コラム:第三の革命 立体3D映画の時代 - 第6回
2010年4月22日更新
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■2D/3D変換を行うプロダクション
現在、この分野に進出する会社も急速に増えている。「スパイアニマル・Gフォース」や「アリス・イン・ワンダーランド」の変換作業をメインで手掛けたのが、連載第2回でも紹介したインスリー社である。同社はDimensionalization(TM)と呼ぶ技術を用いて、「スター・ウォーズ」シリーズの3D変換テストを長年繰り返してきた。これまで不明確なルーカスの態度に振り回されてきたが、3Dブームの到来で俄然注目を浴びている。
「タイタンの戦い」を手掛けたのは、ロサンゼルス、ロンドン、ムンバイに拠点を持つプライム・フォーカス社である。同社は自社の2D/3D変換技術にView-D(TM)というブランドネームを付けている。
「Moomins and the Comet Chase」を担当しているのが、日本のクオリティ エクスペリエンス デザイン社だ。早稲田大学で開発された技術をベースとした起業を支援する、早稲田大学・産学官研究推進センターのインキュベーションセンター内に設立された会社である。これまでに国立科学博物館などで公開された「黄金の都シカン展」の3D映像も手掛けている。
■3D映画を定着させるには
過去の3Dブームの失敗の最大の原因は、優れたコンテンツの不足にあった。そうは言っても、「アバター」クラスの大規模作品をそういくつも作るわけにもいかない。そこで2D/3D変換技術を効果的に用いることで、質の高い3Dコンテンツの安定供給が可能になる。
逆説的に言えば、誰もが名作と認めている旧作がきちんと3Dに変換されれば、それは優れた立体映画になる可能性が高い(もちろん3Dに向いた作品を見極めるのが重要なポイントであるが)。
以前は3D変換に懐疑的だったジェームズ・キャメロンも、最近の技術の進歩には満足しており、「タイタニック」(97)の3Dバージョンも12年公開を目指してテストが進んでいるということである。
さらに劇場作品を、立体テレビ放送や3Dのパッケージソフトにする際にも、2D/3D変換技術が有効に働く。つまり、両眼視差の大きさは画面のサイズと深い関係があり、小さなモニターに合わせて左右の視差を調整してしまうと劇場の大スクリーンでは強過ぎ、逆に映画館に合わせたパラメータではテレビモニターで十分な立体感が得られない。このためメディアに合わせた理想的な視差を、後処理で得るためにこの技術が応用できるわけである。
【参考文献】
「立体映像技術―空間表現メディアの最新動向―」シーエムシー出版(2008)