コラム:FROM HOLLYWOOD CAFE - 第157回

2011年10月28日更新

FROM HOLLYWOOD CAFE

第157回:ブラッド・バード監督が「M:i:IV」に参加したそのワケとは?

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サンフランシスコ郊外にあるスカイウォーカーランチのカフェテリアで、この原稿を書いている。「ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル」の仕上げの真っ最中のブラッド・バード監督を直撃するために、ロサンゼルスから飛んできたのだ。たった今、単独インタビューを終えたばかりなので、彼が本作に携わることになった経緯をかいつまんでご報告したいと思う。

ブラッド・バード監督は僕が尊敬する映画監督のひとりで、「Mr.インクレディブル」と「レミーのおいしいレストラン」でそれぞれ複数回取材させてもらったことがある。「レミー」の完成時には、すでに実写映画に挑戦する計画を明かしてくれていたので、僕はその完成を心待ちにしていた。

その企画とは、1906年のサンフランシスコ大地震のときに起きた出来事をつづったノンフィクション小説「1906」の映画化だった。しかしその後、長大で複雑な原作を映画のサイズにうまくまとめることができず、脚本執筆で挫折。意気消沈しているときに声をかけてきたのが、J・J・エイブラムスだったという。もともとエイブラムスと交友があった彼は、制作会社バッドロボットで作曲家のマイケル・ジアッキノとランチをしているとき再会。「1906」がうまくいっていないことを話すと、その晩、メールで「ミッション:インポッシブル」に誘われたのだという。

「ミッション:インポッシブル」シリーズの魅力は、「原作のテレビシリーズ『スパイ大作戦』の基本設定を維持していれば、監督の裁量で自由に映画化できることにある」とバード監督はいう。これまでに発表された3作がまったく異なっているのは、メガホンを握ったブライアン・デ・パルマジョン・ウー、エイブラムスの個性が大いに反映されているからであり、ここまで自由度の高いフランチャイズ映画はほかにないだろう。ブラッド・バード監督が「ミッション:インポッシブル」という素材をいかに料理したかはまだ不明だが、フッテージを見たかぎりでは、これまでで最大のスケール感を誇りつつも、「M:i:III」のエモーショナルなドラマを踏襲したものになりそうだ。

「ゴースト・プロトコル」は、プロデューサーを務めるエイブラムスとトム・クルーズのアイデアをもとに、「エイリアス」の脚本家だったアンドレ・ネメック&ジョシュ・アップルバウムが脚本を執筆。バード監督はあとから参加したわけだが、偶然にも彼好みの作品に仕上がっていたという。

今回、テロリストの容疑をかけられたイーサン・ハントは、スパイ組織IMFの助けを借りることなしに汚名を晴らさなければならない羽目に陥るが、才能のある主人公が何らかの事情で実力を発揮できないという設定は、「Mr.インクレディブル」にしろ、「レミーのおいしいレストラン」にしろ、ブラッド・バード作品共通なのだ。

アニメと実写の演出法の違いや、現在のピクサーとの関係、スティーブ・ジョブズとの思い出など、短い時間のなかでいろいろ話をきかせてもらった。いずれ正式なインタビュー記事でご紹介したいと思う。

筆者紹介

小西未来のコラム

小西未来(こにし・みらい)。1971年生まれ。ゴールデングローブ賞を運営するゴールデングローブ協会に所属する、米LA在住のフィルムメイカー/映画ジャーナリスト。「ガール・クレイジー」(ジェン・バンブリィ著)、「ウォールフラワー」(スティーブン・チョボウスキー著)、「ピクサー流マネジメント術 天才集団はいかにしてヒットを生み出してきたのか」(エド・キャットマル著)などの翻訳を担当。2015年に日本酒ドキュメンタリー「カンパイ!世界が恋する日本酒」を監督、16年7月に日本公開された。ブログ「STOLEN MOMENTS」では、最新のハリウッド映画やお気に入りの海外ドラマ、取材の裏話などを紹介。

Twitter:@miraikonishi

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