コラム:編集長コラム 映画は当たってナンボ - 第30回
2009年1月13日更新
第30回:今年の正月映画は盛り上がったのか?
この年末年始は、カレンダーの並びのおかげで多くの人が長い連休となった。だが、折からの不況のせいか、自宅に「引きこもり」を決め込む人々が多かったようだ。これは、海外旅行客が前年より減少し、紅白歌合戦の視聴率が例年より大分高かった事実とも符合する。
では、映画の市場はどうだったか? 今年の正月映画のうち、もっともたくさん興収を稼いだ作品は、ピクサー/ディズニーのアニメ「ウォーリー」であった。「ハリー・ポッター」の公開延期も追い風に、ファミリー中心に40億円ぐらいの興収を最終的に記録しそうである。過去のピクサー作品と比較すれば、07年の「レミーのおいしいレストラン」(興収39億円)と同等ということになる。
2番手は、「私は貝になりたい」か「地球が静止する日」で、いずれも最終興収は25億円前後の見込み。「私は貝になりたい」主演の中居正広と仲間由紀恵が、紅白歌合戦の司会者でもあり、元日以降の動員がグンと伸びたそうだ。中居は02年の「模倣犯」以来の映画出演となるが、「模倣犯」は興収16億円だったので、今作で自己ベストを更新することになる。
「地球が静止する日」は、キアヌ・リーブスが久々に挑むアクション映画。05年の主演作「コンスタンティン」が27億円稼いでいるが、今回はそこまで届くかどうか。最低でも興収30億円は超えて欲しかったが、映画の内容があの程度では致し方ないだろう。むしろ健闘した部類と言える。
4番手グループは、「K-20」「252」「メジャー」「赤い糸」あたり。これらはいずれも興収10億円台に止まる見込み。
以上、今年の正月映画は、興収30億円を超えた映画がたったの1本。これはかなり寂しい結果ではあるが、映画市場全体としてはほぼ前年並みの興行規模だった。突出した作品が少ないながらも観客は分散して劇場を訪れ、それなりに賑わったようである。
これからは正月2弾映画の季節。世間はすでに正月気分など残ってないのに「正月2弾」という表現もかなりお目出たいが、実は、この正月2弾からアカデミー賞授賞式をまたぐ3月ぐらいまでは、例年クオリティの高い映画が続々公開される。映画ファンにとっての至福のシーズンが到来である。(eiga.com編集長・駒井尚文)
筆者紹介
駒井尚文(こまいなおふみ)。1962年青森県生まれ。東京外国語大学ロシヤ語学科中退。映画宣伝マンを経て、97年にガイエ(旧デジタルプラス)を設立。以後映画関連のWebサイトを製作したり、映画情報を発信したりが生業となる。98年に映画.comを立ち上げ、後に法人化。現在まで編集長を務める。
Twitter:@komainaofumi