これに対して、優勝者チームから離脱した佐藤周監督は、自身のオリジナル作品「シオリノインム」で元チームメイトたちに殴り込みをかけます。予告編の最後、全身にモザイクがほどこされた人物が映し出されると、観客の皆さんの反応はどよめきと爆笑で真っ二つに。「女性が幽霊に犯される」という映画の内容以上の衝撃をもたらしました。
そんな衝撃のエロティックホラー「シオリノインム」の劇中写真を入手! 毎夜、謎の男に抱かれる夢を見るようになり、困惑しつつもその淫夢に陶酔していく主人公の詩織役を演じたのは、2019年度のホラー秘宝ガールの松川千紘さん。本作で初ヌードに挑戦しており、イベントでは親友役の辻凪子さんと一緒に、「したことないけど、興味はあります」(松川)、「やってみたい」(辻)と心霊H話に身を乗り出していました。
「2分に1回エロかホラー」というコンセプトながら、前夜祭イベントでは完全に「エロ」押しだった「シオリノインム」チームですが、佐藤監督は「怖いシーンもあります! ホラー総選挙でグランプリをとりたい」と意気込んでいました。
これからの日本ホラー映画界を背負っていく世代の作品だけでなく、ベテラン勢の作品も一緒に見られるのが同映画祭のいいところ。それが、小中和哉監督、小中千昭脚本の兄弟企画「VAMP」と、森川圭監督の「メイクルーム」シリーズの第3弾「残念なアイドルはゾンビメイクがよく似合う」。
小中組は「ヘマトフィリア(血液耽溺者)」を描く官能ダークファンタジー、森川組はホラー映画の舞台裏のドタバタを描いた、ホラー映画ではないワンシチュエーション劇です。ひと口に「ホラー」と言ってもバラエティ豊かなラインナップで、「ホラーってやっぱり奥が深いなあ」と改めて思ったのでした。
「夏のホラー秘宝まつり2019」では、上記の作品のほか、フレンチホラーのムーブメントをひも解くドキュメンタリー映画「BEYOND BLOOD」、洋画旧作ジョージ・A・ロメロ監督の「ザ・クレイジーズ」、アベル・フェラーラ監督の「ドリラー・キラー」を上映。8月23日から東京・キネカ大森、8月24日から愛知・シネマスコーレ、大阪シアターセブンで開催です。令和最初の夏を、ホラー映画で締めくくりましょう。