コラム:編集長コラム 映画って何だ? - 第46回
2022年3月28日更新
アカデミー賞授賞式雑感。「劇場公開か配信か」という議論はもはや意味がない
3月28日(日本時間)、米アカデミー賞授賞式が行われました。昨年は変則的な開催となりましたが、今年はフランチャイズのドルビーシアターに戻り、フルキャパでゲストを入れての開催となりました。
例年同様、私はWOWOWの中継を自宅で見ていましたが、午前9時に主要部門の発表が始まって、12時30分過ぎにはすべて終了というスケジュールでした。ただし、全23部門のうち、作曲賞、美術賞、メイクアップ&ヘアスタイリング賞、編集賞、音響賞、短編映画賞、短編ドキュメンタリー賞、短編アニメ賞の8部門の発表は授賞式に先立って行われ、本番ではダイジェスト形式での発表となったのが大きな変更点です。
結果は概ね想定内でした。作品賞は、「コーダ あいのうた」と「パワー・オブ・ザ・ドッグ」のどちらかと予想していましたが、賞レース最終盤で勢いに乗った「コーダ あいのうた」が逆転で勝利といった感じでしょうか。「パワー・オブ・ザ・ドッグ」は11部門12ノミネートと最多ノミネートながら、わずか1部門しか受賞できませんでした。ただ、その唯一の部門がジェーン・カンピオンの監督賞です。昨年のクロエ・ジャオ(「ノマドランド」)に続いて2年連続で女性監督がこの部門で受賞したのは、非常に素晴らしい結果だと思います。また「コーダ あいのうた」も、女性監督シアン・ヘダーの監督&脚本ですから、作品賞も2年連続女性監督の作品ということになります。
スタジオ別に受賞作を集計すると、ワーナー・ブラザースが7部門(「DUNE デューン 砂の惑星」6、「ドリームプラン」1)、ディズニーが6部門(「タミー・フェイの瞳」2、「ウエスト・サイド・ストーリー」1など)、Appleが3部門(「コーダ あいのうた」3)というのがトップ3です。今回、配信プラットフォームの作品「コーダ あいのうた」が作品賞を受賞したのは、「オスカーの歴史の転換点だ」という意見をよく耳にしますが、ワーナー・ブラザースにしてもディズニーにしても、それぞれ自前の配信プラットフォームを展開しており、「劇場公開か配信か」という議論はもはや意味をなさないと感じました。
日本市場においては、「ドライブ・マイ・カー」が国際長編映画賞を、そして「コーダ あいのうた」が作品賞を受賞したことは興行者にとって最良の結果です。北米では配信のみでしか見られない「コーダ あいのうた」は、日本では劇場公開中です。「ドライブ・マイ・カー」も昨年の8月からずっと上映中で、アカデミー賞効果もあって、今週は興行ランキングのトップ10まで浮上しています。両作品とも、明日からもっと多くのお客さんが映画館で鑑賞することは間違いありません。
最後に、授賞式で暴力沙汰を起こしたウィル・スミスの行動は非常に残念に思いました。その暴力のあと、当の本人が主演男優賞を受賞するという流れもまた非常に居心地の悪いものでしたが、アフターパーティーやその後のメディア対応などでこの件がキチンと落ち着き、遺恨を遺さなければいいなと思います。
いずれにしても、昨年の授賞式と比較して、ハリウッドがほぼ平常営業に戻りつつあるなと感じられる授賞式でした。今年、またたくさんの傑作映画に出合うことができそうですね。
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筆者紹介
駒井尚文(こまいなおふみ)。1962年青森県生まれ。東京外国語大学ロシヤ語学科中退。映画宣伝マンを経て、97年にガイエ(旧デジタルプラス)を設立。以後映画関連のWebサイトを製作したり、映画情報を発信したりが生業となる。98年に映画.comを立ち上げ、後に法人化。現在まで編集長を務める。
Twitter:@komainaofumi