コラム:FROM HOLLYWOOD CAFE - 第178回

2012年4月25日更新

FROM HOLLYWOOD CAFE

第178回:“ファンのためのお祭り”「アベンジャーズ」に迫る!

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一足先にアメコミ超大作の「アベンジャーズ(2012)」を鑑賞した。「アベンジャーズ(2012)」とは、アイアンマンやキャプテン・アメリカ、ハルク、ソーらマーベルのスーパーヒーローが結集するオールスター映画で、この夏にアメリカで公開される映画のなかでもっとも期待されている作品のひとつだ。

僕はマーベルのアメコミ映画はひととおり見ていて、映画化のうまさにはいつも感心しているのだけれど――ライバルのDCコミックのほうはムラがある――、それでも、「アベンジャーズ(2012)」に関しては一抹の不安があった。だって、多くのヒーローを登場させ、それぞれにしっかりと時間を割きながら、満足感を与えるストーリーを作るなんて、至難の業だと思ったからだ。

でも、さすがマーベルはよく考えている。昔なら「七人の侍」や「大脱走」、最近では「オーシャンズ11」などのように、映画には、異なるスキルをもった一匹狼たちが、共通の目的のために力を合わせるという物語パターンがある。「アベンジャーズ(2012)」ではこの方程式がそのまま踏襲されていて、プライドも身体能力もやたらと高いスーパーヒーローたちが、人類が迎えた最大の危機を前に、協力することになるという筋書きになっているのだ。アイアンマンとソーが喧嘩をしたらどちらが強いのか、そもそもハルクにチームプレーが可能なのか、というファンの素朴な疑問にも答えてくれているし、それぞれのスキルを生かしたクライマックスの戦闘シーンも素晴らしい。個人的には、ハルクがこれまででもっとも共感できる存在として描かれていることに感心した。

「アイアンマン3」の撮影を控えるロバート・ダウニー・ジュニアと
「アイアンマン3」の撮影を控えるロバート・ダウニー・ジュニアと

しかし、なにかを取れば、なにかを失うものである。これまでのマーベルの映画作品では、主人公の葛藤や成長がじっくりと描かれていた。だからこそ、こうしたジャンルに馴染みのない観客にもアピールすることができたと思うのだが、今作ではパーソナルなドラマは割愛されている。また、昨年公開された「マイティ・ソー」と「キャプテン・アメリカ」からストーリーが直接繋がっているし、その他のヒーローの特徴などをいちいち説明してくれないから、マーベル初心者にはハードルが高いかもしれない。

言ってみれば「アベンジャーズ(2012)」はファンのためのお祭り、オールスターゲームのような存在なのだ。

アベンジャーズ(2012)」は、8月17日から全国公開。

筆者紹介

小西未来のコラム

小西未来(こにし・みらい)。1971年生まれ。ゴールデングローブ賞を運営するゴールデングローブ協会に所属する、米LA在住のフィルムメイカー/映画ジャーナリスト。「ガール・クレイジー」(ジェン・バンブリィ著)、「ウォールフラワー」(スティーブン・チョボウスキー著)、「ピクサー流マネジメント術 天才集団はいかにしてヒットを生み出してきたのか」(エド・キャットマル著)などの翻訳を担当。2015年に日本酒ドキュメンタリー「カンパイ!世界が恋する日本酒」を監督、16年7月に日本公開された。ブログ「STOLEN MOMENTS」では、最新のハリウッド映画やお気に入りの海外ドラマ、取材の裏話などを紹介。

Twitter:@miraikonishi

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