コラム:FROM HOLLYWOOD CAFE - 第209回
2012年12月18日更新
第209回:J・J・エイブラムスの制作会社「バッド・ロボット」に潜入!
先日、サンタモニカにあるJ・J・エイブラムスの制作会社のバッド・ロボットを訪問した。J・Jのファンになってからずいぶん経つけれど、本拠地に招待されたのは今回がはじめて。オタク趣味丸出しの屋根裏部屋のようなオフィスを勝手に想像していたのだけれど、鉄骨が剥きだしになったモダンなクリエイティブ工房で、おしゃれな空間にゴジラのおもちゃがきれいに配置されているところなんかは、ピクサーとそっくりだった。
訪問の目的は、来年夏公開の「スター・トレック イントゥ・ダークネス」のプレゼンテーションだ。J・Jが自ら解説を務めてくれた未公開フッテージの上映のあとに、VFXや衣装、特殊メイクの担当者に話をきかせてもらった。あいにく情報解禁前なので「スター・トレック」に関することは何も書けないのだけれど、取材後のことなら大丈夫だろう。なんとバッド・ロボットの屋上で、「スター・トレック イントゥ・ダークネス」のキャストと関係者をまじえて、ジャーナリストのためにパーティーが催されたのだ。
僕は役者にまったく興味がないので、クリス・パインやベネディクト・カンバーバッチの間をすり抜けて――ファンの人、ごめんなさい――、デイモン・リンデロフのもとに向かった。リンデロフは、「スター・トレック イントゥ・ダークネス」の脚本家のひとりであり、「プロメテウス」の脚本も手がけているが、僕にとっては「LOST」の最大の立役者である。初対面だったので、「LOST」のおかげで充実した6年間を過ごすことができたと感謝の意を表すと、「それを聞いてうれしいよ。ふだんは逆のことを言われることが多いから」と喜んでくれた。その後、「LOST」の裏話や、ブラッド・バード監督と進めているSF映画「1952」の成り立ち、準備中の新ドラマ「The Leftovers」や、マイケル・アーントが脚本を執筆する新「スター・ウォーズ」に関する考察まで、ビール片手にいろいろ聞かせてもらった。本当はずっと話をしていたかったけれど、立食パーティーであまり長い時間引き留めてしまっては迷惑かもしれないと反省して、泣く泣く引き下がった。
もちろん、パーティーのホストであるJ・Jとも話をさせてもらったけれど、「スター・トレック イントゥ・ダークネス」に関することばかりだったので、その内容はここでは自粛。その後、バッド・ロボット作品のすべてを統括しているプロデューサーのブライアン・バークと会ったら、先日の来日で立ち寄った寿司屋の話になった。その寿司屋とは、アメリカのドキュメンタリー映画「二郎は鮨の夢を見る」の題材となった「すきやばし次郎」だ。このドキュメンタリーは評価が非常に高く、とくに業界人のあいだでファンが多い。予約を取るのが大変な店で知られているが、バーク氏は「二郎は鮨の夢を見る」のプロデューサーを通じて、J・Jと自分の分の席を確保。料理には大満足だったようで、大将の小林二郎氏とお弟子さんたちとの記念写真を得意げに見せてくれた。そういえば、2週間前にニューヨークで参加した「レ・ミゼラブル」のパーティーで会ったヒュー・ジャックマンも、すきやばし次郎にすでに3度も通っていると自慢していた。
とにかく、お酒を飲みながら尊敬する人たちの話を聞くのはとても楽しい。たまには仕事を忘れて浮かれた気分に浸ってもいいですよね?
筆者紹介
小西未来(こにし・みらい)。1971年生まれ。ゴールデングローブ賞を運営するゴールデングローブ協会に所属する、米LA在住のフィルムメイカー/映画ジャーナリスト。「ガール・クレイジー」(ジェン・バンブリィ著)、「ウォールフラワー」(スティーブン・チョボウスキー著)、「ピクサー流マネジメント術 天才集団はいかにしてヒットを生み出してきたのか」(エド・キャットマル著)などの翻訳を担当。2015年に日本酒ドキュメンタリー「カンパイ!世界が恋する日本酒」を監督、16年7月に日本公開された。ブログ「STOLEN MOMENTS」では、最新のハリウッド映画やお気に入りの海外ドラマ、取材の裏話などを紹介。
Twitter:@miraikonishi